意思による楽観のための読書日記

パンデミック 追跡者(1,2,3) 外岡立人 ***

H1N1流行にあわせて出版された新型インフルエンザサスペンス。さすがに医師であり、2008年までは小樽保健所長を務めていた著者だけに、真に迫っている。主人公の医師遠田は著者の分身、美人の妻を迎えて新型インフルエンザの押さえ込みに立ち向かう。その背景にあるのが2003年に起こっていたSARS流行。そのときの経験をベースに、新型インフルエンザの拡大を「保護ウイルス」というアイデアで乗り切ろうとする遠田医師。2009年の4月にはこの小説の通りインフルエンザの感染は起きた。小説では北海道のR島で海鳥にふれたという島民に広がりだしたH5N1パンデミックウィルス、実は元はといえば米国サンタフェの研究所から漏れ出たことが分かった。同じウイルス株はエジプトのカイロでも広がりだしていた。これは実際の世界でのH5N1の広がりをなぞっているようだ。日本国内でのウイルス封じ込めと、世界におけるそのH5N1変異株の封じ込めに、遠田医師と友人のウイルス研究家岸本が立ち向かう。

著者は実際にH1N1の流行時にも、それ以前からも自ら立ち上げているHPで毎日の世界からの情報を翻訳し、自分のコメントをつけて提供している。全くのボランティアだというから尊敬する。現実世界のH1N1はとりあえず小康状態に移行したようだが、H5N1はまだインドネシアやカイロでくすぶっている。本小説でも登場した万能ワクチンはまだ研究中、吸入すれば1週間は効力が続く、といわれているCS8958は第一三共から臨床試験を少量して市販の認可申請が出されたと聞いている。小説で出てきたようなアンチパンフルは現実的ではないと思うが、CS8958は今年の秋からの販売予定だそうだ。今後はこうした新薬に期待したい。
http://nxc.jp/tarunai/ 


パンデミック追跡者 第一巻
パンデミック追跡者 第二巻
パンデミック追跡者 3

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