ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ゴールデン・リバー

2021年07月17日 | ネタバレなし批評篇


父親を殺された少女がジョン・ウェイン扮する元保安官を雇い見事復讐を遂げる『勇気ある追跡』とストーリーがとても似ている。『THE SISTERS BROTHERS』というヘンテコリンな名前のついた小説を、ジジョン・C・ライリーが読んでいたく気に入り映画化権を取得、オーディアールに監督を依頼した1本である。

冷酷非道な兄チャーリー(ホアキン・フェニックス)と殺し屋をやめたがっているお人好しのイーライ(ジョン・C・ライリー)は、提督からある山師殺害を依頼される。“父親殺し”を背景にからめたこのロード・ウェスタン、“毒”によって片腕を失うところなどから察するに、作家はおそらく『勇気ある逃亡』を書こうとしたのではないだろうか。

そんなアメリカ人の原点ともいえる名作ウェスタンのオマージュ原作をフランス人のオーディアールがどう演出するかが一つの見所といえるだろう。監督によると、兄弟が追跡する化学者(リズ・アーメッド)を、暴力や貧富の格差根絶を人生目標に掲げた理想主義者に変更した以外は、とくに原作をいじらなかったらしい。

はからずも化学者のその魔法によって、兄弟は暴力の連鎖から抜け出すことができたわけである。映画エリート一家に生まれ、ネオ・ノワール的な作風でいわばフランス映画界の頂点に立ったジャック・オーディアールだが、本作を見てわかるように近年は異なるジャンルの映画にも積極的にとりくんでいるようだ。

バイオレンス監督と評されることにとことん嫌気がさしているのかはよくわからんが、マイ・ホーム=原点に回帰したジャックの次回作に期待がもてるようなエンディングになっている。ちなみに本作は、26歳で事故死したやはり監督志望だった兄フランソワに捧げられている。

ゴールデン・リバー
監督 ジャック・オーディアール(2020年)
[オススメ度 ]  


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