同じアパートに住む隣人がもしも連続殺人鬼だったら。大体自分家の玄関先で、大量に飛び散った血液をモップでぬぐっていたりしたならば、大概バレそうな気がしないでもないのだが、この犯人観ているこちらがじれったくなるほどなかなか捕まらない。基本10日おきに殺人の衝動にかられる犯人のターゲットはいたいけな少女たちなのだが、自分を疑っている住人たちも部屋に連れ込んでは殺した後バラバラにしてスーツケースに詰め込んだりしている。そうとは知らないアパートの隣人同士の協力で犯人がいかに御用となるかが見処になっている。
が、このサスペンスにはもう一つ隠された重要な伏線があることにお気づきだろうか。犯人や👻を含めた主要登場人数は12人、あのキリストの高弟たちと同数なのである。しかも、映画冒頭殺される少女(キム・セロン)の👻が7日間ぶっ続けで義理の母(キム・ユンジン)の元に現れるという、事件解決にあまり役立っていないエピソードがわざわざねじ込まれている。この“7”という数字も、神が世界を創造するまでの日数と同じ。さらにテーマが“隣人愛”とくれば、もうこれは確信犯としかいいようのない宗教ネタ作品なのであろう。
じゃあキリストは一体誰なの?残念ながらそれに該当する人物が見当たらない。ナ・ホンジン監督『コクソン』のような明確なモチーフが存在しないが故に、キリスト教ネタといわれても今一ピンとこないのである。しかし、本作の登場人物相関関係に注目すると、さらに面白いことを発見できる。一人二役のキム・セロンをはじめ、一人娘がいる母親も二人、👻も2人なら、警備員も二人、ついでにヤクザな男(犯人含む)も二人いて、犯人の怪しい行動に気づくサービス業の男も二人なのだ。
さらにさらにそれに重複するように、犯人に殺されるのも2人なら、半殺しにされるのも2人、似たような丸目がねをかけているのも2人いる。そしてキム・セロンの👻に怯えていた人物が実はもう一人いて....『郵便配達は2度ベルをならす』以上のこだわりようなのだ。このキャラクターの重複性が、二人ワンペアの“隣人”と何か関係するのか否かは定かではないが、過去にあまり例をみないユニークな構成と云えるだろう。結局は、ヤクザ男(マ・ドンソク)に金を借りていた叔父さんと脛に傷をもつ警備員の“贖罪”によって事件は一気に解決へと向かうのであった。
『隣人を自分のように愛しなさい』
(マタイによる福音書 第22章より)
隣人The Neighbors
監督 キム・フィ(2012年)
オススメ度[]