意欲は大事

先日会った、パン作りを教えている友だちのはなし。
田舎の方から、８０過ぎのおばあさんがパン作りを習いに来ているそうだ。
目的は自分が習得して、いま空きビルになっている自分の不動産を遊ばしておくのが無駄なので、自分で店でもやっていくらかでも現金収入を得るためなのだそうだ。
習いはじめて、もう２年以上経つらしい。
そろそろ、いろいろなパンを習得したので、売りたくてうずうずしていたある日のこと。
自分が作った野菜を売っている産直市で、一般の主婦が売っているパンを目にする。
ローカル放送の番組で紹介されたこともあり、飛ぶように売れている。
そのおばあさんの目が光る。
「これだ！」

パンを不特定多数に売るための許可と、資格をさっさと取って、取るや否や早速、その主婦のパン売り場の隣に陣取って売り始めたそうだ。
最初は、評判の主婦のパンから売れて行くのだが、そのうちそのおばあさんのパンもファンを増やして、今ではその産直市では一、二を争う売り上げになっているそうだ。
そこで、商売熱心なおばあさんは、自分が作った野菜を使ってのお弁当まで売りはじめたらしい。
８０を過ぎたおばあさんが、である。
財産はうなるほどあるけれど、まだまだ隠居などしてはいられないとばかりに毎朝３時から起きて働いているらしい。

友だちのパン教室でも一番熱心なのは、そのおばあさんだそうだ。
絶対、払った授業料の元はとってやる、とばかりに教えることの全てを吸収し、もともとの器用さも手伝って自分なりにアレンジをする芸当まで見せるのだそうだ。
友だちは、そのおばあさんのあまりの強欲さに辟易としながらも、その吸収せんとする意欲や、生命力には見習うべきものがある、と言っていた。

そうだなぁ。お金、お金という浅ましさはどうかと思うが、生きていこうとするエネルギッシュな部分は、人間として見習うべきものがあるのかもしれない。