ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

こころの刃

2007-03-13 | 砂時計
このひとの前世は、どれほどのものだったのだろうか。

先月おばあちゃんになった会社の同僚節子さん。
もう1ヶ月経った先日、息子さん1号がお嫁さんに聞いた。
「オヤジの仏壇の前に、いつこどもを見せに行く?」と。
すると返ってきた応えは衝撃的なものだった。
「私は、アンタの実家にこの先この子を連れて行くつもりはないで。」
息子さんは、何を言い出したのか最初わからなかったそうだ。
お嫁さんいわく、節子さんの家に居るミニチュアダックスフントがいる限り、子どもにリスクを与えたくない、というのだ。
赤ちゃんは、べつにペットアレルギーの診断を受けているわけでもなんでもない。
だが、そういう環境に連れ込みたくないのだ、という。
そして自分も犬が嫌いなのだという。
そんなショックな話を、息子さんから聞かされた節子さんは泣いた。
そんなに犬が嫌いなら、何故婚約もする前から家に泊まりに来たり、犬をさわったりしていたのか。
なんで今頃になって、そんなことを言い出すのか。

一夜明け、どうしても、少しでも仏前にこどもを連れて行きたい、という息子さんにお嫁さんは
「ほんなら、お義母さんに犬を連れて外へ出てもらって。私たちが、家から出たら帰ってきてもらうようにしてくれるのなら、すこーしだけなら連れて行ってもええわ。」

他人の私が聞いていても、腹立たしくなる話だ。
節子さんは「情けない」と泣いていた。
若い夫婦のために、節子さんたち夫婦は新しい戸建の家を援助した。
お義父さんは、新しい家を見ることなく逝った。
そんな快適な環境を用意してくれたお義父さんに、孫を見せることすら拒否するお嫁さん。
陣痛の猛烈な痛みを、自分も一緒になって分かち合い、励ましさすり続けた節子さん。
自分のものには、1円たりとも惜しんで出したがらない節子さんなのに、お嫁さんのためには惜しむことなく援助してあげていた節子さん。
そんなお義母さんに対して、恩返ししてこそ当然のことなのに、こともあろうか孫に会わせたくない、という。
どんな仕打ちをしたというのだろうか。
人一倍気を遣う節子さんが、より気を遣い、言葉に気をつけていたのがお嫁さんだった。
あまりのひどい言葉に、私は節子さんにかける言葉が見つからなかった。

私も動物が苦手だったのでお嫁さんが、室内犬を嫌がる気持ちはわからないではない。
だが、そこにずっと暮らせ、というのでも、犬に赤ちゃんをなめさせろ、というのでもない。
檀那様の実家へ、孫の誕生の報告を仏さんや、お隣に住む大祖母ちゃんにしてやってくれ、というのがどれほどのことだというのだろう。
自分の実母よりも、心をくだいて妊娠中の体調に気を遣ってくれたひとに対してのあまりにもむごいこころの刃に寒気さえする。

子どものころに両親を亡くし、若くして寡婦となった節子さんに、ようやく春が巡ってきたと思うのもつかの間。
楽しみにしていたお孫さんを抱くことすら許されない節子さんの運命が哀れでならない。

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8 コメント

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そんな・・・・ (ゆきゆき)
2007-03-14 19:58:24
CITROENさん、こんばんは。
久しぶりにパソコンを開けてみました。
働くって・・・こんな感覚だったっけ?と思い出しつつ
毎日パートにいそしんでいます。

さて・・・
節子さんのお嫁さんのお話、他人事ながら
本当に哀しい気持ちで読みました。

ワタシも実家が遠いのでなかなか双方の両親に頻繁に会うことができませんが
子どもたちが小さい、今のうちに
ワタシと主人の両親が健在なうちに・・・
と、できるだけ九州に帰るようにと、いつも心に留めています。
そして、帰ると必ず墓参りをして
むすめーずの成長を報告してきます。

なにもできない私からのせめてもの孝行だと思い
今まで暮らしてきました。

うちの地方は田舎なので、ごくごく当然のことだと
思っていましたが考えが古いのでしょうか?
でも、
大事なことは時代を越えてもゆるぎないものだと思います。

祖母が亡くなる直前、ワタシに
「●●ちゃん、早く子どもが出来るといいね。
●●ちゃんと●●くんは元々は他人だけれども
子どもが出来るとそこに絆が生まれて二つの家族は一つに
なるんよ。」

その言葉をかけてくれた二週間後に亡くなった祖母。
哀しみの淵をさまよっていたときに授かった1号。

そして、1号、2号は本当にワタシと主人の家族を繋ぐ絆となりました。

節子さんに春がやってきますように。
お嫁さんのその気持ちが一過性のものでありますように。。。
(例えば出産直後でホルモンのバランスが悪いとか・・・)

なんだか読んでいて涙が溢れてしまいました。
「嫁」という同じ立場として、切なくてやるせないです。
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Unknown (アプリコット)
2007-03-14 20:32:21
アレルギー発症後ならわかりますが、なぜそこまで頑なに拒むのか、他に理由があるのではないでしょうか。
節子さんと息子さんのご自宅のある距離や、季節も関係しているかも知れません。
私自身娘を出産、退院して二日後に主人の両親、叔母、姉夫婦が来て、その後夫の実家に出向いたのは娘が3ヶ月の時でした。(随分先ですね)
夫からその話が出た時、今思えば体力的に一番疲れを感じる時期だったので、車で片道3時間以上の移動、宿泊を伴う外出は辛かったです。(今ほどずうずうしくなっていなかったので、黙って従いましたが
お嫁さんの気性がわからないので、もしかしたら息子さんの話すタイミングが悪かったの・・・とか、初めての子供ということもあってアレルギーのことを良くわからずに過敏になっているのかも…と考えてしまいます。
でも節子さんの気持ちを思うとやるせないですね。
息子さんもそこまで洗いざらいお母様に話さなくても・・・と思うのですが、きっと相当気を揉んで困っていらっしゃるのでしょうね。
春になり、季節もよくなれば気分も変わると願っています。
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やさしさが足りない (CITROEN)
2007-03-14 21:57:02
って思うのですよ。その言葉に。

