ある年末、その3人のうちの一人が突然死する。死因に不審を抱いた家族が病院を訴えるという。氷見子は北向にカルテの保管を指示するが、理由がわからない。改竄が目的だとしたら問題である。調べると訴えた家族の後ろには病院を辞めていた涼子がいることがわかる。裁判沙汰は週刊誌に取り上げられ「美貌の医師、過剰な医療で患者を死なせる」などとスキャンダルとなる。
なぜ氷見子は特定の患者に薬の過剰投与をしたのか。氷見子は父親との近親相姦をトラウマとして抱えていたことが最後にあかされる。同じ悩みを持つ親子から相談を受け入院してきた患者に薬を過剰投与したことが分かってくる。氷見子は自分の心の悩みを、患者にも投影していたのだ。スキャンダルと裁判、そしてその心のトラウマを抱えた氷見子は自殺する。
渡辺潤一なので立派な小説として出版されているが、これが新人作家の作品であればどんな賞でも選外であろう。読売新聞の連載小説だったらしいが、夕刊フジ向きかな。
幻覚〈上〉 (中公文庫)
幻覚〈下〉 (中公文庫)
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