佐藤泰志『海炭市叙景』読了。
この小説の存在を知ってから、たぶん15年以上が経っている。
「本には人類の英知が詰まっている」と考えているので(大げさか?)、「本に散財する」ということに対しては罪悪感は感じない。
「CDに散財する」ことには感じるが(苦笑)。
とはいえ、当時高校生の自分にとって単行本は少々高い買い物であり、買うかどうか迷っているうち、やがて絶版に。
月日は流れ、「映画化」を機に昨年秋に文庫本として刊行された。
読もうと思えば一日で読める量なのだが、一編一編を噛み締めるように数ヶ月かけてゆっくりと読んできた。
この作品がどの程度世間に知られているのか分からないが、函館出身の作者が故郷をモデルにした「海炭市」を舞台に四季を描いた短編連作集。
作者が30代後半に書き始められたものの、ちょうど半分(冬と春の季節)まで書かれた時点で自殺。
享年41歳。
よって、未完の作品ではある。
偶然だが、彼が自ら命を絶つまで10年ほど住んだ場所は、現在のオレの住居のすぐ近くである(あと一週間でこの街を離れるが)。
函館という街は昔から好きで、過去数回訪れたことがある。
作中のモデルとなった場所を想像することができ、親しみを感じる。
そして、人々のささやかな暮らしの中、様々な感情の交錯が心に沁みる。
何か大きな出来事が起こるわけでもなく、描かれるのも皆「普通」の人々なのだが、登場人物それぞれが人生や生活を背負った「個」として浮き上がってくる。
派手な作品ではないが、我々「普通」の人々に、読後たぶん何かを残す。
普通であるということが、きっと特別。
BGM/『Curtains』John Frusciante
この小説の存在を知ってから、たぶん15年以上が経っている。
「本には人類の英知が詰まっている」と考えているので(大げさか?)、「本に散財する」ということに対しては罪悪感は感じない。
「CDに散財する」ことには感じるが(苦笑)。
とはいえ、当時高校生の自分にとって単行本は少々高い買い物であり、買うかどうか迷っているうち、やがて絶版に。
月日は流れ、「映画化」を機に昨年秋に文庫本として刊行された。
読もうと思えば一日で読める量なのだが、一編一編を噛み締めるように数ヶ月かけてゆっくりと読んできた。
この作品がどの程度世間に知られているのか分からないが、函館出身の作者が故郷をモデルにした「海炭市」を舞台に四季を描いた短編連作集。
作者が30代後半に書き始められたものの、ちょうど半分(冬と春の季節)まで書かれた時点で自殺。
享年41歳。
よって、未完の作品ではある。
偶然だが、彼が自ら命を絶つまで10年ほど住んだ場所は、現在のオレの住居のすぐ近くである(あと一週間でこの街を離れるが)。
函館という街は昔から好きで、過去数回訪れたことがある。
作中のモデルとなった場所を想像することができ、親しみを感じる。
そして、人々のささやかな暮らしの中、様々な感情の交錯が心に沁みる。
何か大きな出来事が起こるわけでもなく、描かれるのも皆「普通」の人々なのだが、登場人物それぞれが人生や生活を背負った「個」として浮き上がってくる。
派手な作品ではないが、我々「普通」の人々に、読後たぶん何かを残す。
普通であるということが、きっと特別。
BGM/『Curtains』John Frusciante