福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

着物で再会

2019-12-16 13:09:48 | 日記
 とある年上の女性起業家と約5年ぶりに再会した。正確には、起業しようと動き出した女性。まったく別の、かなりデリケートなテーマでご主人もろとも夫婦で何度か取材させてもらって以来、時候のあいさつでうっすらとつながっていた。主婦だった女性はひょんなことから起業を目指し始め、記者だったアラフォーおっさんは勢い余って協力隊員となり、互いに「おもろそうなこと、やってますね」と話をすることになったのだ。

 女性は広島市内のショッピングモールのフードコートで、着物姿で待っていた。なにせ、インドの伝統刺繍生地を使って、和装の帯や足袋をこしらえるブランドを立ち上げようとしている。
 「どうも! なんか、前より元気そうですね」。お互い同じようなことを言い合う。かなり限られた時間だったので、隊員はすぐに質問攻めをスタート。女性は以前の取材時のように、質問の意図をほぼ的確にくんで、はきはきと正確に語ってくれた。
 趣味の着付けをきっかけに、インドの伝統生地を扱う関西の女性と知り合ったこと。生地を和装に取り入れてみたい、とひらめいたこと。全国を駆け巡って相談を繰り返すうち、業者と試作品まで作ってしまったこと。近く、個人事業主として「仕事」を始めることになったこと。未踏のインドに一度、行ってみたいこと…。
 小さな芽がコロコロと動きだし、出会いが出会いを呼び、未知の世界へ楽しく転がっている。人生のピタゴラスイッチ。

 初めて取材した5年前、女性はかなり悩ましい状況にあった。追い込まれていた。内容は伏せておくが、人生、人格、尊厳にかかわるテーマで取材を重ね、見解をぶつけあった末に記事化させてもらった。
「踏み込みすぎたかな。記者のエゴで傷つけたかもしれない」。そんな後ろめたさもあり、掲載後は夫婦に連絡をとりにくかった。しかし、夫婦は近況を知らせる賀状などを送り続けてくれた。

 モスのアイスティーを飲みながら彼女の熱い語りを聞いているうち、お互いやっていることはまったく違えど、共通項は多いことに気付いた。それは、手仕事の魅力に引かれていること。土地土地の多様な暮らし、つまり「文化」にコーフンすること。隊員が準備中のウェブマガジンの背骨となるテーマと重なる。そして、和装で現れた彼女のように「小さなことから、自分が動く」のを楽しがっていることも、相通じられた気がした。
 あれこれ話を聞くと、中山間地域の課題に「着物」が割って入る余地もあるみたい。「なにか一緒にできるかもしれませんね」。5年前、この女性とこんな話ができるとは思ってもみなかった。

 「現代風に気軽な和装も広めたい」という彼女曰く、「母から子へ着物を受け継ぐのは、もったいないからじゃない。愛情のかたち。娘は、知らず知らずに『自分が大切にされている』ことを実感できるんだと思うんです」。
 1時間足らずのマシンガントーク。隊員が「前も思ったけど、自分の頭の中を整理しながら言葉にできる方ですね。僕、苦手なんですよ」と言うと、彼女は「そうですか? でも、ありがとうございます」とかしこまって笑った。今度、ご主人と一緒に福富にも遊びに来てくださいと告げ、ドタバタと別れた。

 さて、次なる所用。友人のライブ会場に向かわねば。…あれ!? ショッピングモールの駐車券がない。慌てると、いつもこうなる。かわいい女性店員さんになんとか再発行してもらい、エンジンをふかす。すべり込んだライブ会場でのあれこれも面白かったので、後日のネタに。

この冬は湯たんぽで

2019-12-10 08:00:39 | 日記
 朝晩の冷え込みが、ますます厳しくなってきた。しんと静かな山里の夜。部屋に据えた石油ストーブの炎がゆらゆらと揺れる。やさしいオレンジ色の熱源を眺めているだけで、体の芯まで温まった気持ちになる。
 ……わけがない。寒いのだ。とりわけ、布団に潜り込んだ瞬間。水風呂に飛び込んだ気持ちになる。
 でも、電気毛布なんてものはないし、ほしくない。電気食うし、毎晩上げ下げするの面倒だし。そこで、買ってきました。湯たんぽ。ホームセンターに5~6種類あったが、大きさやデザインが気に入ったポリエチレン製の1・8リットル入りを選んだ。
 石油ストーブの上に置いたやかんのお湯を注いで蓋を閉め、付属品のピンク色のフェルト袋に入れる。ぎゅっと抱きしめる(これは別にしなくていい)。毛布2枚と羽毛布団1枚の計3枚の掛け布団の下に、すっと入れておく。
 しばらくしてから布団に潜り込むと、あぁ暖かい。朝起きて触っても、まだずいぶんと温かい。捨てるのはもったいないから、前の晩に使った食器の油汚れ落としに使う。なかなかの優れものだ。
 初めての福富の冬は、これで乗り切れるだろうか。