ゆきゆきちゃん、なれないお仕事で疲れているだろうに、遊びに来てくれてありがとう。
お嫁さんの年齢は、団塊ジュニアなので、たぶんゆきゆきちゃんたちと変わらない年齢だと思うんだけど、世代による考え方の違いというわけではないのだと、ゆきゆきちゃんの書き込みを読んで得心しました。
おばあちゃんの言葉、いい言葉ですね。
家族に縁の薄い節子さんが、息子さんたちの結婚をどれほど楽しみにし、赤ちゃんの誕生を心待ちにしていたことか。
強い絆を求めていたのだと思います。
それだけに、今回の一件は深い溝を作ってしまったようで、気の毒でなりません。
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一過性のものならよいのですが (CITROEN)
2007-03-14 22:27:58
アプリコットさん、こんばんは。

節子さんと息子さんの家は、クルマで30分ほどの距離です。
お嫁さんの実家へはクルマで10分。
看護士をしているお嫁さんが、こどもを産んでからも働けるようにそうしたらしいのです。
妊娠前から、炊事、洗濯、掃除といった家事全般は息子さんがしていました。息子さんのほうが、お嫁さんより収入が断然と少ないから仕方のないことなのだ、と息子さんもせっちーも納得していたようです。
お嫁さんの言い分はまったく聞いていませんから、どうしてもせっち―寄りの見方をしてしまうのですが、嘘をついたり、人を蔑んだり、悪く言ったりすることはない節子さんなので、多分、彼女の言葉がそのままお嫁さんの性格なり、行動なのでしょう。

看護士という職についているなら、なおさらのこと、そこまで過剰に反応しなくてもいいのではないか、とも思います。
「嫌」というにしても、もっと言い方があるのではないか、と思うのです。
仮にも、自分のことを娘同様に大切にしてくれたひとに対して、むける言葉としてあまりに毒がきつすぎますよね。
私には理解できません。
人の道にはずれている、とさえ思ってしまいます。

出産後の精神の不安定さや、季節的なものからきたものならよいのですが、節子さんの心の傷はそうやすやすとは癒えそうにはないです。
息子さんも、お嫁さんにそこまで言いたい放題、したい放題にさせておく、というのもどうなんだか、と思いませんか?
お母さんである節子さんに、ありのままを話すのは、節子さんに納得させるためにはそうするしかなかったのでしょうが、夫婦でほとんど会話をせずに、お母さんには包み隠さず話す、というそのあたりにもこの若い夫婦の闇の部分があるようにも思えます。
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ありえない・・・ (かお。)
2007-03-16 14:31:13
お嫁さんの事を悪く言うと節子さんも気が悪いかもしれないけど、そのひと人としてどうなんでしょうね・・・
初めての育児の疲れでイライラしてるからかもしれないけど それでももうちょっと人を思いやる気持ちを持っててもいいんじゃなかろうか。
お母さんがそんなんじゃ 赤ちゃんも不憫。
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そうよね。 (CITROEN)
2007-03-16 19:20:12
かお。さんが言うように、赤ちゃんも不憫だわ。
本来なら、おばあちゃんからの愛情をいっぱいもらえるだろうに、会うことすら許してもらえないというのではね。

初めての育児なんだけど、実家で出産経験者のお姉さんや妹さんに囲まれて、ストレスフリーで暮らしてるようなので、たぶんそういうもんじゃないような気がします。

そもそも、ノロウィルス全盛期に生牡蠣1キロを独り暮らしのせっちーに贈るような母親に育てられた娘だから、思いやりの心がないのは無理のないことなのかもしれないんですけど
ほんと、横で聞いていても腹が立つし、せっちーが可哀そうで涙がでます。
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ふーーーん (Roco)
2007-03-16 23:08:31
嫌な話だな。
想像力の欠如、ですな。それは。

かおちんも書いてるけど、
それはそのお子さんにとっても幸せなことじゃないです。

子供はおじいちゃんおばあちゃんにかわいがられ、
お母さんは義理のお父さんお母さんを大事にしている、
という状況を見て育った方が
その子も豊かに育つと思います。

その人自身も将来そういう目に合うとおもうよ~~~

実は、最近ちょっと似たような話が身近にあってさ。
憂鬱な気持ちだったんだけど・・・・・
人の善意をわざわざ悪意にとるとか、人が大事に想っているものをちっとも理解できない人って案外多いのかもね・・・・

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私もそう思った。 (CITROEN)
2007-03-17 22:32:59
Rocoさん、こんばんは。
私も
「この人に想像力ってものはないのか!」って思ったよ。
それも
「お母さんに、そう言っといて!」
と、だんなさんに言い渡したそうで。

Rocoさんのまわりにも、そんなひとがいるんだね。
善意を悪意にとる、か。
大事におもっているものを理解しないっていうのも、どっちも根本的に最初から性格が捻じ曲がってんじゃないかな。
か、よっぽど頭が悪いのか。

そりゃ私だって偉そうにいえる人間じゃないけど、そこまでの意地悪さは持ち合わせていない、とはっきり胸張って言えるよ。
頭は悪いけど(爆)
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