意思による楽観のための読書日記

警視庁神南署 今野敏 ***

今野敏、1997年の警察もの作品、時代を反映してバブルの後始末をする銀行、それにたかり甘い汁を吸おうとするヤクザ、親のすねをかじりながら仲間とオヤジ狩りをして憂さを晴らす若者、そしてバブル破裂の結果開発が中止になったベイエリアから神南署という新たに設置された警察署に湾岸分署から異動になった安積警部補とその部下たち。

銀行員の山崎は上司と飲んだ帰りに渋谷の公園でオヤジ狩りにあい散々な目にあう。警察に届けて捜索が始まるが犯人の若者たちは見つからない。そのことを行きつけのバーで愚痴ると、その若者たちを見つけてやろうという小淵沢と名乗る男から声をかけられる。山崎は告訴するという訴えを取り下げるが、担当していた安積係長は不審を抱く。

山崎は妻とうまくいっていない。そのため銀行の同僚で若い女性由香里と付き合っている。由香里とは毎週会っているが、妻と別れて結婚するつもりはない。銀行では離婚はタブーだからだ。そして小淵沢からオヤジ狩りの若者たちが見つかったと連絡がある。約束の時間に行くと、そこには山崎を襲った若者5人が縛られて座らされていた。取り囲むのは見るからにヤクザ、そして小淵沢は山崎に仕返しをしたいかと聞く。山崎は自分では手をくださないと答えると、ヤクザたちは若者たち5人をボコボコにして両手の骨まで骨折させる。小淵沢はこのお返しとして、銀行が持っている債権である不動産の担保設定について便宜を図るように持ちかける。そんなことは出来ないと山崎は抵抗しようとするが、一度目をつけられたら徹底的に食い物にするのがヤクザである。山崎はもう逃れられない状況に追い込まれていく。

一方、山崎に暴行を働いた若者たちを捜査していた安積係長たちは若者のリーダー格のタクという青年がいることを突き止める。そして小淵沢がピストルで殺されたという連絡が入る。タクがやったのではないかと自宅を張っていたところに隠れていたタクを見つけ逮捕する。しかし、タクは殺人などの覚えはないという。

安積は女が鍵ではないかと推測、小淵沢に女はいないか調べてみる。すると、山崎の勤める銀行に勤務する由香里が小淵沢の女であることを突き止める。これはビンゴだと、山崎の動きを見張る。山崎はそうとも知らず由香里と会う。そこを安積たちに取り押さえられる。山崎も由香里もシラを切ろうとするが、まず由香里が小淵沢との関係を自白する。状況を認識していない山崎、由香里が小淵沢の女であり、銀行情報を引き出すための情報源として使われていたことを初めて知る山崎。自宅の服から消炎反応が出たことで一巻の終わりであった。

やり手の刑事ものとは一線を画するような人間味がある安積係長とそのメンバーたち。シリーズものとして続いていくのであろう。


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