最高裁判決に深刻な疑念を抱かざるを得ない。
彼らは非嫡出子の権利を正当化しおおぴらにしたが、
98%の嫡出子側の権利を 踏み躙ったのだ。
反社会的行為に、御墨付きを与える結果を尊重したのだ。
【月刊正論】
最高裁判決に怒りの倍返しだ!婚外子「不当相続」から家族を守る民法改正の秘策
2013.10.16 03:00 (1/6ページ)[月刊正論] 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131016/bks13101603000000-n1.htm
遺産相続で夫婦間の実子と婚外子を区別するなという最高裁判決。行き過ぎた「平等」で結婚制度を壊してはならない(高崎経済大学教授 八木秀次 月刊正論11月号)
非嫡出子の遺産相続判決に大きな疑問
最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は9月5日、結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を嫡出子の2分の1とする民法900 条4号但書について、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとの決定を示した。裁判官14人の全員一致によるものだ。
この「違憲」の 決定について、新聞各紙はほぼ横並びで肯定的な評価を下している。いわく、「日本人の家族観の変化を踏まえた歴史的な違憲判断である。(中略)『父母が婚 姻関係になかったという、子にとっては自ら選択・修正する余地のない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されない』。最高裁のこの判断を、 多くの国民は違和感なく受け止めるのではないか。(中略)(民法の)速やかな改正を求めたい」(『読売新聞』9月6日付「社説」、以下、他紙も同日)、 「遅すぎた救済である」(『朝日新聞』「社説」)、「最も基本的な憲法の人権規定を重くみた判断であり、違憲の結論は当然の帰結だ」(『毎日新聞』「社 説」)、「判断は当然だろう。速やかに、民法も改正すべきだ」(『産経新聞』「主張」)、「明治民法から続く婚外子差別の解消を迫る大転換である。国会は 早急に不平等な法を正すべきだ」(『東京新聞』「社説」)といった具合だ。
ただ、産経だけは基本的に評価しつつも、「決定は『法律婚の尊重』を否定しているわけではない」と社説や1面の解説記事(滝口亜希記者)で書き、社 会面でも「『法の賢慮』平等主義に敗れた」とする長谷川三千子埼玉大学名誉教授のコメントを掲載するなど一定の留保を付けたり、疑問を呈してもいる。
私が見た中では、正面から否定的な見解を示したのは、新聞では「結婚制度を尊重する上で、婚外子の相続分を嫡出子の半分とする現行法は極めて妥当な規定だ といえる。今回の判断は同制度を危うくするものであるといわざるをえない」と書いた『世界日報』(「社説」)くらいだ。週刊誌は『週刊新潮』(9月19日 号)が「骨肉の争いが美談に化けた『婚外子』最高裁判断の違和感」と題する特集と櫻井よしこ氏の連載コラム「日本ルネッサンス」で否定的に扱っている。
このようにメディアが概ね肯定的に扱っている最高裁「決定」だが、私には大きな疑問を禁じ得ないものだった。ここで問題点とともに、今後の法改正に当たっての留意点について述べておきたい。
法律婚を評価しながら…
非嫡出子(婚外子)について、一般には大きく二つの ケースがある。一つは両親が法律上の婚姻関係(法律婚)を嫌い、意図的に事実婚を採り、その下に生まれるケースだ。子供は法律婚の枠の外で生まれているの で全員、非嫡出子であるが、この場合、全員、非嫡出子なので、両親の遺産相続において平等となり、争いはない。
問題となるのは二番目で、今回の裁判のように、既婚の男女の何れかが、配偶者以外との間に子供を儲けたケースだ。この裁判の事例は『週刊新潮』によれば次のようなもの。
夫婦でレストランを経営していたが、経営を軌道に乗せるため、妻は身を粉にして働き続けていた。無理がたたって入退院を繰り返していた時期、店の学生アル バイトとして採用された女性と夫が肉体関係に陥った。夫は妻と2人の子供(11歳、6歳)を自宅から追い出し、代わりに内縁関係になった女性を自宅に迎え 入れ、ほどなく2人の娘(非嫡出子)が生まれた。店では正妻と内妻の2人が働くという異様な光景が見られたが、夫は常に内妻の肩を持ち、正妻には辛く当 たった。夫の身勝手さに原因があるとはいえ、正妻と嫡出子には極めて気の毒な身の上だ。その夫が亡くなり、その遺産分割をどうするかというのがここでの テーマだ。
