前作『ブレス』で復活を果たしたかに見えたキム・ギドクではあるが、本作品では再び『絶対の愛』と同じホラー路線に逆戻り。スランプなのか制作側との取り決めなのかは定かではないが、日本からオダジョーをわざわざ主役に迎えた本作品は商業主義の臭いがぷんぷん漂う“らしくない”1本となってしまった。
印鑑を彫る仕事をしているジン(オダジョー)が夜毎見る夢を、夢遊病の気がある女(イ・ナヨン)が実行動に移すという設定はまあ許せるとしても、要所要所を締めるべき肝心の演出がまったくの空振りに終わっているのはどういうわけだろう。オダジョーは日本語他の登場人物はすべてハングルをしゃべる不思議な設定もさることながら、いつも以上に饒舌な会話に違和感を感じないではいられない。
夢遊病の女の行動をくい止めるために、2人が眠らないように協力しあうのだが、目をつぶらないように指やテープで目をこじあけるシーンなどは、芸術性どころか出来の悪いコメディにしか見えないのである。「愛の限界を描きたかった」とインタビューに答えていたギドクだが、こんな陳腐な作品ばかりを撮り続けていたら映画作家としての限界も見えてきてしまうにちがいない。
唯一オダジョーとジンの昔の恋人役パク・チアとの迫真の絡みシーンにらしさを感じたものの、とってつけたようなラスト・シーンによってその効果も蝶?消しになってしまった。言葉の通じない男女が夢の中だけで結ばれるような無言劇にした方が、そのギドクらしさを存分に引き出せたかもしれない残念な作品だ。
悲夢
監督 キム・ギドク(2008年)
〔オススメ度 〕
印鑑を彫る仕事をしているジン(オダジョー)が夜毎見る夢を、夢遊病の気がある女(イ・ナヨン)が実行動に移すという設定はまあ許せるとしても、要所要所を締めるべき肝心の演出がまったくの空振りに終わっているのはどういうわけだろう。オダジョーは日本語他の登場人物はすべてハングルをしゃべる不思議な設定もさることながら、いつも以上に饒舌な会話に違和感を感じないではいられない。
夢遊病の女の行動をくい止めるために、2人が眠らないように協力しあうのだが、目をつぶらないように指やテープで目をこじあけるシーンなどは、芸術性どころか出来の悪いコメディにしか見えないのである。「愛の限界を描きたかった」とインタビューに答えていたギドクだが、こんな陳腐な作品ばかりを撮り続けていたら映画作家としての限界も見えてきてしまうにちがいない。
唯一オダジョーとジンの昔の恋人役パク・チアとの迫真の絡みシーンにらしさを感じたものの、とってつけたようなラスト・シーンによってその効果も蝶?消しになってしまった。言葉の通じない男女が夢の中だけで結ばれるような無言劇にした方が、そのギドクらしさを存分に引き出せたかもしれない残念な作品だ。
悲夢
監督 キム・ギドク(2008年)
〔オススメ度 〕