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精神科医師のブログ。
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ワークライフバランスとゴーサンニ

2010年01月02日 | Weblog
ワークライフバランスということがさかんにいわれているようだ。
そのまんま「ワークライフバランス」というの名前の会社もある。
しかし私はこの言葉の寿命は短いのではないかと思う。
20世紀の末から21世紀の初めのみに通用した言葉として記憶されるのではないか。

そもそも仕事(ワーク)と生活(ライフ)はそもそも切り離せるものなのだろうか。
賃金を得るしごとをワークとするならそうかもしれないが、仕事は賃金を得る労働だけではない。
家にいて留守番しているだけでも立派な仕事だし、生きているだけで十分働いているともいう考えもあるだろう。

農耕民族をルーツとする日本人はそもそも職住一体となり家族で、また地域で一体となって行うような仕事が多かった。
自然を相手にする仕事はなかなか自分の思い通りに行かないことの方が多かっただろう。
振り回されながらなんとか生きてきたというのが実情ではないか。
商売などでも住み込みの丁稚奉公から入ることが多かった時代、休みは盆暮れ正月くらいであとは仕事と生活はそもそも一体であった。どれがワークでどれがライフか、またいつがオンでいつがオフの区別なんてそもそもつけられなかったのだ。

職人にしてもそうだ。
武道、華道、~道とすぐ「道」にしてしまう日本人には生き方そのものが仕事であり生活というスタイルがフィットする。

それが近代になり自宅から通勤して会社や工場などに行きそこで仕事をするようになると、オンタイムとオフタイムというのが出てきた。
賃金(サラリー)をもらって生活するサラリーマンと言う言葉がうまれた。
カイシャという村に住み、オンタイムに稼ぎ、オフタイムに消費する。
高度経済成長だの大量生産大量消費型の文明だのと誰かの吹く笛に踊らされていたともいえる。

しかしモノは行き渡り、デフレは進行中。
いまさら消費欲を刺激する新たなものもほとんどない。
情報を入手したり共有したりするコストはITの発展で下がる一方。
(ちなみにITのインフラは水道や電気ガスなどのように公共のライフラインとしてあまねく整備し無料で使えるくらいにするべきだろう。せっかく狭い国土なのだ。紙の書類を回したり、コンクリートの道路などを作るよりは安いはず・・・。閑話休題)
一様に価値観を押し付けるようなマスメディアなら、新聞や地上波のテレビはもうそろそろいいかなと思っている人も多いのではないか。
個人個人のニーズは多様化し、飽きてしまったとも言えるし、そもそも必要なかったとも言える。
(紅白のAKB48を見ながらそんなことを考えた。何人いるんだ?)

若者を中心に広がるシンプル族は物欲も持たず必要最低限のもので十分と笛吹けど踊らずという状況だ。

終身雇用も崩れ、企業福祉は縮小する一方。
会社も生活までまるまる面倒を見てくれるところは少なくなった。

一方でネットワークの発展で働き方は多様化したナレッジワーカーは再びオンタイムとオフタイムというのが曖昧になる。
それでもメリハリをつけるためにHighとLowとモードを切り替える必要はあるだろう。

そう、自分で時間をマネジメントしなければならない時代になったのである。
これは生き方を自分でマネジメントしなければならなくなると同義である。

キュアからケアへのパラダイムシフトの中で、これからは競争社会から共創社会へと大きくシフトする。
かつて私のいた佐久総合病院にはゴーサンニの法則というのがあり、どの職員も病棟5、外来3、地域での活動2の割合で仕事をせよといわれていたそうだ。
またLabor(イヤイヤやらされる仕事)からWork(自らすすんで活き活きとやる仕事)へということも盛んに言われていたようだ。

ゴーサンニの法則は、今風に言うとベッドサイドを5(それぞれの現場での実践)、ケースワークを3(その現場と社会をつなぐ)、ソーシャルワークを2(現場で得た問題意識をもとに社会を変える、創る、上位のシステムへの働きかけ。)だろう。
もちろんそれぞれは切り離せるものではないだろうが、気持ちの上でということでそういうスタンスでいることは大切だと思う。
医療臨床現場というのは社会の不条理な側面が見えすぎてしまうだけに、社会へのアプローチ(学会発表やML、事業展開なども含めて)をやることは自分の精神衛生上も、社会のためにも必要なことだ。

状況に振り回されつつも多少自分の仕事と生活をマネジメントしてソーシャルワークにも意識と力をちょっぴり向けることで、キュアからケアへのパラダイムチェンジ、(弱者や善意の人への押し付け)→((ケアする人のケア)する人のケア)・・)・・→(ケアしケアされるネットワーク)の一助となれるのではないだろうか。


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