喜劇と格言シリーズ最終章の本作は、ウインナーコーヒーの上にのっているクリームのようにひたすら軽く甘ーい印象の作品だ。ただし、その甘さにあまりしつこさを感じないのがロメール流と言うべきか。友だちの恋人を寝とって罪の意識を感じていた市役所勤めの公務員ブランシュ(エマニュエル・ショーレ)だが、どっこい同じことを友達のレア(ソフィー・ルノアール)もやっていたという、しょうもないオチ。
赤や青、黄色に緑….原色を大胆に配した俳優たちの衣装は、センスがいいんだか悪い
んだかいまいち微妙なところなのだが、野原や湖畔に咲いた花々のように記憶に残る。デジタルリマスター化されてさえいればさぞ鮮やかに目に飛び込んできたことだろう。身長の低いショーレがジャケットを肩にかつきながらBFと連れ立って歩く姿が特に印象的で、もしかしたら小振りのバストを隠しながら美しいおみ足は露出させる苦肉の策だったのかもしれない。
すったもんだのあげく、緑と青の2ペアができてめでたしめでたしのエンディングを迎えるのだか、自分の部屋やBFの前で突如として泣き出すブランシュが、劇中やたらと気にしていた“格”についてここで語っておきたい。学生のレアに比べれば、公務員のブランシュはエリート・エンジニアのアレクサンドルと“格”的には釣り合っているように見える。しかし、エフィカシーが極度に低いブランシュは、「私はブス」「彼の方が格上」「友達の彼とはもう寝ない」とか言って、恋に対してひたすら奥手ぶりを発揮するのである。
友人のレアを演じている長身美女ソフィー・ルノアールは、印象派画家オーギュスト・ルノアールの孫娘。そして、モテモテのエリート・エンジニアを演じているフランソワ=エリック・ジャンドロンのお父様はチェリストだとか。要するに実生活では明らかに名門出身同士の二人が劇中でくっついており、庶民派の二人(ショーレとファビアンを演じたエリック・ヴィラール)も“格”相応のサヤにおさまるという、何ともエスプリ?の効いたシナリオになっているのである。
友だちの友だちはみな友だちだ
『笑っていいとも』
友だちの恋人
監督 エリック・ロメール(1987年)
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