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インターミッションが真ん中に入る179分の長尺作品は、人口世界第一位、GDPで世界第五位に躍り出たインドの勢いをそのまま感じさせる超大作である。こてこてのボリウッド作品にもかかわらず、高齢少子化の影響で全く勢いのないわが日本や世界中でロングヒットを記録、世界各国の映画クリエイターたちも本作にはこぞって賛辞を贈っているのだそう。
時代設定は1920年英国統治下にあったインドで、大義のため英国政府の警察官になったラーマと、妹をその占領軍に連れ去られてしまった森の部族の勇者ビームの物語。ワイヤー&CGを駆使したアクションはもちろん、踊りあり歌あり、笑いありお涙頂戴なんでもありの(お色気はなかったけど)、一大“ごった煮”エンターテイメントなのだ。
インドを統治する英国軍をこれでもかと悪者に描いた勧善懲悪のストーリーなんて今更とも思っていたのだが、映画のというかインドという国家の“勢い”についのせられて最後まで見てしまう一本なのだ。イギリス人評論家は、反英感情むき出しの本作にはきっと酷評を下すだろうと思いきや、これがまさかの高得点。多極化分断化に歯止めがかからない世界情勢下エリザベス女王亡き今、何としてもインドを英国連邦にとどめておきたいという配慮が彼らのなかで働いたのかもしれない。
ブルース・リーが中国をバカにする白人たちに怒りの鉄拳をくらわしたように、ブラウン・スキンのインド人を虫ケラ以下に扱う英国兵を、なんの躊躇もなく殺しまくるラーマとビーム。教育を受けた大衆が武器をもって大義のために一致団結すれば、白人社会おそるるに足らず。これからは俺たちインド人の時代だぜとばかりに、キレキレのナトゥダンスを足腰の弱った白人たちに見せつけるのである。
ラーマとビームがゲイに見えてしょうがなかったという批判はさておき、映画ラストのアゲアゲ国威高揚演出は、戦時中の国でよく作られていたプロパガンダ映画と瓜二つ。衰退著しいアングロ・サクソンの二枚舌にのせられて、国境を接する中国人民解放軍とやる気まんまんのインド軍が、よもやプーチンのロシア軍と同じ轍を踏まないことをせつに願うのである。
RRR
監督 S・S・ラージャマウリ(2022年)
オススメ度[⭐️⭐️⭐️⭐️]