集成・兵隊芸白兵

 平成21年開設の「兵隊芸白兵」というブログのリニューアル。
 旧ブログ同様、昔の話、兵隊の道の話を続行します!

サバキ、ふしぎ発見!(軸と移動とサバキとワタシ?その2)

2018-06-04 10:01:15 | 芦原会館修行記
 とっても長く、分かりにくい文章となった第1回ですが ゴメンナサイm(__)m 
 とかなんとか謝罪しながら、第2回も激長の文章となってしまい…大変申し訳なく思っておりますが、それでも「読んでやろう」という奇特で優しい方は、お付き合いよろしくお願いいたします。

 前回の「その1」記載内容をものすごく短くまとめますと、以下の2点になります。

【要点①】
 スポーツ等のパフォーマンスにおいて必要な「横回転運動」とは、
・1回転、あるいはそれに近い回転数の中で「タメ→加速→出力」を行うものであること
・必ず移動を伴うものであること
の2条件を満たすものである。
【要点②】
 しかし、昭和の末期ごろまでは、その「横回転運動」の機序を、おおむね
①移動する→②目的とする移動場所に停止し、ガッツリ居つく→③居ついた場所で回転運動を行ってパワーを出力する
といった、一軸回転をもってしか説明ができていなかった

 今回は、芦原会館が【要点②】の旧弊を廃し、【要点①】で掲げた「理想の横回転運動に拠る打撃」を如何にソフト化したか、という点についてお話しします。

 まず何といっても大書特筆したい「芦原カラテの軸を制する試み」は、昨今、伝統派・フルコンを問わず、凡そカラテと名の付くところでは「最新鋭の技術!」として頻繁に取り上げられている、「外に軸を作る」と形容されるパフォーマンスを、どこよりも早くソフト化したことです。

 「外に軸を作って殴る、蹴る」という動作ですが、打撃系格闘技をしておられない方の中には「?」と首を傾げる方も多いと思います。
 これを定義づけることはなかなか難しいのですが…浅学非才を承知で、あくまでもワタクシ個人による「外に軸を作って殴る」の定義づけは、以下の通りとなります。
【定義1】「軸」の位置は、自分の現在所在位置ではなく、相手を殴るのに適した距離・間合いであること。
【定義2】【定義1】に挙げた「距離・間合いを取る」ことの根拠が、相手の動きにより、無目的に何気なく呼応する性質のよるものではなく、あくまでも自己の予測・判断に基づくものであること。
【定義3】身体の移動で得たパワー(前進慣性など)をロスすることなく、正確に「殴る力」に転換できる動きであること。

 芦原カラテをやっておられる、あるいはやっておられた方は「基本の4ステップ」を当然ご存知のことと思いますが…実は、この「基本の4ステップ」と、これとタイアップしたパンチこそ、「外に軸を作って殴る」の3定義を見事に満たし、かつ、それを万人に理解できる言語と手法で広めた、おそらく格闘技界では初の試みであったのではないか、と思います。

 芦原カラテにおける「軸と横回転」を考える際、ワタクシが特に重要と位置付けたいのは①②のステップです。
(ご存じない方のためにお話ししますと、相手の右ストレート系の攻撃に対し、自分から見て左側にインステップする動きが①、相手の左ストレート系の攻撃に対し、自分から見て右側にインステップする動きが②と呼ばれるステップになります(詳しくは「実戦!芦原カラテ」の書籍などを参考にしてください))。

 ①のステップを使ったパンチのサバキ、だいたい入門すれば白帯の初期段階に習うものですが、文字に起こすとこんな感じです。
①受けが右ストレート打つ→②取りが外受けから①のステップで相手のアウトサイドに入る→③アゴ等に右ストレートを返す
 「初心の型①」の2の挙動としても知られる、一見何でもなさそうな動きですが、実は「外に軸を作る」ということと、それに関連する驚きの秘密が隠されているのです。

