NHKのBSやWOWOWでなぜか繰り返し放送されている戦争映画。ロバート・アルドリッチといえば、列車運転手とホーボーの死闘を描いた『北国の帝王』をまず思い浮かべるが、宿命のライバル、リー・マーヴィンとア-ネスト・ヴォーグナインが本作にも登場している。ノルマンディ上陸作戦を控えた第二次大戦末期、ドイツ将校たちが集まるフランスのシャトーにおける秘密任務をこなすため、なんと刑が確定した札付きの囚人たちが集められた。その囚人たちを鍛え上げるたたきあげの鬼少佐ライズマンを白髪頭のリー・マーヴィンが好演している。
反抗心むき出しの囚人部隊を鍛えあげる映画前半は確かに見応えがある。「デス・バイ・ハンギング(絞首刑)」囚人たちの名前を確定刑と一緒に読み上げる冒頭の見事な演出にはじまり、訓練風景の中に各々の囚人が抱えるトラウマを織り交ぜていく脚本はなかなかの仕上がり。しかし、すきあれば脱走のことしか考えていなかったNo11(ジョン・カサヴェデス)以下のだめだめ部隊の心が、髭剃り事件?を契機に一つにまとまりはじめるあたりから、実はこの映画の加圧レベルが急激に下がりはじめてしまう。
青軍と赤軍に分かれた米軍の予行演習にこの部隊が急遽参加するシーンがあるのだが、囚人部隊の実力に半信半疑だった上層部やダーティ・ダズン(汚れた12の囚人たち)までもがしてやったりの破顔一笑、ちょっと前までの反発心はどこへやらで、いつのまにかすっかりナイスガイな精鋭部隊に大変身してしまっているのである。このほのぼのとしたシークエンスをいれてしまったがために、後に展開される秘密任務の緊迫感がイマイチなのだ。
(テリー・サバラスの危ない性癖こそ虚勢されてはいなかったものの)もしかしたら、脱走しないまでもどさくさにまぎれてカサヴェデスはライズマンを撃ち殺してしまうんじゃないだろうかとか、大男がドイツ兵にプッシュされて?マジ切れしてしまうのではないだろうかとか、ドイツ語を流暢にしゃべれるブロンソンは実はドイツ側のスパイだったんじゃないか、とかいう観客をハラハラドキドキさせる細かい演出が皆無のため、任務遂行のためにマジメに働きすぎる(しかもヤリ口はかなり残酷)囚人部隊に、どうしても違和感を感じてしまうのだ。
(ベトナム戦争のアレゴリーと言われる)ドイツ将校が休暇で集まったフランスのお城で展開される戦闘シークエンスも若干間延びしており、いまいちノリきれない。はたしてこの作戦がDデイ決行に際してどのような効果があるのかも明らかにされてはおらず、訓練成果があらわれたのはロープ投げのみでは、ドイツ軍の銃弾にあえなく散っていった囚人たちの口からも不平不満がもれたにちがいない。反骨精神を高らかにうたいあげた割には、後味の悪さだけが印象に残る1本である。
特攻大作戦
監督 ロバート・アルドリッチ(1967年)
〔オススメ度 〕
反抗心むき出しの囚人部隊を鍛えあげる映画前半は確かに見応えがある。「デス・バイ・ハンギング(絞首刑)」囚人たちの名前を確定刑と一緒に読み上げる冒頭の見事な演出にはじまり、訓練風景の中に各々の囚人が抱えるトラウマを織り交ぜていく脚本はなかなかの仕上がり。しかし、すきあれば脱走のことしか考えていなかったNo11(ジョン・カサヴェデス)以下のだめだめ部隊の心が、髭剃り事件?を契機に一つにまとまりはじめるあたりから、実はこの映画の加圧レベルが急激に下がりはじめてしまう。
青軍と赤軍に分かれた米軍の予行演習にこの部隊が急遽参加するシーンがあるのだが、囚人部隊の実力に半信半疑だった上層部やダーティ・ダズン(汚れた12の囚人たち)までもがしてやったりの破顔一笑、ちょっと前までの反発心はどこへやらで、いつのまにかすっかりナイスガイな精鋭部隊に大変身してしまっているのである。このほのぼのとしたシークエンスをいれてしまったがために、後に展開される秘密任務の緊迫感がイマイチなのだ。
(テリー・サバラスの危ない性癖こそ虚勢されてはいなかったものの)もしかしたら、脱走しないまでもどさくさにまぎれてカサヴェデスはライズマンを撃ち殺してしまうんじゃないだろうかとか、大男がドイツ兵にプッシュされて?マジ切れしてしまうのではないだろうかとか、ドイツ語を流暢にしゃべれるブロンソンは実はドイツ側のスパイだったんじゃないか、とかいう観客をハラハラドキドキさせる細かい演出が皆無のため、任務遂行のためにマジメに働きすぎる(しかもヤリ口はかなり残酷)囚人部隊に、どうしても違和感を感じてしまうのだ。
(ベトナム戦争のアレゴリーと言われる)ドイツ将校が休暇で集まったフランスのお城で展開される戦闘シークエンスも若干間延びしており、いまいちノリきれない。はたしてこの作戦がDデイ決行に際してどのような効果があるのかも明らかにされてはおらず、訓練成果があらわれたのはロープ投げのみでは、ドイツ軍の銃弾にあえなく散っていった囚人たちの口からも不平不満がもれたにちがいない。反骨精神を高らかにうたいあげた割には、後味の悪さだけが印象に残る1本である。
特攻大作戦
監督 ロバート・アルドリッチ(1967年)
〔オススメ度 〕