☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆

作編曲家・ギタリスト塩塚博のブログ。
近年は駅メロディの作曲で知られています。

続・続・異邦人~夢がたり

2011年04月02日 18時38分00秒 | 好きなアーティスト
2/6と2/10に、久保田早紀さんの「異邦人」の動画のこと、
ご本人・旦那の大作さんとのつながりのことなどをブログ・Mixiに書きました。
早紀ファンは今でも多いようで、沢山のコメントをMixiにいただき、ありがとうございました。

今日はさらにその続編を書こうと思います。
よろしかったら2/6・10の記事もご参照下さい。

久保田早紀さんは「異邦人」のヒットでよく知られています。
84年に引退するまでの5年間に7枚のアルバムと9枚のシングルを発表。
もの悲しくエキゾチックなメロディーとともに、詞の世界観も素晴らしいです。

最近のヒット曲の歌詞は、実際の生活に根ざした、
しゃべり言葉で書かれた日記のようなものが多いですね。
しかし早紀さんの書く歌詞は、恋愛ももちろん大きなテーマになっているものの、
宇宙、大地、歴史(過去・未来・時空)、生と死、神、
そして異邦人に代表される「異国情緒」といった多様なテーマを持ち、
実に味わい深く、詞としての美学に貫かれたものです。
これは「詞」と言うよりも「詩」の世界であり、
歌詞カードをじっと読んでいるだけでも充分楽しめるし考えさせられる、
とても高次元のアートと思います。
この部分は日本のポップスの歴史の中でも異彩を放つ存在と言えるのではないでしょうか。



僕はもともと早紀さんのアルバムはファーストの「夢がたり」を所有していましたが、
その他のアルバムは聴きこんでいませんでした。

「異邦人」の動画を見て、いっきに頭の中が久保田早紀モードに入ってしまった僕は、
彼女のアルバムを順に入手し、じっくり聴くことができました。

早紀さんのアルバムは以下の7作です。

「夢がたり」(79年12月) どの曲も魅力にあふれ、大ヒットを記録した不朽の名盤。
「天界」(80年6月) 前作の流れを汲む作品だが、詞の内容はさらにスケール感が増す。
「サウダーデ」(80年11月) ポルトガルで現地ミュージシャンと録音した意欲作。
「エアメール・スペシャル」(81年5月) CMソングなども収録したポップな内容。未聴。
「見知らぬ人でなく」(82年7月) すいません、未聴です。
「ネフェルティティ」(83年4月) すいません、未聴です。
「夜の底は柔らかな幻」(84年10月) ラスト作品。久米大作のプロデュース・編曲で、
プログレ的な新境地を開拓した傑作。

この中の、天界、サウダーデ、夜の底を改めてちゃんと聴きました。
どのアルバムも聴き所があり、とても楽しめる作品です。・・が・・、
やっぱり「夢がたり」は別格の出来栄えと思います。

楽曲の出来がどれも素晴らしいのは言うまでもないですが、
アルバム全体が大きなストーリー(夢がたり)に彩られているところが大きな特色です。
萩田光雄さん作の序曲から、エンディングテーマとも言うべき「星空の少年」まで、
古い名作映画のような感情の流れがあり、引き込まれます。
LPでいうB面には特に琴線をかきむしる曲が並び、
感情の流れはラスト前の「ナルシス」で一度頂点に達します。
それまでの9曲で蓄積されていた感情はダムが決壊するように噴き出し、
涙をこらえることはもう不可能です。
そしてラストの「星空の少年」でロマンチックで美しく、でも悲しい大団円を迎え、
歌詞の「亡き骸」のところにさしかかった瞬間、涙は川のように流れていくのでした。

少年が天に召されて星になる、というこの詞は多くの人に「フランダースの犬」を思い起こさせますが、
「ナルシス」からの流れを加味すると、僕は1955年のスペイン映画「汚れなき悪戯」を強く連想しました。
この映画をご存じない方はここをクリックしてご覧下さい。
http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/MARCELINO%20PAN%20Y%20VINO.htm
 
