ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ファストフードが世界を食いつくす

2008年03月25日 | 映画評じゃないけど篇
アメリカ的世界均質産業=グローバリズムの象徴、ファストフード業界の闇を暴いた本書はその内容のあまりのエグさにかなりの反響があったらしい。不法労働者を最低賃金で雇用し、人の口に入る食物に関して安全対策を最大限怠る?という手法でひたすら利益のみを追及する。面白いのは、その人間性を無視した画一的なシステムが、アメリカ人(とくに共和党)が最も嫌う共産主義体制に酷似しているという点だ。

糞もミソも一緒の劣悪な環境の食肉工場から出荷される細菌まみれの食肉を食わされる消費者にとってはたまったものではない。自分で食えないモノを人に食わすなと言いたいところだが、共和党に多額の献金をしている大企業にとって都合の悪い法律が民主党から出されると、すぐさま次の共和党政府によってつぶされるというおかしな状況がずっと続いているのがアメリカの現状なのだ。自由競争を金科玉条のように唱えるグローバリズム産業の台頭によって、O-157やサルモネラ菌によって汚染された食肉を食わされ、劣悪な職場環境でコキ使われるのが、結局我々消費者(特に低所得者層)であることがこの本を読むととてもよくわかる。

クラシックやオペラなどと同様に本来は<文化>であるべき食物に、製造業と同じ原理を持ち込む自体そもそも間違っているような気がする。ファストフードに代表される大量生産システムが、未来につなげるべき資産や資源を猛スピードでただ食いつぶしているだけだという事実に、アメリカ人やアメリカのマネをして見せかけの競争に狂騒している日本人たちもそろそろ気づかなければならない段階にきている。


著者 エリック・シュローサー(草思社)
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