福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

one for all

2019-09-29 20:33:35 | 日記
 日本がラグビーにわいている。開催中のワールカップ(W杯)の1次リーグで、世界ランク9位の日本が、同2位で優勝候補のアイルランドを破る大金星。番狂わせ、快挙、奇跡などの文字がネット上にあふれる。日本代表は、国民の心をわしづかんでしまった!
 サッカー少年だった隊員はこれまで、ラグビーとの縁はまるでない。無理矢理挙げれば30年ほど前、京都の伏見工業高ラグビー部をモデルにした熱血ドラマ「スクールウォーズ」にハマっていたことぐらい。山下真二率いる弱小チームが、ラグビーと無縁だった優男や落ちこぼれ、不良たちを巻き込んで全国の強豪へと成長していく青春物語を、しばしば目から鼻水を流しながら見た。名場面の二つ三つは今もアフレコできてしまうから、「熱中する」ってすごい。
 まぁこんなことをラグビーとの「縁」というほど、無縁だったというわけ。
 隊員自身はそんな感じだが、隊員にはかつて、ラグビー少年だった一人の友人がいた。大学時代に知り合い、お互い性格は似ても似つかなかったが、波長や志向が合ったのか、急速に仲良くなった。
 彼は知り合って1年余り後、山での単独行中に遭難して亡くなった。そのときのことは今、詳しくは振り返らない。ただ、隊員は一連の出来事を経て、何かが変わった。大げさに言うと、生きるということへの姿勢だろうか。その姿勢は、かたちを変えながら脈々と続き、今に至っている。
 簡単には書き表せない、当時の傷。そして、彼の家族や当時の仲間たちとのその後の日々。にわかに沸いた国内のラグビー熱は、不意にそんなことを思い出させる。しばらく顔を合わせていないみんなは、どんな思いでテレビの中のフィフティーンを眺めているのだろう―。


アダムの草刈り

2019-09-29 00:06:27 | 日記
 「ああ、また草を刈らんといけん」「草だきゃ、ほんま嫌んなる」。8月に福富に来てすぐ、こんなせりふのシャワーを浴びた。やれ草刈りだ、ほい草刈りだ。大変じゃ大変じゃ。まるで、この世のすべては草刈りか、草刈りでないかの二者択一。エデンの園を追われて草刈りを課された人々かっ! と思うほどの草刈り話ざんまいだった。
 「草を取るだけでしょ。そんな大変かなあ」「しんどいなら、気にせずしばらくほっとけばいいんでは」。ひょっこり転がり込んできた都市生活社の隊員は、アホづらしながら内心思っていた。
 でも…。大変でした。はい。畑に草、庭に草、あぜ道に草、のり面に草。夏の日差しとたっぷりの雨を受けて、素直にぐんぐんと伸びる伸びる。ちょいっと刈っても、2週間もすればしっかり勢いを取り戻す。気にせずしばらくほっておくと、刈る気も失せるほどに茂ってしまう。おまけに、あちこちにある公共のスペースや施設の周りも、住民が集まって一斉に草を刈る。ああ、草刈り人生。
 草刈りなんて無縁で暮らしてやれ! ぐらいに思っていた隊員も、さっさと白旗。先日、マイ草刈り機を買った。「草刈りのプロ」揃いのご近所さんにいろいろなタイプの草刈り機を使わせてもらった挙げ句、ホームセンターを数日渡り歩き、特売中の2万円ほどの最安マシンをゲットした。先端を付け替えてナイロンひもでも刈れるタイプのやつだ。使い心地も、性能もなかなか良くて気に入っている。機械をいじるとなんとなく楽しいし、草がなくなっていく爽快感が無邪気にうれしい。草刈り牧歌の時代よ続け、と願う。
 「見てみぃ。あそこはうまく刈っとるわ」。お試し草刈り機を貸してくれた一人の、恰幅のいい近所のご主人が、遠くの法面を見てしみじみとこぼす。庭師を評価するかのような、草刈りチェック。ご主人によると、どれぐらいのペースで刈っているか。仕上がりは美しいか。刈った後の道ばたは片付いているか―。その人の人物像が透けて見えるらしい。深いね、草刈り。草刈り入門者の隊員は「はあ、そうですねえ」と、やはりアホ面して返すしかない。