法改正で幸福追求権の実現を
自公政権が少数与党となった「新しい政治プロセス」のなか、日本が人権後進国からの転換をはかれるかどうかは今年、政治の重要な争点です。その一つが同性カップルへの差別を解消する「婚姻の平等」の法制化です。
2024年は、その点で大きな前進がありました。
同性カップルの結婚を法的な婚姻と認めない現行法の違憲性を問い、全国5カ所6件で性的マイノリティー当事者が起こした訴訟で、札幌、東京、福岡の3高裁判決が、「現行の民法と戸籍法は憲法に違反する」と判断しました。
■憲法違反明らかに
3高裁の判決は、いずれも「法の下の平等」を定める14条1項、「個人の尊厳と両性の平等」に立脚した立法を求めた24条2項に反するとしています。
これに加え、札幌高裁判決は、「結婚の自由」を定めた憲法24条1項に照らしても違憲としました。福岡高裁判決は、「幸福追求権」を定めた憲法13条違反も認定しました。
一連の司法判断で、争点となった憲法の条項のすべてで現行制度の違憲性が明らかになりました。
とくに、福岡高裁判決が幸福追求権を保障した憲法13条に初めて踏み込んだことは重要です。13条はすべての国民に、婚姻についての個人の自由と、婚姻の成立・維持について法的保護を受ける権利を保障していると指摘し、この権利は同性カップルも等しく有していると述べています。
同性カップルを婚姻制度の対象外とすることは「同性の者を伴侶として選択する者が幸福を追求する道を閉ざすことにほかならない」として、権利侵害を認めました。
さらに、地方自治体やヨーロッパ諸国で実施されているパートナーシップ制度を導入・拡充しても、不平等は解消されないと指摘。「同性カップルに対し、端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法14条1項違反の状態は解消されるものではない」と述べ、異性婚と同じ法的な結婚制度を明確に求めています。
■国と国会動かそう
世界では39カ国・地域で同性婚が認められています。しかし、日本では戸籍上同性のカップルの結婚は不適法とされています。
地裁段階では、違憲や違憲状態と判断しながらも、同性婚について現行の婚姻制度とは別の法制度をつくる余地を残しています。
政府は「同種訴訟の判決を注視する」として、いまだ法改正に踏み出そうとしません。原告らは、政府や国会を動かすには最高裁の判断が必要だとして、いずれの高裁判決についても上告し闘いを続けています。
一連の裁判では婚姻の目的や意義が検討されました。東京高裁判決は、子を産み育てることは結婚に不可欠な目的ではなく、また、子を養育している同性カップルもいることを示し、同性婚を男女間の婚姻と区別することは「法の下の平等」に反するとしました。
同性婚を婚姻制度の対象外とすることに合理性はなく、同性カップルへの明確な差別です。政府と国会は「婚姻の平等」にむけて法改正を決断すべきです。声をあげ、幸福追求権を現実のものにするときです。
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