毎日、早紀さんのアルバムを聴いては涙する僕は、もうほとんどビョーキ(死語!)です。
昨日泣いたから今日はもう大丈夫だろうと思ったのに、
やっぱり今日もボロボロ泣いてしまう自分が信じられません。
でも、そんな自分がちょっと好きだったりします。

「夢がたり」。
皆さんも、じっくり、聴いてみて下さい。
歌詞カードを見ながら聴くのもいいと思います。

金子ディレクター、アレンジャー萩田光雄さんの情熱あふれる仕事にも心から敬意を表します。

そして、さゆりさん(早紀さん)、こんな素敵な作品を届けてくれて、本当にありがとうございました。

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6 コメント

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Unknown (牢屋壮一)
2013-04-30 11:56:34
 初めまして。私は『牢屋〈ろうや〉壮一』と言うハンドルネームを使用してインターネット上で表現〈評論〉活動を展開している者です〈もちろん本名ではありません。因みに私は『男性』です〉。
 ここで取り上げられている『久保田早紀』のファーストアルバムの『夢がたり』ですが、このアルバムに収録されている『ナルシス』と言う曲は私も大好きな曲の1つです。非常にアレンジ〈編曲〉が美しい曲だと私は思います。この『ナルシス』と言う曲のアレンジャー〈編曲家〉は『萩田光雄』である事は言うまでもありません。この萩田光雄と言うアレンジャーはただ単に日本を代表するアレンジャーと言うよりは『世界のミュージックシーン』でも十分に通用するアレンジャーだと私〈牢屋壮一〉は思います。
〈尤も2013年現在の時点における『日本を代表するアレンジャー』と言うのは『瀬尾一三』ですが〉。
返信する
Unknown (しおしお/塩塚博)
2013-04-30 13:16:45
書き込みありがとうございます。

萩田光雄先生は、僕も大好き・大尊敬のアレンジャーです。
「異邦人」も、彼の作ったあの印象的なイントロがなければヒットしなかったのではないでしょうか。

久保田本人(久米さゆり)曰く、ホントにしょうもない
冗談ばっかり言ってる人、だそうです。
異邦人の頃は萩田さんはまだ29が30くらいで、大御所ではなくむしろ若手で、久保田は「みっちゃん」と呼んでいたそうです。

萩田先生はその後、南野陽子の「楽園のドア」などの一連の作品で、美しく琴線をくすぐるストリングスアレンジの名手としての評価を確立させましたね。

4/26に出た僕のCDブックにも、自分が影響を受けた人物のひとりとして萩田先生の名前を出しています。
よろしかったらご覧下さい。
返信する
Unknown (牢屋壮一)
2013-04-30 21:47:58
 牢屋壮一です〈本名ではなく『ハンドルネーム』です〉。
 このブログで取り上げられている久保田早紀が歌った『異邦人』のアレンジャーである『萩田光雄』について少し書いてみたいと思います。
 実は私〈牢屋壮一〉は『太田裕美』の熱烈な大ファンです。あの『木綿のハンカチーフ』を歌った太田裕美です。彼女の曲の殆ど大半のアレンジを手掛けたのが萩田光雄である事は改めて言うまでもありません。
彼女〈太田裕美〉の数多い曲の1つに『海が泣いている』と言う曲があります。アレンジは言うまでもなく萩田光雄です〈作曲は『筒美京平』です〉。この『海が泣いている』と言う曲のアレンジは『ジャンジャンジャンジャン』と段々と盛り上げて素晴らしいアレンジで私〈牢屋壮一〉もこの曲のアレンジが大好きです。
 ところで話は変わりますが、前回の私のコメントの最後の部分で取り上げたアレンジャーの『瀬尾一三』ですが、瀬尾一三は現在、中島みゆきのプロデュースを手掛けている事は言うまでもありません。
 これは『質問』ですが、もしもアレンジャーの萩田光雄と瀬尾一三が正面からアレンジで『真っ向勝負』をしたと仮定したらどっちが勝つと思いますか? 私としては大いに興味と関心がありますので是非とも回答をして頂きたいと思います。
 今回は以上です。
返信する
Unknown (しおしお)
2013-05-01 14:25:54
牢屋壮一さま

