ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2019年11月19日 | 映画館で見たばっかり篇
生涯に10本しか映画を撮らないと宣言しているタラちゃんことクエンティン・タランティーノ通算9本目に当たる本作は、ハリウッドを出禁中のロマン·ポランスキー監督の元妻シャロン・テート惨殺事件をモチーフにしている。しかしこの映画、一種の歴史改変ものといってもいい思わぬどんでん返しがラストに待っている。

スティーブ・マックイーンやブルース・リーのそっくりさんまで登場させて、ハリウッド映画に対するオマージュ全開の映画のようにも見えるが、タラちゃんがスポットライトを当てているのは、70年前後の人気を博したTVドラマやマカロニ・ウェスタン。アカデミー会員がB級として無視を決め込んだ(ハリウッドを瀕死に追い込んだ)作品ばかりで、本作でタランティーノがオスカーを本気で狙ったかどうかははなはだ疑問である。

人気のピークを過ぎた下り坂ドラマ俳優リック・ダルトン(レオナルド·デカプリオ)は、映画俳優への転身がうまくいかず酒浸りの毎日。台詞も満足におぼえられない自分に腹を立てすぐに泣き言をもらすダメダメぶり。そのスタントダブル兼運転手として雇われているクリフ(ブラッド·ピット)は、妻殺の嫌疑をかけれた過去があるが仕事ぶりは真面目、全盛期のブルース・リーを投げ飛ばすほど腕っぷしは滅法強い。

途中テート殺しの真犯人チャールズ・マンソン一味の巣窟をクリフが訪れ一悶着おこすシーンが盛り込まれ、ヒッピー文化衰退のきっかけとなったあの事件当日のクライマックスへと物語はじわじわ近づいていく。そしてとうとう事件勃発か…あれれ????と思う暇もなく想定外のバイオレンスシーンの連続に思わず吹き出してしまった私。周囲を見回すと誰一人笑うどころか皆さん困惑した表情でスクリーンをじっと見つめているではないか。あの丸焦げシーンなんか鉄板で笑うとこでしょ。

いつから日本人はモラリストだらけになってしまったのか。せっかくタラちゃんが用意してくれたポリコレ無視の特上バイレンス・コメディ?だというのに。やってることは『パルプ·フィクション』と同じなのに、どこぞの国の映画賞という御墨付きをもらわなければ、人目を気にして笑うことさえ許されない風土というのはいかがなものか。おそらくこの映画のラスト20分は、全米の映画館が不謹慎な笑い声で溢れ返ったことだろう。

落ち目のリック・ダルトンが現在のハリウッドを象徴しているように、アメリカが牽引してきた資本主義経済が停滞からマイナス成長時代へと突入しつつある今日、もう笑うしかないでしょというのがこの映画のスタンスのような気がするのだ。まるであんたたち(ハリウッド)が馬鹿にしたもの(B級映画)に助けられる気分ってどうよ?とでもいいたげなのだ。ポランスキー監督『ローズマリーの赤ちゃん』がその後起きた惨殺事件を予言する映画とも言われているが、今までの権威を支えてきたモラルや法律が糞の役にもたたなくなる時代がやがて訪れることを本作は暗示しているのかもしれない。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 監督 クエンティン・タランティーノ(2019年) [オススメ度 ]
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