膨らむ建設費 青天井の恐れ
馬毛島(鹿児島県西之表市)で進む自衛隊基地建設の契約額が、2012年度以降で計約1兆246億円に上り、1兆円を超えたことが分かりました。防衛省は最終的な総経費の見通しを示していない上、昨年、完成時期が計画より3年遅れの30年3月末になると発表。死亡事故を含む作業中の事故多発や人員不足で工事は難航しており、青天井に膨らむ恐れがあります。
同基地建設は、種子島から約10キロ離れた無人島を丸ごと基地にする異例の工事です。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設でも、総工費「約9300億円」と言いながら、契約額は計2兆円に迫っています。「日米同盟強化」を掲げれば野放図に支出が許される異常事態です。
項目別では、滑走路や駐機場などの建設が3960億円で最多。係留施設や仮設桟橋などの港湾関係(2607億円)、管制塔や通信施設(1715億円)が続きます。
基地建設費のなかには、予算計上せず辺野古新基地建設の予算から流用されたものもあります。18年度に設計・調査費約34億6700万円、19年度に土地買収費約160億円が流用されました。
防衛省九州防衛局によると、25年に航空施設や格納庫に着手。27年に滑走路の建設を終える予定で、米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)は28年に始まる恐れがあります。
基地建設は、FCLPの移転を求める米国の圧力を受け、日米両政府が合意。米軍がFCLPを恒常的に行うほか、自衛隊の戦闘機による離着陸訓練などを実施します。
市民団体「馬毛島情報局」の三宅公人さんは「現場の作業員から『とてもじゃないが、予定通りに工事が終わらない』という話を聞く。種子島では農業などの地域産業や福祉は疲弊しており、作業員も劣悪な環境に置かれている。軍事ではなく生活にお金を回すべきで、馬毛島の基地建設は中止を」と訴えています。
項目 | 金額(億円) |
---|---|
環境調査、詳細検討、施設の設計 | 186 |
仮設プレハブ、工事用仮設電源、仮設プラント | 1088 |
滑走路、駐機場、燃料施設など | 3960 |
管制塔、通信局舎、飛行管理棟など | 1715 |
係留施設、仮設桟橋など | 2607 |
隊舎、格納庫、倉庫など | 384 |
ユーティリティー、維持管理工事 | 102 |
種子島における施設の設計、整備 | 184.3 |
航空自衛隊の訓練施設 | 5.3 |
事務費 | 14 |
合計 | 1兆245億6000万円 |
※金額は契約ベース |