ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

石内尋常高等小学校~花は散れども

2009年11月07日 | 誰も逆らえない巨匠篇
現役最高齢監督・新藤兼人による本作品は、自身の出身小学校の恩師をモチーフにした自伝映画である。居眠りしている生徒を叱りつけた後、稲刈りを手伝って夜更かししたことを知るとその生徒のために涙を流す。何事にも裏表のない情の深い熱血先生だったようで、仕方なく学校の先生をしているリーマン的な考えの教職連中とはちょっと違っている。

その市川先生の現役時代から亡くなるまでを、柄本明が一人で演じているのだが、若作りのメイクにかなりの無理があり、その演技自体もザ・ぼんちのオサムちゃん(古っー?!)を見ているようでぎごちなく、ちょっと浮世ばなれした感じが独特の?雰囲気を生んでいる。

長く生きていればそれだけいろいろなことがあるようで、過去のイザコザなんかも水に流せるようになるのかなと思いきや、『原爆の子』で各方面からちゃちゃが入った事件だけはいまだに腹にすえかねているらしく、ケロイ○患者に扮した大杉蓮を使って、これでもかという怨念のこもった演出を見せているのにはちょっと驚かされた。

しかしながら、全体を通してみれば、新藤兼人のノスタルジーが前面に出ているパーソナル作品という印象で、長年のパートナー乙羽信子との遺作になった『午後の遺言状』などに比べると、演出面や台詞でこれといったこだわりもあまり感じられない。

石内尋常小学校の校歌がよっぽど気に入っているようで、劇中しつこいほど俳優たちに歌わせていたが、それぞれの観客にはそれぞれの思い出の校歌があるはずで、そんな校歌を自分のためだけに歌わせた新藤のわがままに、思わず“巨匠の老い”感じてしまう1本だ。

石内尋常高等小学校~花は散れども
監督 新藤 兼人(2008年)
〔オススメ度 

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