8月10日 日本人の大部分は、理性的にはこの戦争には勝てまいと考えている。しかし感情的には、まさか負けやしないだろうとまだ考えている。(中略) 最後の一兵まで、など口でいうのはたやすいが、事実として出来ることではない。向うの三割をやっつけたとき、こちらが七割やっつけられたとしたら、あとは物理的に袋叩きに会うのが戦争というものだ。無益で悲惨な戦争だ。女子供をみなわれわれの手で処分し得るとは、いかに冷静に考えようとしても考えられない。日本人というものが或る人数生き残る以上、それがこれからさき何億年か地球上に生きてゆかねばならない日本人である。(中略) 自分は考える。どれも尤もである。 しかし、やっぱり戦った方が良い。
著者はあれこれ考える。そして最後まで戦い、人体は残らずとも誇りは残るとする。