現行民法では、夫の財産の法定相続分は配偶者である正妻が2分の1で、内妻は相続できない(900条1号)。残りの2分の1を子供が相続するが、 その際、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1となる(900条4号)。例えば、夫の遺産が1億2千万円だとすると、正妻が6千万円を、嫡出子2人はそ れぞれ2千万円を、非嫡出子2人はそれぞれ1千万円を相続することになる。今回の決定は、これを「違憲」とするもので、嫡出子、非嫡出子の区別なく、夫の 「子」として平等にすべきというものだ。先の計算だと、法改正されれば、「子」はそれぞれ1千5百万ずつ相続できることになる。
問題は、 「子」は同じ父の子として嫡出子・非嫡出子に関わらず「平等」と扱うか、それともそれぞれの子の生まれた父母の関係、すなわち法律婚によるものかそうでな いかについて国(法制度)として考慮するかということにある。今回の最高裁「決定」は諸外国の立法例や国民意識の変化などを根拠に「子」の「平等」の視点 だけを押し通したもので、父母の関係については考慮する必要はないとするものだ。『世界日報』「社説」の言うように「結婚制度を危うくする」ものであり、 長谷川三千子氏の指摘するように「法の賢慮」に欠けるものと言わざるを得ない。
今回の「決定」、裁判官全員一致によるもので、それ自体、大いに首を傾げるものだが学者出身の岡部喜代子裁判官の補足意見は「子」の「平等」だけを押し通すことに若干の迷いが見えるものになっている。
岡部裁判官は法律婚の尊重について言及し、「婚姻の尊重とは嫡出子を含む婚姻共同体の尊重であり、その尊重は当然に相続分における尊重を意味するとの見解 も存在する」とか、「夫婦及びその間の子を含む婚姻共同体の保護という考え方の実質上の根拠として、婚姻期間中に婚姻当事者が得た財産は実質的に婚姻共同 体の財産であって本来その中に在る嫡出子に承継されていくべきものであるという見解が存在する」とし、
「確かに、夫婦は婚姻共同体を維持す るために働き、婚姻共同体を維持するために協力するのであり(夫婦については法的な協力扶助義務がある。)、その協力は長期にわたる不断の努力を必要とす るものといえる。社会的事実としても、多くの場合、夫婦は互いに、生計を維持するために働き、家事を負担し、親戚付き合いや近所付き合いを行うほか様々な 雑事をこなし、あるいは、長期間の肉体的、経済的負担を伴う育児を行い、高齢となった親その他の親族の面倒を見ることになる場合もある。嫡出子はこの夫婦 の協力により扶養され養育されて成長し、そして子自身も夫婦間の協力と性質・程度は異なるものの事実上これらに協力するのが普通であろう。/これが、基本 的に我が国の一つの家族像として考えられてきたものであり、こうした家族像を基礎として、法律婚を尊重する意識が広く共有されてきたものということであろ う。(中略)現在においても、上記のような家族像はなお一定程度浸透しているものと思われ、そのような状況の下において、婚姻共同体の構成員が、そこに属 さない嫡出でない子の相続分を上記構成員である嫡出子と同等とすることに否定的な感情を抱くことも、理解できるところである」
と、婚姻共同体の意義及びそれを保護する必要についても考察している。
婚姻共同体によって財産が形成され、その過程においては苦労もあったのに、そこに属さない、後から出て来た非嫡出子に、その構成員である嫡出子と同 額の財産を持って行かれることに果たして合理性はあると言えるのか。加えて現行法は夫を愛人やその子に奪われた正妻の応報感情に適ったものでもあり、その 点で国民道徳に裏付けられているとも言える。今回の裁判のケースでも正妻の娘(嫡出子)は「死んだ母は弁護士の先生から民法の規定について教えられ、“法 律が守ってくれる”といつも口にしていました。母は40年以上も地獄のような日々を送りましたが、民法の規定があることで愛人とその子に一矢報いることが できる、と思っていたはずです」(上記『週刊新潮』)と述べている。
あのフランスは配偶者を優遇
岡部裁判官は婚姻共同体の保護の必要を唱えながらも、非嫡出子について「婚姻共同体に参加したくてもできず、婚姻共同体維持のために努力したくてもできな いという地位に生まれながらにして置かれるのというのが実態であろう」としながら、「昭和22年民法改正以後の国内外の事情の変化は、子を個人として尊重 すべきであるとの考えを確立させ、婚姻共同体の保護自体には十分理由があるとしても、そのために婚姻共同体のみを当然かつ一般的に婚姻外共同体よりも優遇 することの合理性、ないし、婚姻共同体の保護を理由としてその構成員である嫡出子の相続分を非構成員である嫡出でない子の相続分よりも優遇することの合理 性を減少せしめてきたものといえる」として、結果として「もはや相当ではないというべきである」と違憲の判断をしている。
彼らは非嫡出子の権利を正当化しおおぴらにしたが、