JAへGO

2019-12-06 08:46:43 | 日記
 わが家の郵便ポストに、「JA主催の水稲栽培説明会」なるものの案内が入っていた。ここひと月余り、にわかに地元の米作りに首を突っ込ませてもらい、来春も関与を狙っているわが身。無料でレクチャーしてくれるなんて、願ってもない機会だ。
 ぺーぺーのアホづらぶらさげ、地元のJAに足を運んだ。数カ月前には「業界団体の参院選支援」取材でよくJAに出入りしたが、作り手の立ち場でお邪魔することになるとは。

 「おっ! おまえがなんでおるんや」。入り口で出くわした顔見知りの兼業農家の親分が、大声で言う。「勉強ですよ」「ほう。百姓になるんじゃけ、そりゃ来にゃいけんのぉ。わははっ」。親分は笑い飛ばして、席に着く。軽くバカにされているが、「農家になるんじゃけ」んじゃなくて「百姓になるんじゃけ」ってのは、言葉のセンスがいい。そう、米を作って稼ごうとも、稼ぐ能力があるとも思っちゃいない。生活の糧はあくまでライター仕事。要は、生きるためにあれこれやるのが楽しいのだ。

 空回りの意気込みを見せ、最前列に座る。
 役員さんの冒頭あいさつによると、広島県内は今期、凶作。記録的冷夏で「平成の米騒動」といわれた1993年以来の落ち込みらしい。春夏の天候不順と、秋のうんか発生が大きな要因。平年の収量に対する割合を示す「作況指数」は今年、全国は99%だけど、広島県は94%だそうだ。ド素人隊員は「けっこういいじゃん」と思うが、ダメらしい。ちなみに、隊員が大好きなタイ米がこっぴどく嫌われた93年は、広島県86%だった。

 話は「2020年 水稲栽培ごよみ」と題したマニュアル本に沿って進む。「組合員のみなさん、来年1年間はこんな手順で作ってくださいね」「JAが来期におすすめする農薬、肥料はこれですよ」ってことを、懇切丁寧に伝えるのが趣旨のようだ。化学肥料、病害虫を防ぐ薬、除草剤…。まぁ種類の多いこと。会場でQ&Aが交わされる。隊員にとっては異国語だ。
 「この中でコシヒカリを作られている方、いますか?」「田植えと同時に〇〇をまく人は?」。職員さんのどんな問いかけにも首を振り、じっと座り続ける隊員。だって、作っていないんだもの。しかし、こうした慣行農法と、福富町でも何戸かある自然農法の対比が分かり、おもしろかった。「雑草の図鑑」なんて小冊子までもらった。マニアックだ。
 ずうずうしく関わり始めた近所の田んぼ。この小さなフィールドから見えてくるだろうあれこれが、さっそく楽しみになる。捕らぬタヌキの皮算用。来年のことを話すと「親分」が笑う!

辛味大根 取り扱い注意 

2019-12-03 22:19:19 | 日記
 ここ数日、いろんな人から野菜をいただいた。どれも有機、無農薬で丹精込めて作られた野菜たち。昨夜は山の中のお好み焼き屋で飲み過ぎたため、今夜は体に限りなく優しそうな大根を食おう。
 フツーの大根は隊員自身も初めて育てているが、もらったのは辛味ダイコン。「おろして食べるといいよ」と言われた。野球ボールほどの大きさの丸いダイコンを素直におろす。鰹節と醤油をかけてパクリ。予想以上に辛い。口がしびれるほどの刺激だ。でも、広島つけ麺、汁なし担々麺、四川麻婆豆腐と辛いもの好きの隊員は、もろともせず食い切った。かんでいると甘みも感じるほどだ。
 キュルキュル。ん?
 食後しばらくして、おなかに異変が。食い過ぎの感覚でも下痢Pの不快感でもない、おなかを締め付けられるような痛みがしてきた。ううぅ。。。ダンゴムシのように丸まって、しばし床にうずくまる。

