眼利きの天才。
眼の哲学の青山二郎。
凡人がなかなか理解でき、容易に近づける人物でない。
私が尊敬する青山二郎を中でも分かりやすく語った
見事な人物が森孝一だと感じている。
『青山二郎の素顔』森孝一編の
書物のあとがきから今日は紐解きたいと思う。
その中に出て来る人物、佐藤俊雄がいる。
『「青山二郎が解らなければ、佐藤さんは書けない」
佐藤俊雄もまた日本文化を生きた人だと思っている。』
と森孝一編で書き綴っている。
佐藤俊雄は青山二郎と遠からぬ親戚の間柄で、
佐藤の兄嫁が、
青山二郎の最初の夫人の妹であったことから…それも偶然に出会い
佐藤が青山二郎から大いに影響を受けたと記してある。
その佐藤俊雄は
『厄除け詩集』(サヨナラダケガ人生ダ)等で有名な
井伏 鱒二と交友があった。
佐藤俊雄を詠んでいる井伏 鱒二『厄除け詩集』の「春宵」。
縁とは本当に不思議なものである。
青山二郎が影響を及ぼした縁は青山の死後
今も続いている。
井伏鱒二(1898?1993)著。
昭和12年(1937)5月、野田書房より刊行。
主に「厄除け詩集」と名づけられた創作詩と有名な漢詩を訳した「訳詩」から構成されている。
創作詩では、「なだれ」「つくだ煮の小魚」「歳末閑居」「寒夜母を思ふ」等、ユーモラスで味わい深い逸品が揃っている。漢詩訳では于武陵(うぶりょう)「勧酒」の訳がとくに有名。
『勧酒 于武陵』
コノサカヅキヲ受ケテクレ (勧君金屈巵)
ドウゾナミナミツガシテオクレ (満酌不須辞)
ハナニアラシノタトヘモアルゾ (花発多風雨)
「サヨナラ」ダケガ人生ダ (人生足別離)
『つくだ煮の小魚』
ある日 雨の晴れまに
竹の皮に包んだつくだ煮が
水たまりにこぼれ落ちた
つくだ煮の小魚達は
その一ぴき一ぴきを見てみれば
目を大きく見開いて
環(わ)になつて互にからみあつてゐる
鰭(ひれ)も尻尾も折れてゐない
顎の呼吸(こきふ)するところには 色つやさへある
そして 水たまりの底に放たれたが
あめ色の小魚達は
互に生きて返らなんだ
『春宵』
大雅堂の主人
佐藤俊雄が溝に落ちた
…僕がうしろを振り向くと
忽焉として彼は消えてゐた…
やがて佐藤の呻き声がした
どろどろの汚水の溝であつた
彼は溝から這ひあがり
全くひどいですなあ
くさいなあと涙声を出した
それからしよんぼり立つてゐたが
ポケツトの溝泥を掴み出した
実にくさくて近寄れない
気の毒だとはいふものの
暫時は笑ひがとまらなかつた
参考資料:『青山二郎の素顔』
森孝一:編
安藤秀幸:発行者
(株)里文出版:発行所
眼の哲学の青山二郎。
凡人がなかなか理解でき、容易に近づける人物でない。
私が尊敬する青山二郎を中でも分かりやすく語った
見事な人物が森孝一だと感じている。
『青山二郎の素顔』森孝一編の
書物のあとがきから今日は紐解きたいと思う。
その中に出て来る人物、佐藤俊雄がいる。
『「青山二郎が解らなければ、佐藤さんは書けない」
佐藤俊雄もまた日本文化を生きた人だと思っている。』
と森孝一編で書き綴っている。
佐藤俊雄は青山二郎と遠からぬ親戚の間柄で、
佐藤の兄嫁が、
青山二郎の最初の夫人の妹であったことから…それも偶然に出会い
佐藤が青山二郎から大いに影響を受けたと記してある。
その佐藤俊雄は
『厄除け詩集』(サヨナラダケガ人生ダ)等で有名な
井伏 鱒二と交友があった。
佐藤俊雄を詠んでいる井伏 鱒二『厄除け詩集』の「春宵」。
縁とは本当に不思議なものである。
青山二郎が影響を及ぼした縁は青山の死後
今も続いている。
井伏鱒二(1898?1993)著。
昭和12年(1937)5月、野田書房より刊行。
主に「厄除け詩集」と名づけられた創作詩と有名な漢詩を訳した「訳詩」から構成されている。
創作詩では、「なだれ」「つくだ煮の小魚」「歳末閑居」「寒夜母を思ふ」等、ユーモラスで味わい深い逸品が揃っている。漢詩訳では于武陵(うぶりょう)「勧酒」の訳がとくに有名。
『勧酒 于武陵』
コノサカヅキヲ受ケテクレ (勧君金屈巵)
ドウゾナミナミツガシテオクレ (満酌不須辞)
ハナニアラシノタトヘモアルゾ (花発多風雨)
「サヨナラ」ダケガ人生ダ (人生足別離)
『つくだ煮の小魚』
ある日 雨の晴れまに
竹の皮に包んだつくだ煮が
水たまりにこぼれ落ちた
つくだ煮の小魚達は
その一ぴき一ぴきを見てみれば
目を大きく見開いて
環(わ)になつて互にからみあつてゐる
鰭(ひれ)も尻尾も折れてゐない
顎の呼吸(こきふ)するところには 色つやさへある
そして 水たまりの底に放たれたが
あめ色の小魚達は
互に生きて返らなんだ
『春宵』
大雅堂の主人
佐藤俊雄が溝に落ちた
…僕がうしろを振り向くと
忽焉として彼は消えてゐた…
やがて佐藤の呻き声がした
どろどろの汚水の溝であつた
彼は溝から這ひあがり
全くひどいですなあ
くさいなあと涙声を出した
それからしよんぼり立つてゐたが
ポケツトの溝泥を掴み出した
実にくさくて近寄れない
気の毒だとはいふものの
暫時は笑ひがとまらなかつた
参考資料:『青山二郎の素顔』
森孝一:編
安藤秀幸:発行者
(株)里文出版:発行所