98%の嫡出子側の権利を 踏み躙ったのだ。
反社会的行為に、御墨付きを与える結果を尊重したのだ。
【月刊正論】
最高裁判決に怒りの倍返しだ!婚外子「不当相続」から家族を守る民法改正の秘策
2013.10.16 03:00 (1/6ページ)[月刊正論] 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131016/bks13101603000000-n1.htm
遺産相続で夫婦間の実子と婚外子を区別するなという最高裁判決。行き過ぎた「平等」で結婚制度を壊してはならない(高崎経済大学教授 八木秀次 月刊正論11月号)
非嫡出子の遺産相続判決に大きな疑問
最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は9月5日、結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を嫡出子の2分の1とする民法900 条4号但書について、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとの決定を示した。裁判官14人の全員一致によるものだ。
この「違憲」の 決定について、新聞各紙はほぼ横並びで肯定的な評価を下している。いわく、「日本人の家族観の変化を踏まえた歴史的な違憲判断である。(中略)『父母が婚 姻関係になかったという、子にとっては自ら選択・修正する余地のない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されない』。最高裁のこの判断を、 多くの国民は違和感なく受け止めるのではないか。(中略)(民法の)速やかな改正を求めたい」(『読売新聞』9月6日付「社説」、以下、他紙も同日)、 「遅すぎた救済である」(『朝日新聞』「社説」)、「最も基本的な憲法の人権規定を重くみた判断であり、違憲の結論は当然の帰結だ」(『毎日新聞』「社 説」)、「判断は当然だろう。速やかに、民法も改正すべきだ」(『産経新聞』「主張」)、「明治民法から続く婚外子差別の解消を迫る大転換である。国会は 早急に不平等な法を正すべきだ」(『東京新聞』「社説」)といった具合だ。
ただ、産経だけは基本的に評価しつつも、「決定は『法律婚の尊重』を否定しているわけではない」と社説や1面の解説記事(滝口亜希記者)で書き、社 会面でも「『法の賢慮』平等主義に敗れた」とする長谷川三千子埼玉大学名誉教授のコメントを掲載するなど一定の留保を付けたり、疑問を呈してもいる。
私が見た中では、正面から否定的な見解を示したのは、新聞では「結婚制度を尊重する上で、婚外子の相続分を嫡出子の半分とする現行法は極めて妥当な規定だ といえる。今回の判断は同制度を危うくするものであるといわざるをえない」と書いた『世界日報』(「社説」)くらいだ。週刊誌は『週刊新潮』(9月19日 号)が「骨肉の争いが美談に化けた『婚外子』最高裁判断の違和感」と題する特集と櫻井よしこ氏の連載コラム「日本ルネッサンス」で否定的に扱っている。
このようにメディアが概ね肯定的に扱っている最高裁「決定」だが、私には大きな疑問を禁じ得ないものだった。ここで問題点とともに、今後の法改正に当たっての留意点について述べておきたい。
法律婚を評価しながら…
非嫡出子(婚外子)について、一般には大きく二つの ケースがある。一つは両親が法律上の婚姻関係(法律婚)を嫌い、意図的に事実婚を採り、その下に生まれるケースだ。子供は法律婚の枠の外で生まれているの で全員、非嫡出子であるが、この場合、全員、非嫡出子なので、両親の遺産相続において平等となり、争いはない。
問題となるのは二番目で、今回の裁判のように、既婚の男女の何れかが、配偶者以外との間に子供を儲けたケースだ。この裁判の事例は『週刊新潮』によれば次のようなもの。
夫婦でレストランを経営していたが、経営を軌道に乗せるため、妻は身を粉にして働き続けていた。無理がたたって入退院を繰り返していた時期、店の学生アル バイトとして採用された女性と夫が肉体関係に陥った。夫は妻と2人の子供(11歳、6歳)を自宅から追い出し、代わりに内縁関係になった女性を自宅に迎え 入れ、ほどなく2人の娘(非嫡出子)が生まれた。店では正妻と内妻の2人が働くという異様な光景が見られたが、夫は常に内妻の肩を持ち、正妻には辛く当 たった。夫の身勝手さに原因があるとはいえ、正妻と嫡出子には極めて気の毒な身の上だ。その夫が亡くなり、その遺産分割をどうするかというのがここでの テーマだ。
