ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

Saltburn

2024年01月06日 | ネタバレなし批評篇

女流監督エメラルド・フェネルの作風は、一言でいうと“猥雑”。前作のフェミニズムムービー『プロミシング・ヤング・ウーマン』も拝見させていただいたのだが、これまた実にいかがわしい作品だ。女友達の復讐のためナース姿でお仕置きをかます演出などを観るにつけ、この世界を支配するシステムにどこかねじ曲がった感情をいだいていることがミエミエなのである。

貴族階級に羨望と嫉妬の眼差しをむける中流階級の主人公オリバーを、見るからに気味が悪い怪優バリー・コーガンが好演している。フェネルの作風に実にマッチする若手俳優なのだが、憧れのボンボン貴族フィリックスの精液が混じったバスタブの排水を飲み干したオリバーが、エクスタシーを感じる演出はいくら何でもやりすぎだ。ジュリア・デュクリュノーやグレタ・ガーウィクのようにグロいシーンの中に、美意識を感じることもなくひたすらグロテスクなまま。フェネル作品の特徴といってもよいだろう。

本作を撮る前に『召使』(SERVANT≒SALTBURN)を観て参考にしたと語っていたフェネル。わきの甘い貴族の坊っちゃんを、家事を人質にとって次第に隷属させていく召使のお話だ。1963年公開の映画なので、坊っちゃんと召使のモーホー関係はほんの匂わす程度なのだが、本作のバイセクシャルなオリバーのモデルはおそらく『召使』のダーク・ボガートとみて間違いないだろう。ただし、オリバーを演じるバリー・コーガンはひたすら醜くく、ダーク・ボガートのようにいけていないのである。

『召使』の監督ジョゼフ・ロージー曰く、イギリスのパブリックスクールに通ったことのあるボンボンたちは、ほぼみなゲイの洗礼をうけているそうで、本作に登場するフィリックスやファーリーのようなボンボン育ちが、オリバーのテクにやられてしまってもなんら不思議ではないらしいのである。ソルトバーンの大邸宅に友人として招かれたオリバーが、(心理的に)家族にとりいっていく“パラサイト”式ストーリーには実は裏があって...みたいなオチは別にいらなかったような気がする。

フルチン姿(ボカシ付)で大邸宅の中を踊り回るお調子にノリ過ぎたオリバーに、ラストは何らかの形で正義の鉄槌を下すべきだったのだ。ヘンリー8世のように梅毒をうつされて不能になってしまうとか、実はキャットン家が借金まみれだったとか、あるいは邸宅の迷路で迷子になり(素っ裸で自分の🪓?を握ったまま)凍死してしまうとかw....悪が悪のまま勝利をおさめる映画はハリウッドでは確かご法度なはずで、Amazonオリジナルの配信用に撮られた作品だからこそ許されたエンディングなのであろう。

Saltburn
監督 エメラルド・フェネル(2023年)
オススメ度[]


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トップガン マーヴェリック | トップ | 2024年ウィーンフィル ニュー... »
最新の画像もっと見る