ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

フェルマーの最終定理

2018年04月04日 | 映画評じゃないけど篇


「n≧3のとき、
Xn+Yn=Zn を満たす、
自然数 X、Y、Zは存在しない」

n=2であるならば、小学生でも知っているあの有名なピュタゴラスの定理とまったく同じ数式であることに気づくだろう。

17世紀フランスで数学を趣味として楽しんでいたピエール・ド・フェルマーが、n>2にしてみたらどうだろうと遊び半分で思いついた問題が、なんと古今東西の一流数学者たちが300年かかっても証明できない最終定理になろうとは、当人も想像していなかったにちがいない。

メル友にこれ解けまっかーと難問を作って手紙を送りつけては悦に入っていたフェルマー、余白がないので解答はようかけませんみたいな茶目っ気もあった人らしい。確率論や幾何解析、微積分など後世へ多大な功績を残す仕事をしながら、本人数学で身をたてる気はさらさらなかったという。

この最終定理も、愛読書の余白にかかれていたメモをフェルマーの死後息子が発見し出版されて、ようやく公の知るところになったというから驚きだ。体制がコロコロと入れ替わる当時のフランスは、何事も目立つことはご法度な時代だったらしいのだ。

そんな隠者フェルマーの遊びに付き合わされた数学者たちのドキュメンタリーが本書であり、同内容のBBC放送番組でプロデューサーも勤めた物理学者サイモン・シンが執筆に当たっている。変人の印象が強い物理学者から見ても数学者、とりわけ現実社会には何も役に立たない数論の専門家は輪をかけた変人ぞろいだという。

そんな変人もとい天才たちが、寝食を忘れるほどに研究に没頭し、ある者は視力を失い、ある者は生命まで捧げ追い求めたものは一体何だったのか。無論それは富とか名誉とかいう俗にまみれた価値観ではなく、神の姿にも似たきわめて純粋な、数学的“美”だという。

数論の始祖ピュタゴラス、キュプクロスの天才オイラー、夭折の反逆児エヴァリスト・ガロア、そして忘れてはならないのがアンドリュー・ワイルズによる証明の土台を作ったといっても過言ではない谷山=志村予想。隠者フェルマーの難問に関わる仕事をなしとげた数学者たちの輝かしくも悲しい歴史を知るだけでも価値のある1冊である。

フェルマーの最終定理
著者 サイモン・シン(新潮文庫)
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