ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ハッピーエンド

2021年07月18日 | ネタバレなし批評篇


難民の皆さんに我関せずの態度をとる輩に一言もの申す。今までさんざん観客を挑発するような映画ばかり撮ってきたハネケにしては珍しく真っ当な作品だ。とはいっても、難民の皆さんが映画にほとんど顔を出さない演出はいつものハネケ流。2015年に映画の舞台となっているフランスカレー市に難民キャンプが作られた事実を知らないと、あの黒人の兄ちゃんたちがなんで場違いな場所に登場したのか❓だろう。

映画冒頭ママが寝る前のルーティンワークを盗撮するシーンが登場する。ナレーション付きなので犯人は娘のイブちゃんであることが明白なのだか、何のためなのかがよくわからない。この他会話が聞き取れないほどの距離から撮られたシーンが何回も出てくるのだが、観客によからぬ妄想をいだかせる悪魔的なロングショットはいまだに健在だ。

ママの死後、離婚したパパの実家に引き取られたイブちゃん。ボケたふりしてすべてお見通しの自殺願望じいちゃん(ジャン=ルイ・トランティニャン)との会話でネタバレする。あの時のあのシーンはそういう意味があったのか。大金持ち一家を次から次へと襲う災難を、まるで写メでも撮るようにボケーと眺めていた我々観客の頭を、ハネケは思い切り叩きつけるのである。

その会話のシーンでイブちゃんが着ていた『I ☆JAPAN』Tシャツを覚えていらっしゃるだろうか。映画の中で起きた架空の事件、実はこの日本で実際に起こっていたというではないか。新聞でそれを読んだハネケは、その時この映画の着想を得たという。他人の心の痛み、それが血の繋がった家族であっても理解できなくなっているZ世代の子供たち。人間という存在を単純化しすぎたバーチャル社会のつけがめぐりめぐって、いよいよ日本にも回ってきたのかもしれない。

ハッピーエンド
監督 ミヒャエル・ハネケ
[オススメ度 ]


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