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志位和夫著『Q&A共産主義と自由――「資本論」を導きに』

2024年07月18日 13時37分35秒 | 一言
平易な論理と言葉で、共産主義の原理を語る
長久理嗣 書評

 12日発売の『Q&A共産主義と自由――「資本論」を導きに』(志位和夫著)について、長久理嗣・日本共産党学習・教育局次長から寄せられた書評を紹介します。


(写真)『Q&A共産主義と自由』

 「人間の自由と社会主義・共産主義」を、多くの人びとに分かる論理と言葉でいかに語るか。本書は、志位和夫・日本共産党議長による、年来の課題にこたえたこん身の作であり、「なぜ」「もっと知りたい」を求める民青同盟の人たちとの共同作業の結晶です。一話完結のQ&Aで、関心のある設問のどこからでも読んでもらえる努力がはらわれました。「共産主義と自由」――この端的な書名に少しでも関心をもたれる方々、共産主義と自由を「相いれない対立物」だと思う人を含め、各界、各層、各世代での語り合いの場が大いに広がるよう、願うものです。

 その上で、本書が持つ理論的意義について、いくつか述べます。

党大会での「宣言」を土台に、綱領上の発展へ
 本書は、日本共産党第29回大会で提唱された三つの角度からの「自由」論を土台とし、その発展をはかって書かれました。

 三つの角度の第一は、資本主義を突き動かす「利潤第一主義」からの自由です。そのための変革、「生産手段の社会化」(Q14~17)と人間の自由とは、深く結びついています。この変革によって、「自由な生産者が主人公」の社会に道が開かれること、貧困と格差から自由になること、「“あとの祭り”の経済」――恐慌や気候危機など無政府的生産がもたらすかく乱のことですが――から自由になり「社会的理性」が最初から働く社会になることが、説かれます。

 その上で、第二の角度は、「人間の自由で全面的な発展」の実現です(Q18~21)。『資本論』での洞察――人間が外的な義務から解放されて自由に使える時間が広がる、そこに「真の富」があることが力説されます。資本によって搾取され奪われている「自由な時間」を取り戻し、「人間の自由で全面的な発展」を可能にする自由な社会をつくろう、と呼びかけられました。

 第三の角度は、発達した資本主義の国から社会主義・共産主義に進もうとする時に、人間の自由という点でも豊かな可能性が開けること、そこには資本主義のもとでの諸成果の「継承」とともに「発展」があることに踏み込んだ解明です(Q27、29、30~32)。「高度な生産力」については、無限の量的増大をめざすものでなく新しい質をもって発展させる、との展望が示されました(Q28)。

 旧ソ連の歴史的失敗は、社会主義・共産主義論の輝きを損なわせるものではなく、発達した資本主義国での変革の中で真の輝きを放つだろうという確信が表明されます(「はじめに」)。

 こうして本書において、三つの角度からの「自由」が、自由を特質とする社会を実現する綱領的な命題として、理念のスローガンとして、展開されました。

 “未来社会の特質は「すべての人間の自由な発展」にある――2004年の綱領改定で確認したこの内容を、国民にどう分かりやすく語るか”、これは『綱領教室』(2013年刊)以来つらぬかれてきた著者の強い問題意識です。本書では、マルクスが自由をキーワードに「生産手段の社会化」を導き出した「フランス労働党綱領前文(1880年)」について、『綱領教室』『新・綱領教室』(2022年刊)での説明を踏まえ、“自由を得るためには生産手段を持つことが必要だが、一人では持てないから皆で持とうということだ”、と平易な言葉で語りかけられます。

マルクスの「自由」論史を徹底研究
 二つ目に述べたいのは、書名の副題「『資本論』を導きに」にかんしてです。

 志位さんは、『新版資本論』『資本論草稿集』『「資本論」全三部を読む 新版』(不破哲三著)をもとに考察をすすめました。そこには、研究上の二重の努力があったと思います。一つは、『資本論草稿集』など原典の徹底研究によって「自由」論でのマルクスの認識の発展を丹念に追跡し、今日に生かす論点と命題を引き出す努力です。いま一つは、その引き出した中身を、“志位和夫版意訳”つまり平易な言葉に置き換えて万人に語りかける努力です。これは、学問的な厳密さを土台にしてこそ可能になります。

「自由に処分できる時間」論
 研究において核に据えられたのが、「自由に処分できる時間(ディスポーザブル・タイム)」論でした。この用語は、マルクスの自由論の全体像に迫る上で、カギとなる用語だといえましょう。

 マルクスの「時間の経済」論については、不破哲三氏による20年来の包括的な研究があります。最近の山口富男・社会科学研究所所長による、研究者の先駆的業績を踏まえた、また「自由に処分できる時間」に訳語を統一した、詳細な研究があります。

 志位さんは、それら全体をもとに、研究をさらに進めました。詳細は、6月25日の講義「『自由に処分できる時間』と未来社会論――マルクスの探究の足跡をたどる」で報告されています(『前衛』に掲載予定)。

