会津駒ヶ岳1
駒ノ小屋が見えてきた、稜線まであとわずか
愛唱歌「夏の思い出」の中の一節に「はるかな尾瀬遠い空‥」とある。尾瀬が好きで何度か行っているうちに燧ケ岳、至仏山から見える会津駒ヶ岳が気になり始めた。地形図を見ると尾瀬よりも更にはるかな峰である。その地の様子も知らないままルートを考えた。桧枝岐から登るしか道はなさそうである。桧枝岐か、遠いなぁ。島田からのアクセスが悪い、長い。計画倒れのまま幾星霜。2012年チャンスが巡ってきた。SHC夏山合宿で会津駒ヶ岳を目指す。ここで問題発生、先に計画していた東北旅行と日が重なった。山行担当者にお願いして7/27桧枝岐の手前、会津線「会津高原尾瀬入口駅」で落ち合うようにさせてもらった。旅行は全体を1日前倒しに、車には旅行の支度と山の支度を用意した。7/27会津若松駅まで送ってもらい、しばしの別れ。独り会津線に乗車、呑み鉄のはしりであった。会津高原尾瀬入口駅で降車、SHCを待つ間にもうワンカップとソバの昼食。貸切バスに乗り8時間かけてやってきた会友と無事合流できた。その夜は七入山荘で早速宴会。
会津駒ヶ岳2
駒ノ大池の脇を通って山頂を目指す
7/28いよいよ会津駒ヶ岳に登る日が来た。広葉樹の中の急坂をひたすら登る。2ピッチ、1:40登った所に水場があり、しばし休憩。つわものは給水に行ったが私にはそんな余裕はない、あきらめた。ひと上り後、視界が開けてきた。いつしか周りは針葉樹に変わり駒ヶ岳も見えるようになってきた。ここまで来ればしめたもの、木々は矮小になり展望がどんどん広がる。10:45駒ノ小屋に到着、ここで早めの昼食。エネルギーを補給し、衣装を整え出発、山頂を目指す。この上り道も爽快だ。11:40はるかな峰であった会津駒ヶ岳にとうとう登ることができた。班毎に集合写真を撮り中門岳に向けて出発。計画書でこの名前を目にしたとき、聞いたことがない名称の山に首を傾げた。しかし、この道こそ永年求めていた楽園だった。ほとんど起伏のない広い尾根をゆったりと歩く。お花畑、中でもハクサンコザクラ、残雪、湿原、求めていたものが揃っていた。中門岳で山行の達成を祝い、来た道を引き返した。小屋付近でOさんが捻挫して下山は難儀したが、なんとか宿に戻ることができた。
会津駒ヶ岳ハガキ
会津駒ヶ岳山頂
さて、会津駒ヶ岳を彫るのは、なかなか手強い。山が大きくて画がまとまらない。考えた末、小屋下から下を見たところ(登ってきた道)を彫ることにした。木道に人ひとり、これは私だ。永年の夢が叶い達成感を反芻しながら下っている姿です。満足する出来映えではなかったためもう一枚挑戦。ちょうど年賀状の時期だったためハガキサイズで一作仕上げ構図を決めた。ほぼ同じ構図の絵を描きf6サイズで彫り上げた。駒ケ岳山頂に向かって笹原が広がり針葉樹が点在する様は、とても気持ちが良い雰囲気だが納得できる表現には到達せず。勢いそのままハクサンコザクラをハガキサイズで、結局、会津駒ヶ岳は4作品を生む元になった。ありがとう会津駒ヶ岳。
ハクサンコザクラ
追記
山行の4年後、版画教室は先生の高齢化を理由に閉じた。太田友一先生が’24/9亡くなられた。102才の大往生!与えることをいとわぬ大人でした。人生の後半に良き人に出会えてラッキーだった。深謝。
(2025年1月、IK記)
駒ノ小屋から尾瀬へと続く稜線、遠く燧ヶ岳を望む
頂稜湿原の稜線上は池塘が散在する
会津駒山頂から中門岳に続く稜線は天上の楽園
「この辺り中門岳」標識、皆で寄り掛かると倒れちゃう?
* * *
この2012年7月の夏山合宿は、企画した私にとっては会心の山行のひとつだった。檜枝岐の宿手配、貸切バスの運行スケジュール管理、三日目昼食場所の手配から、会津駒ヶ岳と駒止湿原の山行まで、Oさんの怪我トラブルを除いてほぼ計画どおりに運べ満足のゆくものだった。ところで、この年の夏山合宿地に檜枝岐を選んだのにはわけがあった。
夏山合宿「会津駒ヶ岳」山行が今月末に行われます。昨年は震災後の自粛ムードもあって自主山行としましたので、2年振りの夏山合宿となります。目的地を敢えて原発事故被災地の福島としたのは、私たちが山を登る意味や周りとの関わりなどを、答えのないことを承知の上で、少し考えてみようということです。福島県の最西端に位置する檜枝岐は、福島第1原発から約160キロ離れているにも拘らず、尾瀬や南会津の山々への入山者は減ったそうです。尾瀬全体では約2割、福島側沼山口では約4割減とのこと。観光業など第3次産業就業人口が9割を占める村にとって、これは大きな痛手となっているでしょう。福島県を訪れ、彼の地の山に登ることが、ささやかながらも復興に向けての要素になればと思います。無論これは対岸のことでなく、浜岡原発より30キロ圏内に生活する私たちにとっては、我が身のことでもあります。(2012年7月『やまびこ』184号)
また山行後には次のような感想を持った。
参加者全員から寄せていただいた感想と多くの写真で、この夏の思い出を振り返りました。皆さん本当にいい笑顔をしているし、感想からも全員で中門岳まで行けた充実感が伝わってきました。色々な制約や面倒もあるけれど、仲間と共にやり遂げることに、合宿山行の確かな感動があると思いました。本来ならば、この〝天上の楽園〟は、もう少しのんびりと時間をかけて味わいたい所ですから、皆さん各々が、機会を作ってチャレンジしてもらえれば嬉しいことです。また、今回は残念ながら不参加となった皆さんも、次はこの笑顔の中に加わってください。山はいつでも〝行ったもの勝ち〟です。(2012年9月『やまびこ』186号)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます