オタク文化に明るい「ヲタドル」こと中川翔子。一芸アイドルの“はしり”だ(戸加里真司撮影)
(上) 【一芸アイドル百花繚乱】 「カワイイだけでは務まらない」
近ごろ、「歴ドル」に「焼き鳥アイドル」といった風変わりな名前のアイドルが、テレビのバラエティー番組の盛り上げ役などとして活躍する姿をよく見かけるようになった。彼女たちは「一芸アイドル」と呼ばれ、自分だけが持つ“個性”で勝負し、ライバルとの差別化を図っている。アイドル評論家の中森明夫さんは「インターネットの普及が後押しし、今やすぐに誰もがアイドルになれる『一億総アイドル』の時代。芸能界で生き残りをかけた一芸アイドルたちの“戦い”は、ますます激しくなるだろう」と話す。(村上智博)
1、カワイイだけでは…
歴史に明るい「歴ドル」に鉄道好きの「鉄ドル」と、いろんな分野でその道に明るいアイドルが、テレビ番組や男性向け雑誌などで増殖中だ。中には「ブスドル」(ブスなアイドル)といったマイナスイメージの言葉で売り出し中のアイドルまで出現した。
そんな一芸アイドルのはしりとして、フィギュア文化に詳しいオタク系アイドル、中川翔子が挙げられる。彼女が数年前からバラエティー番組で引っ張りだこになったのをきっかけに、オタクがビジネスとして受け入れられ、変わり種のアイドルをすんなりと受け入れる土壌も生まれた。
ある一芸アイドルを抱える芸能事務所幹部は「今のアイドルはスタイルが良かったり、カワイイというだけでは務まらない。テレビ番組は枠があり、マニアックであっても面白く、○○ドルとしてでも売り出さないと、視聴者にはすぐに飽きられてしまう」と指摘する。
2、言った者勝ち
○○ドルには、単なる趣味の延長のような肩書もあり、乱立状態となっている。そんな現状を、中森さんは「今のアイドルは何でもアリ。言った者勝ちになっている」と分析する。
さらに、今どきのアイドルの特徴については「かつては賞味期限があり、アイドルから女優や歌手にと、次のステップに進むための『卒業』という儀式もあった。だが、今はない。それだけに結局はすぐに忘れ去られがち。プロもあまりいないようだ」と説明する。
かつては、映画に出演したり歌手でステージに立ったりと、一人何役もこなして存在感を増す「総合アイドル」が花盛りだった。山口百恵がそのいい例だ。
また、アイドルは、その言葉に「カリスマ性」を内包したあこがれの対象でもあった。だが、中森さんによると、1990年代に入り、「水着を人前で着られたらアイドル」と呼ばれるようになるなどカリスマ性が薄らぎ、一般女性との垣根も低くなっている。
さらにここにきてネットが普及し、誰もが動画投稿サイトやブログと呼ばれる日記を通じ、自由に自分を情報発信できるよう時代が到来。その波に乗り、一芸アイドルたちもじわじわと広がりを見せてきた。
中森さんは「一昔前はアイドルがイベントの告知を一つするのも大変だった。でも、今はブログが当たり前になり、『きょう私、アイドルになります』とプロフィルを掲載すれば即、アイドルになれる。初音ミクといったバーチャルアイドルまで生まれた。アイドルを生み出す若者たちには無限の広がりを持つネットがメディアの主役になっている以上、一芸アイドルも際限なく増えるのは仕方のないことです」と話す。
芸能界のウラ事情に詳しい出版プロデューサー、高須基仁さんは「ブログに発露されているように、最近の若い女性の間では『もっと私を見て見て』という欲求がどこまでも膨れ上がり、手軽にアイドルになりたいと願うケースも増えている。だが、流行に乗っかるだけで、実は勝負するものがないアイドルは多い。たとえ一芸アイドルとしては売れなくとも、映画などにも進んで挑戦するような“本物”のアイドルがもっと生まれてきてほしい」と期待を口にした。
Source来源:http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090922/tnr0909221801012-n1.htm;http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090922/tnr0909221801012-n2.htm;http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090922/tnr0909221801012-n3.htm。
ほか:http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090922/tnr009221801012-n3.htm
(下) 【一芸アイドル百花繚乱】 歴ドル、落ドル、株ドル、農ドル…
無事にデビューを果たしても、1年後に生き残っているのはほんの一握り。そんな芸能界で現在、活躍している今どきの「一芸アイドル」たちは、カワイイだけではないプラスアルファを武器に持っている。ジャンルの数だけ○○ドルはあるといってもいいだろう。中には、聞く人をイライラさせる会話をする「イラドル」、わき毛を伸ばしている「わき毛アイドル」なんて、「ええっ、これもアイドルなの!?」と言わずにはいられないマニアックなものも少なくない。
「○○ドル」と名乗るアイドルの中でも、近ごろの歴史ブームに乗って一気にブレークしたのは、「歴ドル」の美甘子(みかこ)さん(25)だ。幕末に生きた坂本龍馬ら志士が、身元が割れないように使った変名や辞世の句をそらんじているほど歴史に詳しい。テレビのクイズ番組などでおなじみだ。
「好きな歴史にいつも触れながら、仕事ができるのは幸せ。アイドルといわれるのはちょっとくすぐったいが、結婚して子供ができるまでは頑張っていきたい」と話す。
ほかには、幼少時に入院したときの臨死体験で霊感を身につけたという「スピリチュアルアイドル」の疋田紗也さんや、落語家の桂歌春を父に持ち、自身も高座に上がる「落(らく)ドル」こと田代沙織さんもよく知られたところだ。
さらに、レースクイーンとしてサーキットを沸かせ、今では株式の運用などに詳しい「株ドル」の名波はるかさん、コンバインの運転が得意な「農ドル」の田中冴花さん、OLを突然辞めて釣り糸を垂れるようになった「釣りドル」のふくだあかりさん、生粋のお嬢様のセレブアイドル「セレドル」の安藤成子さん、マグロの解体が得意の「魚ドル」の安西真実さん…と、意外性を売りにしている「一芸アイドル」は枚挙にいとまがない。
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さまざまな「一芸アイドル」を、10月からMSN産経ニュースの「週末プレミアム」で取り上げ、その素顔に迫ります。(村上智博)
Source来源:http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090923/tnr0909231800012-n1.htm;http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090923/tnr0909231800012-n2.htm。
写真の来源:http://sankei.jp.msn.com/photos/science/science/090922/scn0909220326001-p1.htm