ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

クリード チャンプを継ぐ男

2019年12月25日 | ネタバレなし批評篇



マーティン・スコセッシが、何かというとすぐにシリーズ化したがるハリウッドの傾向を“テーマパーク”にたとえて馬鹿にしていた。しかしシリーズ通算7作目にあたる本作は、批評家連中の評価もすこぶる高くしかも興行的にも大成功をおさめたときく。ロッキー・バルボア(シルベシター・スタローン)最大のライバルにして恩人でもあるアポロ・クリード(カール・ウェザース)の隠し子アドニス(マイケル・B・ジョーダン)と、そのアドニスを一人前のボクサーに育成するロッキーとの絆を描いたスポ魂ムービーだ。

全くの無名ボクサーだった“イタリアの種馬”ことロッキーが最強チャンプアポロ・クリードとの身分違いのタイトルマッチに挑む『ロッキー』とほぼ同じ行程を歩む本作。正当なチャンピオンの血統を有するアドニスの手助けをして無敵の現チャンピオンとの一戦に挑ませるという筋書は、かつて時代の革命児だったロッキーが年老いて正統的黒人チャンプの血統=保守の軍門に下るというストーリーともいえる。「クリードという名前を背負って負けることが怖い」とアドニスに再三語らせる演出も、本作がコンサヴァ・ムービーであることの証拠であろう。

ゆえに保守寄りの評論家受けがすこぶる良い本作なのである。スカイウォーカーの血なんか関係ねぇ、これから名も無き戦士たちの新しいSWを見せていくんだと意気込んだJ.J.エイブラムスは、フォースの伝統を重んじる保守系のSWファンから総攻撃を受けたという。革命か、それとも(伝統との)融和か。『カラマーゾフの兄弟』じゃないけれど、そこんとこのサジ加減をちょっとでも間違えると今後のシリーズ化作品には、(直近の『ターミネーター』のように)評価も興行もともに撃沈という悲しい結果が待ち受けているのである。

ミッキーを悪性リンパ腫におかされたロッキーに、エイドリアンをアドニスの彼女ビアンカ(テッサ・トンプソン)に置き換えたとしても、ポルノ男優としてキャリアをスタートさせたスタローンのよどんだ瞳が鋭く輝くアイ・オブ・タイガーへと変貌を遂げたあの時代にはけっして戻れないのである。できることなら、過去の栄光にすがりきった本作のような映画ではなく、枯れきったスターの最期の“死に花”を是非映画の中で見てみたい気がするのだが。

クリード チャンプを継ぐ男
監督 ライアン・クーグラー(2015年)
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