 しかし、どこかで「転んだらもうけもん」と思ってしまうさもしいライター根性。なぜオレは寒い山里で、人知れずウンウンと痛んでるんだ。調べてみようか。
 頭までぼーっとする中、スマホで「辛味大根 腹痛」と検索してみる。わ! やっぱ食い過ぎるとおなか痛くなるらしい。痛みを起こすのは、ジアスターゼという成分らしい。消化酵素といわれ、普通なら胃腸によいもの。だが、取り過ぎると消化を助けすぎて胃に刺激を与えるみたい。なにごともほどほどにしろということ。子どもの時から言われてきたが、改まる気配はない。
 うぅ、書きながらも、まだ苦しい。ネットには「翌朝までおなかが大変だった」との書き込みも。マジか!

素晴らしきこの世界

2019-12-01 00:42:19 | 日記
 妻が実家の所用で上京中のため、この週末は久しぶりに息子2人とどっぷり一緒に過ごす。保育園の発表会、サッカー教室、スポーツセンター、公園、将棋教室、スシロー…と目白押しだ。気持ち良い青空に、布団やクッションも太陽にさらしてすっきり。
 2人が寝静まった後、こちらも久しぶりにテレビでもつけてみる。すると、「SONGS」に真心ブラザーズが出ているではないか! 隊員が大好きなアーティストの一組。やはり世の中、出会うべき人にはうまいこと出会えるようになっているのだ。
 
 デビュー30周年なのだという。
 自然体。使い古されたボキャだが、それがハマる2人だとあらためて思った。自然体を意識してやってるんじゃなくて、どうしようもなく自然。「その日のレコーディングを楽しくやりたいな、と思うだけ」(YO-KING)。かっこいい。

 ♪拝啓、ジョン・レノン
 僕もあなたも大して変わりはしない
 そんな気持ちであなたを見ていたい
 どんな人でも僕と大差は無いのさ
 拝啓、ジョン・レノン
 そんな気持ちで世界を見ていたい
 雨も雲も太陽も時間も目いっぱい感じながら僕は進む
 (真心ブラザーズ「拝啓、ジョン・レノン」)

 つぎはぎの情報にみんなで群がっては、ポイ捨てするのが主流の時代にあって、あわてず自分の感性で物事の本質を感じ取り続ける2人。隊員が好きな「素晴らしきこの世界」も、ライブ演奏していた。

 ♪夜道を一人で歩いていたら どこから何やらカレーのにおい
 僕もこれから帰るんだよ 湯気がたってる暖かい家(うち)
 素晴らしきこの世界
 (真心ブラザーズ「素晴らしきこの世界」)
 
つぶやくようなYO-KINGのアルペジオの歌い出しから、しまいには激しいリズムで次のような世界へ展開していく。

 ♪僕の体にあふれるエネルギー あらゆる困難もぶち壊し進むよ
 悟り顔の若年寄にケリを入れて バネをきかせて世界を変えるよ
 素晴らしきこの世界
 (真心ブラザーズ「素晴らしきこの世界」)

 1人の中に併存するこんな2つの世界感に、大学時代の隊員もビビッとやられたのだろうな。コタツに入りながらひとり、分析してみる。
 喜び、悲しみ、怒り…。それらをすべて含めた「真の心」を歌う。同じく真心ファンという又吉直樹が言ってた。共感。

 「反骨精神とか、反社会性とか、自分には全くないと思ってた。けど最近、案外、人より強いんだなと思っている」。番組中のYO-KINGの話が耳に残る。
 隊員自身、生業とする取材仕事で、「世の中をただす」「社会正義を守る」と思って動いたことは恐らく、一度もない。「楽しい」(知的にも心情的にも)というモチベーションで動いていてこそ、世界の楽しさを邪魔する無粋なやつらへの怒りが心底、わく。
 その怒りを怒りとして、まっすぐぶつける表現の仕方もあるだろう。ただ、真心の2人は、時代や他人に左右されず、好きな音楽を自分の気持ちいいやり方で貫くということで、その価値観を表している。いろいろあっても、オレたちは「素晴らしきこの世界」を楽しんじゃうぜ、と。