たびたび書き込みをいただき、ありがとうございます。
日本のポップス界に多大な貢献をされてきた萩田さんや瀬尾さんに対するリスペクトが伝わってきて、嬉しいです。また、とても博識な方で、ビビッております。

さてご質問の件です。
萩田さんも瀬尾さんも素晴らしい才人であり、両名ともリスペクトしておりますが、それぞれに素敵な「個性」があり、勝ち負けを判定することはちょっと難しいです。
もうひとつ、僕は萩田さんに関してはそこそこ知識がありますが、瀬尾さんに関しては恥ずかしながらあまり知識がありませんので、牢屋さんの納得のいく説明ができません。
そんな訳でお望みのような回答ができなくてごめんなさい。
あしからずご了承下さいますよう、お願いします。
返信する
Unknown (牢屋壮一)
2013-05-05 17:26:19
 しおしお〈塩塚博〉様。牢屋壮一です。今回は萩田光雄の『ライバル』とも言うべきアレンジャーについて書いてみたいと思います。
 私〈牢屋壮一〉はどちらかと言うとアイドル系の歌手よりは自分で作詞・作曲して歌う『シンガーソングライター系』のアーチストが好きです。
 その中でも今回は『渡辺真知子』を取り上げたいと思います。しおしお様も御存じの通り彼女〈渡辺真知子〉がデビューしたのは1977〈昭和52〉年11月の事でした。デビュー曲は言わずと知れた自ら作詞・作曲した『迷い道』です。彼女〈渡辺真知子〉の数多くの曲のアレンジを手掛けたのは言うまでもなく『船山基紀』氏です。彼女の大ヒット曲である『かもめが翔んだ日』や『唇よ、熱く君を語れ』のアレンジを手掛けたのも船山基紀氏です。又、これはシンガーソングライターではありませんが、沢田研二〈ジュリー〉が歌った『勝手にしやがれ』のアレンジも船山基紀氏に他なりません。私〈牢屋壮一〉は『船山基紀』氏こそが他でもない萩田光雄の『ライバル』だと見ています。しおしお様はこれについてどのように思われるでしょうか?
 渡辺真知子に話を戻します。私は渡辺真知子の数多い曲の中でも特に『海辺の昼下り』と言う曲が好きです。この『海辺の昼下り』と言う曲は『唇よ、熱く君を語れ』のB面〈この曲の発売当時はCDではなく黒い45回転のドーナツ盤でした〉に収録されている曲であり彼女の『メモリーズ』と言うアルバムにも収録されています。私はこの曲の存在を『CD』で知りました。アレンジは言うまでもなく萩田光雄のライバルである『船山基紀』氏です。この『海辺の昼下り』と言う曲はサウンドが極めて幻想的な響きの曲です。
私はこの曲〈海辺の昼下り〉をCDプレーヤーを『リピートモード』にして繰り返し聴いています。
 今回は以上です。
返信する
Unknown (しおしお/塩塚博)
2013-05-06 10:26:24
たびたび書き込みいただきありがとうございます。

牢屋さんに申し上げます。
ここは僕のブログです。アレンジャーさんを熱く語るサイトではありません。
それと、僕が今どういう状況にあるか、ご存知と思います。昨日は一世一代の大イベントをやりとげました!!今日からもテレビの取材などが続きます。
そんな事情もご理解いただいた上、アレンジャー談義はどうぞ他のサイトで楽しんでいただければ幸いです。
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