 上記のステップ→パンチと、その動きに対する定義の合致性について考えます。
 ①のステップは相手の動きに応じ、的確な位置に占位、反撃の一打を繰り出すというものです。
 今では「何だそんなもん、当たり前じゃないか」と思うかも知れませんが、実はサバキが創設される以前の空手の技術書を見ると、「その場で留まって受ける」「その場で留まって殴る」というものばっかりでした。これは本稿の記載に当たり、4冊ほどの当時の技術書を確認しましたので、間違いありません。
 これはおそらく、殴るときの回転と軸を、一軸の理屈でしか理解してなかったことによる悲喜劇であるとは思いますが…それにしてもヒドイ(-_-;)。

 この「ステップ→パンチ」を一体化することで生まれるメリットを書き出すと、「外に軸を作った攻撃」の定義との合致性がバッチリと見られます。以下に、その合致性と理由を列挙します。
・相手を的確に叩ける位置にステップすることで、自分が打撃を出力する際における「軸」の意識を、自分の今いる地点ではなく、相手を的確に叩ける位置に飛ばすことができる(【定義1】)。
・その場に居座って迎撃するのではなく、自分から動いてタイミングを取るため、カウンターを取りやすくなる(【定義2】)。
 サバキが「相手の動き&自己の予測に基づくカウンター」であることは先代も著書で認めているところです。
 以下、「空手に燃え空手に生きる」(芦原英幸・講談社)からの引用。
「攻めの基本はカウンター。芦原カラテの攻めはすべて動きながらのカウンターをとる。」
「自分も動きながら、動く相手をカウンターで決めるには、タイミングが重要になる。」
「たとえばクレー射撃でも、的を撃つとき、動く的めがけて撃っても当たらない。なん分の一秒か先に的がくるだろう軌道上の仮定の一点を狙って撃つ。そうして初めて命中させることができる。」
・①のステップ、ポジショニングをすることにより、自分から見て相手を「真正面」あるいは「真横」でなく(←「真正面」「真横」からの突き蹴り、特に突きは、威力がだいぶ落ちます)、一番パンチの指向性が高まる、身体の略中央で捉えることができるようになるため、前進慣性の乗った、最も威力あるパンチを打つことができる(【定義3】)。
 
 …なかなか文章ではうまく表現できませんが、このように、芦原カラテのステップ&ポジショニングによる攻撃は、相手の攻撃の先を読み、「外に軸を作った攻撃」によるカウンター攻撃を取ることができるという機序を有しています。
 今一度言いますが、何も考えず、相手の出方に応じて何気なく移動して叩く、ということを「外に軸を作る」とはいいません。
 相手の攻撃を十分予測し、主体性を以てステップ(移動)し、そのステップした先でしっかりとした軸を作り、パワーロスの無い攻撃をすることこそが「外に軸を作る」です。
 そのことを、「ステップ&ポジショニング」という分かりやすいソフト、あるいは「まずはインファイトせよ!」という単純明快な言葉で、そのソフトを「解説」するあたり、先代のすごさを感じずにはいられません。

 …実はこの「軸とサバキ」、まだまだ続きます。あと2つほどまだ語りたい「発見」があるんです…楽しみにしている人はあんまりいないと思いますが、個人のやっているブログゆえ、読みたい方はよろしくお願いいたしますm(__)m


5 コメント

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Unknown (老骨武道オヤジ)
2018-06-04 16:56:02
私ごとき凡人努力型人間が天才肌使い手の技をコメするのは恐縮ですが、空手試合の進化に伴い、どっしり構えてズバッと打つ、突きの応酬は古式の印象が強くなったようです。・・が古式の技が陳腐化された訳ではありません。相手の正中線を狙う必殺技は相手がどのような方向から攻撃してもその技を交わすと同時に仕留めることが究極の完成型であり、ブログ主の解説はその最後の瞬間に行きつくまでの駆け引きのように思いますが如何でしょうか?あまりに短いコメントで申し訳ありません、私の感覚は凡人なんで・・
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ありがとうございます! (周防平民珍山)
2018-06-05 12:24:15
 老骨武道オヤジさま、早速のコメありがとうございます!また、私の筆力が足りないため、ちょっと誤解を生じさせてしまったようですみませんです。
 