現行民法では、夫の財産の法定相続分は配偶者である正妻が2分の1で、内妻は相続できない(900条1号)。残りの2分の1を子供が相続するが、 その際、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1となる(900条4号)。例えば、夫の遺産が1億2千万円だとすると、正妻が6千万円を、嫡出子2人はそ れぞれ2千万円を、非嫡出子2人はそれぞれ1千万円を相続することになる。今回の決定は、これを「違憲」とするもので、嫡出子、非嫡出子の区別なく、夫の 「子」として平等にすべきというものだ。先の計算だと、法改正されれば、「子」はそれぞれ1千5百万ずつ相続できることになる。
問題は、 「子」は同じ父の子として嫡出子・非嫡出子に関わらず「平等」と扱うか、それともそれぞれの子の生まれた父母の関係、すなわち法律婚によるものかそうでな いかについて国(法制度)として考慮するかということにある。今回の最高裁「決定」は諸外国の立法例や国民意識の変化などを根拠に「子」の「平等」の視点 だけを押し通したもので、父母の関係については考慮する必要はないとするものだ。『世界日報』「社説」の言うように「結婚制度を危うくする」ものであり、 長谷川三千子氏の指摘するように「法の賢慮」に欠けるものと言わざるを得ない。
今回の「決定」、裁判官全員一致によるもので、それ自体、大いに首を傾げるものだが学者出身の岡部喜代子裁判官の補足意見は「子」の「平等」だけを押し通すことに若干の迷いが見えるものになっている。
岡部裁判官は法律婚の尊重について言及し、「婚姻の尊重とは嫡出子を含む婚姻共同体の尊重であり、その尊重は当然に相続分における尊重を意味するとの見解 も存在する」とか、「夫婦及びその間の子を含む婚姻共同体の保護という考え方の実質上の根拠として、婚姻期間中に婚姻当事者が得た財産は実質的に婚姻共同 体の財産であって本来その中に在る嫡出子に承継されていくべきものであるという見解が存在する」とし、
「確かに、夫婦は婚姻共同体を維持す るために働き、婚姻共同体を維持するために協力するのであり(夫婦については法的な協力扶助義務がある。)、その協力は長期にわたる不断の努力を必要とす るものといえる。社会的事実としても、多くの場合、夫婦は互いに、生計を維持するために働き、家事を負担し、親戚付き合いや近所付き合いを行うほか様々な 雑事をこなし、あるいは、長期間の肉体的、経済的負担を伴う育児を行い、高齢となった親その他の親族の面倒を見ることになる場合もある。嫡出子はこの夫婦 の協力により扶養され養育されて成長し、そして子自身も夫婦間の協力と性質・程度は異なるものの事実上これらに協力するのが普通であろう。/これが、基本 的に我が国の一つの家族像として考えられてきたものであり、こうした家族像を基礎として、法律婚を尊重する意識が広く共有されてきたものということであろ う。(中略)現在においても、上記のような家族像はなお一定程度浸透しているものと思われ、そのような状況の下において、婚姻共同体の構成員が、そこに属 さない嫡出でない子の相続分を上記構成員である嫡出子と同等とすることに否定的な感情を抱くことも、理解できるところである」
と、婚姻共同体の意義及びそれを保護する必要についても考察している。
婚姻共同体によって財産が形成され、その過程においては苦労もあったのに、そこに属さない、後から出て来た非嫡出子に、その構成員である嫡出子と同 額の財産を持って行かれることに果たして合理性はあると言えるのか。加えて現行法は夫を愛人やその子に奪われた正妻の応報感情に適ったものでもあり、その 点で国民道徳に裏付けられているとも言える。今回の裁判のケースでも正妻の娘(嫡出子)は「死んだ母は弁護士の先生から民法の規定について教えられ、“法 律が守ってくれる”といつも口にしていました。母は40年以上も地獄のような日々を送りましたが、民法の規定があることで愛人とその子に一矢報いることが できる、と思っていたはずです」(上記『週刊新潮』)と述べている。
あのフランスは配偶者を優遇
岡部裁判官は婚姻共同体の保護の必要を唱えながらも、非嫡出子について「婚姻共同体に参加したくてもできず、婚姻共同体維持のために努力したくてもできな いという地位に生まれながらにして置かれるのというのが実態であろう」としながら、「昭和22年民法改正以後の国内外の事情の変化は、子を個人として尊重 すべきであるとの考えを確立させ、婚姻共同体の保護自体には十分理由があるとしても、そのために婚姻共同体のみを当然かつ一般的に婚姻外共同体よりも優遇 することの合理性、ないし、婚姻共同体の保護を理由としてその構成員である嫡出子の相続分を非構成員である嫡出でない子の相続分よりも優遇することの合理 性を減少せしめてきたものといえる」として、結果として「もはや相当ではないというべきである」と違憲の判断をしている。
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