午前六時三十分 浴衣の裾ととのへて二号館より潮聞亭を経て山上遊歩道を行けば
若山牧水の歌碑の立つ展望台に到達したる
日の岬 潮岬は過ぎぬれど まだはるけしや志摩の波切(なきれ)は 牧水
あかひと かへして詠める
伊勢の宮 熊野の山を拝すれど まだはるけしや再生の道 丹人
展望台に立ちて海を見れば
一隻の舟 白き一の字を書きて
島の間を抜けて行きたり
道を下りて
午前七時 紀州潮聞の湯に入る
湯の中にゆるりと身を伸ばして 勝浦湾の島々に朝日の射し来るを見る
あな美しきかな
倍錦具なる朝食をいただきて支度整へれば
九時十五分発の舟に乗りて勝浦の岸へ向かへり
午前九時三十分 車に乗れば
いよいよ旅の帰途となる
国道四十二号線を一路北上す
午前十時 紀宝町は道の駅海がめ公園にて休憩をとる
一米ほどの大きなるアカウミガメの
あをき水槽にて泳ぐさまを見ることできるは幸ひなり
あかき亀泳ぐ青寿の夏の海 奮太
午前十一時 熊野市の鬼ヶ城駐車場に車を停めぬ
鬼ヶ城は是 国の名勝天然記念物にして
海風蝕と大地震によりて隆起したる凝灰岩の大岸壁なり
奇岩を拝せんと欲して海岸への細き道を歩み行けば
真白なる浜木綿の花咲きて 細き花びら 浜風にたなびくも可憐なり
鬼の岩につづく七坂下り行けば潮騒聴ける浜木綿の花 丹人
鬼の口の端に立ちて海を見下ろせば
嗚呼 なんと深きあを色かな
その清々しさに目を洗われたる
打ち寄せる波 のの字を描きては崩れ
崩れてはまた のの字を描きて
時を刻みいける
鬼岩に押し寄す波の砕けては渦を巻きつつのの字描けり 丹人
午前十一時四十分 道の駅熊野きのくにに車を停めれば
水清くして淡き瑠璃色に光る大又川に身を浸したる
この清々しさを表すことばを知らぬ予なりき
正午となれば 道の駅にて
此の地の名物とふ めはり寿司 さんま寿司 をいただきたる
めはり寿司は是 高菜が漬け物にて白飯をくるみたるものなり
半分ほどを口に入れれば
むむむ・・・
をを 菜のかをりの口中にただやひて いとむまし
次に
さんまを酢でしめたるさんま寿司なり
むむむ・・・
をを 絶品なり いとむまし
正午を過ぎること二十五分 車を発して 一路鳥羽を目指せり
鳥羽に着かば 伊勢湾を横断する浮江離に車ともども乗り込みて伊良湖岬に至る
伊良湖より一路東へ東へと向かへり
静岡に入りて 白須賀なる道の駅潮見坂にて十分ほど休憩すれば
国道一号線倍破州に入る
浜名湖の浜名大橋を過ぎれば 走行距離一千㎞となる 時は午後六時なりき
浜松市内に入れば車の数の増へきて 断続渋滞となる
午後六時二十分
西の空見れば 浜松の街に沈まむとする夕日の
空を淡く染めてゐたれり
いと美し
この後
東名高速自動車道に入り
富士川佐美須恵里亜にて夕餉にざるそばを
づるづるるるる
といただけば
残すは一路常州を目指すことのみとなれり
嗚呼
悠久の時を一日のごとく
清らかにたたずむ偉大なる力を見たる旅となりぬ
再生とは何なる哉
それが答へを見ひ出さむとして出でし旅にあれど
旅の終はりの近づきて
おぼろに見へきたる心地す
悠久のいのちとは是
降り来たる災禍に屈せざることとおもへる
近視眼にあらずして遠視眼にて物事を見抜くこととおもへる
されば
再生とは
屈せぬこと哉
待つること哉
とこそおもへれ
再生の道なにものに屈すなく待つることかと思(も)ふ旅の空 丹人
常州友部到着は午後十一時十一分となる
走行距離一千五百㎞の再生の旅
ここに終まへる
(完)
*御礼
今次の紀行文につきては
長きうへに
拙なるゆへの解しがたき点の多々あるを
茲に深謝いたす段に是あり候
皆々様にお読みいただきて
湖面渡の数多頂戴するは
いと有難し
そのお励ましあればこそ
茲に完結できたるものなり
いま
一つのことを為し終へた
清々しきおもひの身を貫きてをれるもうれし
茲に衷心より御礼申し上げる次第に是あり候
丹人頓首 再拝
画像一:朝日を映す勝浦湾 二号館より撮影
画像二:勝浦湾 展望台より
画像三:紀州潮聞の湯に入りて海を見入る(後姿は予なり)
画像四:アカウミガメ 南紀白浜ツーより
画像五:鬼ヶ城の浜木綿
画像六:鬼ヶ城に寄せる波
画像七:めはり寿司 さんま寿司 南紀白浜ツーより
画像八:大又川
画像九:浜松の夕日 2007.7.25 撮影
↑現在30位前後なり↑現在茨城1位なり
毎日一打頂戴すれば有難きかな 宜敷願上奉候
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