ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

12人の怒れる男

2009年02月02日 | ネタバレなし批評篇
ヘンリー・フォンダ主演のオリジナルとは別物のリメイク作品というふれ込みだったが、ストーリーや人物設定などにかなりの共通点を発見できる。義父を殺し金を奪った容疑で逮捕されたチェチェンの少年を、資本経済転換中のロシア人陪審員が審議するというお話。少年の無罪を主張する者がはじめは12人中1人だけだったのが、審議を重ねていくうちに無罪信奉者が一人また一人と増えていく展開はオリジナルとまったくおんなじだ。

ただし、その審議の進め方がアメリカとロシアではかなり違っている(かのように描かれている)。あくまでも法にのっとりロジカルに反対派の主張を退けていったオリジナルの脚本に対し、本作品は陪審員が各自自分の身の上話をして相手の情に訴えるという、「こんな適当でいいの?」とこちらが心配になるほどアナログな展開が特徴だ。

「感情の入り込むスキのない法治主義はロシアにはなじまない」チェチェン紛争に対するロシア人の複雑な感情を背景に、アメリカ的法治主義に対する批判をチクっと織り交ぜている。共産主義をすっかり過去の異物扱いする資本主義ずれしたロシア人たちの変わり身の早さには今ひとつ釈然としなかったが、新しいロシアを感じさせてくれる1本であることはまちがいないだろう。

160分という長尺のせいか、監督自らが演じた謎の芸術家の身の上話がカットされていたのも残念だった。

12人の怒れる男
監督 ニキータ・ミハルコフ(2007年)
〔オススメ度 

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