 マルクスの文献を執筆順の時系列でたどり、1851年にロンドンで出会った匿名パンフレットでの「自由に処分できる時間」という価値ある考えに感銘を受けたこと、「1857~58年草稿」で、階級社会での「自由に処分できる時間」は被支配階級がつくりだしたものを支配階級が横取りする「対立的・敵対的性格」をとること、搾取がなくなれば「自由に処分できる時間」が万人のものとなると洞察した、と指摘します。「1861~63年草稿」では「自由に処分できる時間」提唱の匿名パンフレットを立ち入って分析し、『資本論』第三部の「真の自由の国」論につながるアイデアを導き出したこと、こうして『資本論草稿集』と『資本論』の論を一体で理解してこそマルクスの未来社会論を全面的につかめる、と論じました。『資本論』第三部での剰余労働の問題の総括と未来社会論、第一部での「自由に処分できる時間」の登場、「労働時間の抜本的短縮」の展望について、一貫した論理で説明されました。

 この古典研究が、党大会決議での第二の角度の自由論と第一の角度の自由論の相互関係を掘り下げる新しい解明として結実しています(Q24)。マルクスの探究は、過労死が依然として切実な日本の現実のなかで労働運動の質的発展への指針として生かせるものであり、労働時間短縮を求めるたたかいへの大きな励ましになること、「自由な時間」の拡大は資本主義体制を変える運動の大きな力になることが論じられました(Q25)。「自由な時間」の拡大の課題について、「国民の生活と権利を守るルール」の継承と「発展」という角度でも議論されています(Q30)。

「生産力の新しい質」
 マルクスは「自由に処分できる時間」論のなかで、不可分の問題として「生産力」とは何かを提起しています。「自由な時間」を持つ人間の労働時間は、労働するだけの人間の労働時間よりもはるかに高度な質を持つと言い、「自由な時間」の増大はその「持ち手」をこれまでと「違った主体」に転化し、最大の生産力となる、という言い方もしています。

 志位さんはマルクスの論を踏まえて、「生産力とは何か」、それは本来、人間が自然に働きかけて人間に役立つものを生み出す人間的な能力=「労働の生産力」であること、しかし資本の支配のもとでそれが「資本の生産力」としてあらわれ、搾取を強化し自然破壊の力をふるっていること、未来社会で「労働の生産力」の姿を取り戻そう、と論じました。「生産力の新しい質」として、(1)「自由な時間」を持つ人間によって担われる、(2)労働者の生活向上と調和した質を持つ、(3)環境保全と両立する質を持つ、と特徴づけています(Q28)。

 マルクスは、どの問題を扱う時にも、それが人間社会と歴史で本来どういう意義をもっていたかを特定の社会的形態にかかわりなく明らかにすると同時に、では資本主義の仕組みのもとではどうあらわれるか――両面から迫っており、著者の考察はこの立場を踏まえてのものです。

 本書はこうして、厳密な学問的検討によって引き出された論点を、平易な言葉で語りかけています。

「Q&A」の共同作業で
 三つ目に、本書の題名にある「Q&A」の側面について述べます。

 科学的社会主義の古典文献として、25のQ&A形式によるエンゲルスの著作『共産主義の諸原理』が思い浮かびます。

 では、21世紀の『Q&A共産主義と自由』の特徴はどこにあるか。本書は、民青同盟の皆さんが、社会主義・共産主義についての学生からの疑問や、同盟内の学びのなかで出された「なぜ」「もっと知りたい」という「声」を集め、35の質問にまとめ、当日の追加質問3を加えたQから成っています。ゼミでは、中山歩美・民青副委員長がその一つひとつを問いかけ、志位議長が答え、中山さんが応答しながら進められました。生きたQあってのAです。民青同盟の努力に敬意を表するものです。

「強く大きな党をつくる決定的な力」に
 「社会主義・共産主義と自由」は、第2次世界大戦後のさまざまな時期に、世界で日本で、さまざまに論じられてきた歴史をもっています。

 第29回党大会の志位委員長あいさつでは、党勢が後退した「客観的要因の最大のもの」として社会主義・共産主義の問題があったと指摘されました。1960年代、70年代前半ぐらいまで「社会主義」に多くの国民が抱いていたイメージは「いろいろと問題はあるが、それでも地球上の4分の1の地域で現に存在している体制」というものだった、それが90年を前後したソ連・東欧の旧体制崩壊を境に「失敗が証明された体制」に激変した、わが党は「崩壊したのは社会主義とは無縁の覇権主義と専制主義の体制だ」と訴えたものの、この世界的な激変が党づくりの大きな障害になったことは疑いない、と。

 しかし今日、「人類は資本主義の体制でやっていけるのか」が問題となり「社会主義」への新たな注目が広がっています。あいさつでは、私たちが「人間の自由こそ未来社会の最大の特質だ」と広く語っていくならば「強く大きな党をつくる上での決定的な力になる」と呼びかけられました。本書を、日本の社会変革を進める「決定的な力」にすべく、広く普及し、語り合うために活用してゆきたいと思います。(日本共産党学習・教育局次長)


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