ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

白鯨との闘い

2018年07月14日 | ネタバレなし批評篇


スティーブン・スピルバーグの『JAWS』がメルヴィル原作の『Moby-Dick』をベースにしているのは有名な話だが、本作にエイハブ船長は登場しない。いわば『JAWS』のメタネタを映画化した作品だ。

『Moby-Dick』はこれまで何度か映画化されているが、銛のロープに絡まって白鯨と一体化したエイハブ(グレゴリー・ペック)が、ピークォド号の船員に向かって“おいでおいで”をするシーンを鮮明に覚えている。

この映画にも当然、白鯨との壮絶な戦闘シーンが登場するものの、むしろ闘いに敗れ海にホッポリ出された乗組員のサバイバルにより多くの時間が割かれており、名匠ロン・ハワードのクローズアップを多用したカメラが克明にそれを描き出している。

ラスト近くの、漂流するボートをしつこく追い回していた“Moby-Dick”が、ボロボロの一等航海士チェイス(クリス・ヘムズワース)たち生存者を見逃すシーンが印象的だ。その上に小さな銛が突き刺さった目で“Moby-Dick”が見たものは、人間として最低限の倫理を捨て去り自然の力の前にひれ伏したホモサピエンスたちだったのではないか。

結局数ヵ月後故郷に戻ることがかなったチェイスと船長を待っていたのは、捕鯨投資家たちによる事故隠蔽工作だった。その強欲な白人投資家たちこそもう一方の“Moby-Dick”だったのかもしれない。

白鯨との闘い
監督 ロン・ハワード(2017年)
[オススメ度 ]

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