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クリストファー・ノーランの弟ジョナサンが製作にクレジットされている本作は、アメリカ映画にも関わらず英国ものっぽく、SFにも関わらずアクションやCGもおさえめで、むしろクラシックなラブストーリーに注目すべき作品だ。海面上昇により高潮におそわれベネチアのようになってしまった近未来のマイアミが舞台。そこで、3Dホログラム型の記憶再生マシンを使って、顧客の記憶水先案内業を営むニック(ヒュー・ジャックマン)が主人公だ。
そこにひょっこりと現れた運命の女メイを演じるのが、トランジスタ・グラマーのレベッカ・ファーガソン。一目会った途端、フォーリン・ラブに陥ったニックだったが、突如としてニックの前から姿を消したメイを捜索しているうちに、ドライランドに住むある富豪の遺産争いに巻き込まれてしまう。メイがニックから奪ったのはニックの♥️だけだったのか、それとも....
記憶案内人という職業はノーランの『インセプション』を思い出させるが、あんなに大げさなセットやアクションはほとんど登場しない。自慢のウルヴァリン・ボディもチラ見せ程度、ファーガソンとの絡みも非常にオーソドックスで、デイト・ムービーとしてもおすすめできるレベルにとどまっている。未来への希望を掲げる作品が非常に多いハリウッドSFにあって、この主人公ニック過去を振り返ってばかりでまったく未来を見ようとしないのである。
唯一の相棒ワッツ(ダンディ・ニュートン)からも、失踪したメイの過去が気になってまったく仕事が手につかなくなったニックに「あなたは前を見ていない」と忠告されるのだが、聞く耳持たず。ここまで未来を向いてひたすら突っ走ってきたアメリカがいずれ落ちぶれた時、かつての大英帝国のように過去の栄光を懐古する日々がやっくるのではないか。この映画にはそんな寓意が込められている気がするのである。
ニックがいずれ真相にたどり着くことを確信していた(あるいは麻薬接種による幻覚か)メイとニックの再会シーンは、年老いたレイアとルークの再会のごとく、現実ではないゆえに感動的だ。冥府下りのオルフェウスが後ろを振り返ったように、ニックはメイとのラブラブな日々を、記憶再生マシーンでひたすら繰り返すバーン状態に自らを置くのである。「幸福とは繰り返しを待ち望むこと」とミラン・クンデラは小説に書いていたが、過去は人々の記憶の中で美化されながらいつまでも残りつづけるのである。
レミニセンス
監督 リサ・ジョイ(2021年)
オススメ度[
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