
サッカー少年だった隊員はこれまで、ラグビーとの縁はまるでない。無理矢理挙げれば30年ほど前、京都の伏見工業高ラグビー部をモデルにした熱血ドラマ「スクールウォーズ」にハマっていたことぐらい。山下真二率いる弱小チームが、ラグビーと無縁だった優男や落ちこぼれ、不良たちを巻き込んで全国の強豪へと成長していく青春物語を、しばしば目から鼻水を流しながら見た。名場面の二つ三つは今もアフレコできてしまうから、「熱中する」ってすごい。
まぁこんなことをラグビーとの「縁」というほど、無縁だったというわけ。
隊員自身はそんな感じだが、隊員にはかつて、ラグビー少年だった一人の友人がいた。大学時代に知り合い、お互い性格は似ても似つかなかったが、波長や志向が合ったのか、急速に仲良くなった。
彼は知り合って1年余り後、山での単独行中に遭難して亡くなった。そのときのことは今、詳しくは振り返らない。ただ、隊員は一連の出来事を経て、何かが変わった。大げさに言うと、生きるということへの姿勢だろうか。その姿勢は、かたちを変えながら脈々と続き、今に至っている。
簡単には書き表せない、当時の傷。そして、彼の家族や当時の仲間たちとのその後の日々。にわかに沸いた国内のラグビー熱は、不意にそんなことを思い出させる。しばらく顔を合わせていないみんなは、どんな思いでテレビの中のフィフティーンを眺めているのだろう―。