『 愛 』
恵も、
めぐむも、
めぐしも、
惨しも、
憐も、
いとおしも、
かなしも、
悲も、
あわれも、
慈も、
いつくしむも、
あわれむも、
皆これ愛である。
そして愛は「うつくしむ」であり、
「うつくし」であり、
「美」なのである。
我邦の言葉は
斯様に愛を語っている。
人の此心の動きのさまざまの中で、
愛が最も優美で
霊妙で
幽遠なものであることは言うまでもない。
…… 幸田露伴 ……
<幸田 露伴(こうだ ろはん)>
1867年8月22日(慶応3年7月23日) ~ 1947年(昭和22年)7月30日
日本の小説家。本名は成行(しげゆき)。別号には、蝸牛庵(かぎゅうあん)、笹のつゆ、雷音洞主、脱天子など多数。江戸(現東京都)下谷生れ。帝国学士院会員。帝国芸術院会員。第1回文化勲章受章。娘の幸田文も随筆家・小説家。
『風流仏』で評価され、『五重塔』『運命』などの文語体作品で文壇での地位を確立。尾崎紅葉とともに紅露時代と呼ばれる時代を築いた。擬古典主義の代表的作家で、また漢文学・日本古典や諸宗教にも通じ、多くの随筆や史伝のほか、『芭蕉七部集評釈』などの古典研究などを残した。
参考資料:ウィキペディア