いつもカーテンからもれるオレンジの光、それが、今朝はブルーグレーのものだった。
かねてから一度は目にしたいと思っていた、戦没画学生たちの作品を間近で観る機会を得た。
絵を描くことが好きで、いつか平和な日々の中で思いのたけ筆をふるうことを夢見て散った花びらの残骸がそこにはある。
戦地に赴く前日までキャンバスに向き合ったことを偲ばせる絵の具やパレット、絵筆。
戦地から家族に宛てて描いた絵手紙や、ハンカチ絵もある。
飢えや死への恐怖との闘いのなかで、彼らが思い描いたものはなんだったのであろうか。
いま、たやすく自らの命を絶ってしまうこどもたちに、また、死へ向かわせるようなことをしている人たちに、彼らの叫びを聞かせたい。
***あなたを知らない***
遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺した たった一枚の絵だ
あなたの絵は 朱い血の色にそまっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国の あのふるさとの夕灼け色
あなたの胸をそめている 父や母の愛の色だ
どうか恨まないでほしい
どうか咽(な)かないでほしい
愚かな私たちが あなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく 五十年も経ってたどりついたことを
どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに耳を傾けなかったことを
遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻まれた かけがえのないあなたの生命の時間だけだ
戦没画学生慰霊美術館「無言館」館主
窪島 誠一郎さん
1997.5.2「無言館」開館の日に
かねてから一度は目にしたいと思っていた、戦没画学生たちの作品を間近で観る機会を得た。
絵を描くことが好きで、いつか平和な日々の中で思いのたけ筆をふるうことを夢見て散った花びらの残骸がそこにはある。
戦地に赴く前日までキャンバスに向き合ったことを偲ばせる絵の具やパレット、絵筆。
戦地から家族に宛てて描いた絵手紙や、ハンカチ絵もある。
飢えや死への恐怖との闘いのなかで、彼らが思い描いたものはなんだったのであろうか。
いま、たやすく自らの命を絶ってしまうこどもたちに、また、死へ向かわせるようなことをしている人たちに、彼らの叫びを聞かせたい。
***あなたを知らない***
遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺した たった一枚の絵だ
あなたの絵は 朱い血の色にそまっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国の あのふるさとの夕灼け色
あなたの胸をそめている 父や母の愛の色だ
どうか恨まないでほしい
どうか咽(な)かないでほしい
愚かな私たちが あなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく 五十年も経ってたどりついたことを
どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに耳を傾けなかったことを
遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻まれた かけがえのないあなたの生命の時間だけだ
戦没画学生慰霊美術館「無言館」館主
窪島 誠一郎さん
1997.5.2「無言館」開館の日に
どうして自分で死のうと思うのかな。
もっと相手の気持ちを考えられる人が増えればいいのにな。
本当に、生きたくても生きられないひとたちにとって、自らあえて死を選ぶということは許せないものがあるんじゃないか、と思います。
私は残される家族の気持ちを考えてしまいます。
あんなにしんどい思いをしてこの世に産み出したのに、なんでそんなにあっけなく死んでしまうのよ、と。
作品の下には遺族の言葉が添えられていたりするのですが、切なすぎてまともに読むのがつらいものもあったりするのです。