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俺はアルファロメオを猛スピードで走らせていた
ただその後の記憶がなかった
エレーヌとの楽しい思い出......
別れたカトリーヌと息子には未だに愛着が残っていた
俺の未練がましい性格は、タバコの吸い方でわかるだろ
もう別れよう、お互いつらくなるだけさ
愛する女にあてた手紙を書いたばかりなのに
もう別れた後のことを考えている
我ながら自分で自分が嫌になる
タバコが止められないわけだ
笑いがこみ上げてきた
俺はアルファロメオのアクセルを強く踏み込んだ
俺は車で一体どこに向かっていたのだ
レンヌ?いや、結局どこにも向かってはいなかった
グルグルと同じ所を回っている
ただそれだけ
何かから逃げるように
ただグルグルと同じところを巡っていた
そんな気がする
結婚、家庭、仕事......
子供に金を無心する親父のようにはなりたくなかった
だから逃げたのかもしれない
全ての責任から
人生から.....
思い出した
俺は交通事故を起こしたのだ
路上に止まっていた2台のトラックを避けるように
急ハンドルを切った俺は車から放り出されたのだ
体の節々が痛むのはそのせいだ
頭もぼーとしているし
目も開けられなかった
エレーヌとカトリーヌ
どちらも傷つけたくはなかった
だから俺は急ハンドルを切ったのだ
つくづく自分の優柔不断さが嫌になった
痛みが薄らいできた
目も開けられる
回りいる男たちが見えた
野次馬、警察に医者......神父はまだ早すぎる
手紙....
あの手紙をエレーヌが読んだら....
破り捨てなければ
でも先にカトリーヌが読んだら....
カトリーヌの悲しみは喜びに変わるのだろうか
いや、その喜びはポールとの新しい人生にはかえって邪魔になる
どちらに転んでも俺には二人を幸福にすることなどできなかったのだ
どちらも傷つけることなしに
体が軽くなってきた
光が見える
俺の未来.....
俺とエレーヌの結婚式?
エレーヌが俺の隣の席で笑っている
親父も、そしてカトリーヌや息子も祝福してくれているようだ
おや右側の席にいる見知らぬ男たちは一体誰だ?
野次馬、警察、医者、それに神父まで
もう痛みは消えていた
俺は、俺は.........
先刻までの光が嘘のように
目の前が暗くなってきた
もう何も考えられなかった
もう何も感じなくなっていた
俺は、俺は.......永久に目を閉じた
すぎ去りし日の
監督 クロード・ソーテ(1969年)
オススメ度[
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