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CM業界ではすでに成功をおさめていたリドリー・スコットの長編映画のデビュー作は、戦争を描かずして反戦を歌った作品なのではないだろうか。壮絶な戦闘シーンを描けば描くほど、登場する兵士の勇気が誇張され、映画は逆に好戦へと転びやすくなるからだ。
あの『七人の侍』でさえ、「勝ったのは村人だ」なんてとってつけたようなセリフをラストに言わせて反戦に無理やりもっていこうとしていたが、黒澤の演出が成功していたとはとても言い難い。むしろ菊千代たち侍の壮絶な死に様に、私たちは思わず武士道の何たるかをそこに見出だしてしまったのではないだろうか。
反戦映画を撮るというのはそれほど難しいことなのだ。
延べ6回も決闘をはたしたという実在した2人のフランス軍人デュベール(キース・キャラダイン)とフェロー(ハーヴェイ・カイテル)の物語。時代は19世紀ナポレオン戦争の真っ只中。そもそも内輪揉めなどしている場合ではないと思うのだが、何故か“ラ”しかフランス語を話せない粗暴なフェローはモテモテのジェントルマンデュベールがとにかく気にくわない。女の前で恥をかかされたことがきっかけで、この後顔を合わせる度に剣を交えることになるのだ。
「あいつは将軍の犬だ」とか何とか難くせをつけては、デュベールに決闘を申し込む狂犬フェロー。まさかこんなところで奴と鉢合わせするとは。偶然を通り越してもはや因縁のようなものまで感じさせる2人は、決闘のたびにどちらかが重症を負うものの一命を取り留め、再び剣を合わせるという不毛な行いをなんと6回も繰り返すのである。
本当に愛する女性と結ばれ王党派旅団長にまで上り詰めたデュベールはさすがに気づくのである。名誉などという言葉で説明もできない曖昧模糊としたもののために「何て愚かな」決闘をこれまで繰り返してきたかを。最後の決闘に勝利したデュべールは、ナポレオンの没落とともにすべてを失っていたフェローに「今後私の前では死人として振る舞え」と情けをかけるのである。
谷間に差し込む美しい朝日を眺めながら決闘に破れたフェローは、平和が訪れたこの地に自分の居場所などどこにも無いことをさとるのであった。
デュエリスト/決闘者
監督 リドリー・スコット(1977年)
オススメ度[
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