 実は私が本稿を書くきっかけとなったのは、ピンアン三段の中に隠された「外に軸を作る動き」を学んだことに端を発します。
 ピンアン三段の中には、ご指摘の「しっかり構えることで、逆に相手の攻撃を限定し、かつ誘うこと」「外に軸を作ってぶっ叩くこと」が見事に形成されており、空手究極の完成形であると感心し、また、その奥深さに感服した次第です。

 先代のサバキも、最終的には「しっかり構えて、相手を呼び込んで迎撃」という境地に至っておりましたが、いきなりそこに至るのは難しい…というより、ほぼ不可能でしょう(-_-;)。
 ワタクシも、大名人が教えてくれたからこそ、ピンアン三段にそんなスゴイ機序が含まれているとやっとわかったくらいです。
 「究極の形」に至るまでにはやはり、明確な機序・言語による合理的な練習が必要であり…そうした意味で、「外に軸を作る」練習形態をソフト化した先代の功績はすごいな、という気付きを文書化しただけでございます。

 ワタクシも空手究極の最終形態は、「ビシっと構えて相手をしっかり迎撃する」と思っております。
 本稿はその「最終形態に至るまでの道程」をどう考え、どうアプローチするかということに関するお話ですので、そのあたりは誤解のないよう、ご理解お願い申し上げますm(__)m
 
 
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Unknown (四十路メタラー)
2018-06-08 21:01:38
「初心の型1」が出てくるとは想定外の展開でした^^;
先代館長の著書の中に『ながらの空手』という説明があったことを思い出しつつ、「初心の型1」の映像を観ています。

今回の記事を拝読して思い出したのはキックボクシングのミドルキックです。
基本は「軸足をななめ45度方向↖︎↗︎に進めてから蹴る」というものなのですが、これは相手のカウンターのパンチを貰わないための対策なので、記事の趣旨とは少し違いますね…

あれこれ考えすぎてコメントが遅くなりましたm(_ _)m
過去の記事へのコメントも下書き欄に眠ったままのことがありますf^_^;
シリーズ3作目も楽しみにしております!!
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ありがとうございます! (周防平民珍山)
2018-06-10 09:54:52
 四十路メタラーさま、ありがとうございます!
 本当は「外に軸をつくる」機序を含み、これを錬成する型については、ご想像のとおり他にもたくさんありますが(;^ω^)、一番わかりやすく、解説しやすいという理由で初心の型1を取りあげました。

 軸足を斜め45度に踏み出しての蹴りは、今やキックでもフルコンでも、組手のベーシックテクニックとなっていますね…
むかし、正道会館がこれを駆使し、KOの山を築いていたころは凄かったですね(;^ω^)
 またよろしくお願い申し上げます。
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そうですね! (捌き初心者)
2018-10-09 14:57:54
はじめまして。
偶然ここを発見して拝読しました。

まさにその通りなんですね!(と、偉そうに
言いますが、理解はできても使えていないです)
外側に軸を、のくだりは我々はポールダンスを踊るなどど表現してます。

また、少し前から起きてきたムーヴメントとして「ためない、うねらない、ねじらない、等速運動で加速しない」などという古流をベースにしたいわゆる、スポーツ格闘技とは異なる考えがあります。

私も、一時期そちら側にけっこう感化されていましたが、が、ですよ。

芦原の技術を紐解いていくと、けっこうそれらに近いものが根源にあるのでは?ということに気付き始めました!

いや、むしろ古流と現代格技のハイブリットこそが芦原空手の真髄なのでは?とすら思えます。

なんだかわけ判らん文章になってしまい、申し訳ありません。

でも、仰っていることに同意です。
驚きました。
今後ともよろしくお願いいたします。
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