
以前、約1年にわたって一緒に仕事をさせてもらったことのあるドクター。当時は別の療育機関に勤めていた。当時から超多忙な人で、アポ時間に到着して面会まで「1時間待ち」はざらだった。
初めて訪れる新しい“マイクリニック”は、新興住宅地に立っていた。発達障害を専門に診る珍しい小児クリニックで、待合室はカフェのよう。午前中の診療時間が終わろうとしていたが、まだ親子連れたちが入れ代わり立ち代わり、診察室に入っていく。
「作業療法をやろうということになったよ」。父親らしき男性が奥さんと思われる人に電話で診療結果を報告する。「そう、あぁ、聞いとくよ」。クリニックから提案された作業療法の受診ペースを、もっと増やしたいようだ。
看護師のお姉さんが、待合室でお菓子を配って回る。「クリスマスが近いので、お菓子どうぞ」。ソファにひとりで腰掛けた中学生ふうの男の子は、あれこれ悩んだ末にブドウ味のお菓子を手に取る。「あっ、ありがとうございます」。うつむき、はにかむ男の子。
ひとりひとり、それぞれの「課題」を抱え、家族とともに悩み、クリニックにかかっている。隊員が普段使う、発達障害、療育、特別支援―なんて言葉が、使い勝手はいいが何ごとも表せない、のっぺらぼうな言葉に思えてくる。

ドクター自身もずいぶん以前、農家から畑を借りて子どもたちと農作業をする試みもしていたらしい。「でも、僕ら医者がふだんから畑を世話できないから、どうしても無理が出てきてね」
わが「こども農園」で開く保護者との勉強会での講師役などでの「ご助力」をお願いすると、快く引き受けてくれた。そして、隊員がこれまで訪れたいくつかのフリースクールの先生ともつながっていることが分かった。

代表者の男性自身も、大人になって学習障害(LD)であることが分かったという。もともとは農業関係の企業に勤めていた。どうりで、畑や田んぼをみて繰り出すコメントがプロ並みに詳しい。わが家で1時間ほど話をして、少しだけ軽トラを走らせて町内も見てもらった。「いいところですね。一緒にいろんな可能性を探らせてください」。ありがたい。
学ぶべきことは尽きない。