問われ続ける県民不在の県政
パワハラを告発した県幹部職員を公益通報者保護法に反して処分したことや県政私物化で、兵庫県議会が全会一致で不信任を決議し失職した斎藤元彦氏が、県知事に再選されたことが衝撃を広げています。
選挙では、これまで斎藤氏を支持してきた自民党が3派に分かれて、稲村和美元尼崎市長、清水貴之前維新参院議員、斎藤氏をそれぞれ支援しました。斎藤氏は政党や組織の支援を受けずにたたかったといわれますが、自民党と維新の一部が支援していました。
■中身を批判できず
斎藤県政を含め、長く続いた日本共産党を除くオール与党の下で、兵庫県では▽住宅や学校の上に高速道路を走らせる播磨臨海地域道路建設計画など大型公共事業優先▽高校・病院の統廃合▽県職員の6割リモートワーク構想などの「行革」―ほか、住民福祉をないがしろにする政治が続いてきました。
しかし稲村・清水両陣営は、斎藤県政の下で予算に賛成し県民不在の政治をしてきた自民党の支援を受け、県政の中身を批判できませんでした。稲村氏は「行財政改革」を掲げ、病院統廃合は必要だとし、県立大学無償化の見直しで自民党の一部と一致したといいます。清水氏は「三宮再開発、ウォーターフロント開発をやる」と巨大開発推進を主張しました。
その結果、財政力が全国5位にもかかわらず福祉や教育が全国最低クラスという県政のゆがみをどうただすかが正面からの争点にならず、政策論議のない選挙戦になりました。
メディアも県政の中身に切り込まないなかで、もっぱらパワハラ問題が焦点化され、“斎藤氏かそれ以外の候補か”が争点として押し出されました。そのなかで、「既得権益と一人で闘う斎藤氏」という構図が斎藤陣営によってつくられ、県民の支持を得ることになりました。
■根拠ない情報拡散
今回、SNSで「斎藤氏は公益通報違反に当たらない」「斎藤氏ははめられた」など事実に反する、あるいは根拠のない情報が流され自死した元県民局長や他候補への中傷が行われました。それが選挙結果に影響したと指摘されています。
また、自分の当選を目的にしないと公言する候補が斎藤氏応援で動き、斎藤陣営は事実上、他候補の倍の選挙活動ができることになりました。公正な選挙のあり方が問われる事態です。
自民党政権の圧力を受け、大手メディアは「報道の中立」の名で選挙の争点や各候補の政策を報じない傾向があります。有権者がそれを知りたければSNSに頼るしかない状況となっていないか、あるいは事実に反する情報が流れたとき、それをただしたのか―メディアの役割も問われます。
再選された斎藤氏は県庁での会見(19日)で、公益通報への対応は法的に問題ないという姿勢を示し、県職員への行為も「業務上必要な指示だった」とパワハラと認めていません。
再選されたからと、公益通報違反などをあいまいにすることは許されません。引き続き百条委員会での真相解明が必要です。同時に、県民不在の県政を住民の声と運動で変えていかなければなりません。
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