日本の警察には逮捕術、そして自衛隊には徒手格闘術という、お上の定めた「職場のニーズに適合する武術的なもの」があります。僭越極まることに、うちの会社にも、警察とは似て非なる「タイーフォ術」というつまらん盆踊り(あ、盆踊りに失礼でしたm(__)m)がありますが、まあ、それも仲間の末端に入れてもらうことにしましょうかねえ(-_-;)。
以下本稿ではこれらの武術を、便宜上「公務術」と呼びます。
「公務術」は各組織が、多年の研究と検証によって制定された内容の濃いもの(うちの会社のタイーフォ術は全く違いますが…orz)ですが、実はこうした「公務術」は、「公務術」という枠をつくってパッケージしてしまった瞬間、その進化は止まり、急速な勢いで腐敗・劣化が始まります。
これは組織の大小、完成時の完成度の高低を問わず、必ず発生します(大事なことなので力説!!!!!!!!!!)
また、「公務術」のみならず、世にたくさん存在する「護身術」でも、全く同じようなことが起きます。
この状況は、「ネットにつないでいないパソコン」に例えるのがわかりやすいかもしれません。
購入時においては、そのパソコンに搭載されているOSは最新。しかし時間がたつにつれ、OSが進化する。搭載されているソフトも進化する。でもネットにつないでいないから、それらが進化しても、そして自分が退化しても全くわからない。手をこまねいているうちにどんどん旧式化してくる。そうなると「オレはこのパソコンでいいんだ!普段使いに特に困っていないからアップデートなんていらないんだ!」と開き直る以外の手段がなくなる…。
こういう状況は、「試合とそのルール」をある程度確立させ、内輪の人間だけで試合の勝ち負けを楽しむ武道スポーツならそれでもいいんですが、その存在目的が実戦・護身術である場合、「ネットにつないでないパソコン状態」にすることは極めて危険なことであると言えます。「公務術」と護身術は当然、後者にカテゴライズされるものです。
幾たびか弊ブログでも取り上げましたが、「実戦」なるものは極めて多様な形態を持つものであり、「始め!」の号令もなければ、凶器の所持、人数、場所などの制限もありません。
であれば、「実戦」なるものを考えるにはまず現状における「実戦事例」のデータ収集、しかる後に有効な防止措置、それでもダメな場合の武力行使、それに関する最新の有効な措置や用具…の研究は不可欠。
それを「我が●●術は既に完成しているものだから、これ以上どうしようもない」というだけの理由で情報収集やアップデートを怠っていたとすれば、それは「傲慢」「怠慢」のレッテルを貼られても仕方ないものですし、公務術ではさらに「税金ドロボウ」という汚名も増えますが、実はその「税金ドロボウ」がことのほか多いというのが、悲しい現実です。
以前ご紹介した「自衛隊最強の部隊へ CQB・ガンハンドリング編」(二見龍 誠文堂新光社)において、二見元連隊長はこのような発言をしていました。ちょっと長くなりますが引用します。
「(当時の自衛隊では、左へのスイッチショルダー射撃や、ドットサイト〔光学照準器〕を使用した射撃などの)存在は知っていて、実際に試してみるとものすごい効果があることもわかっていました。それでも『俺たちはそういう世界じゃなく、違う世界でやっているからいいんだ』という考え方が支配していたんですね。『今の訓練でおかしいところはないし、問題はない』と平気な顔で言い切ってしまうことに、実は私もとても違和感を持っていました。」
当時の自衛隊における「射撃」とは、教範に載っている射撃姿勢で、じっくり狙ってパンと撃ち、的の中の得点が高い場所に穴を開けることだけが至上の目的であり、CQB(クローズド・クォーター・バトル。近接戦闘)や、そこで必要な戦術的射撃や照準具なんていらない!自衛隊は教範に載っていることだけやってればいいんだ!という姿勢を貫き続けた結果、「アップロードを忘れた公務術」になってしまっていた、と二見元連隊長は回想しています。
ここに挙げた「自衛隊射撃」も一つの例ですが、「これはこういうものだ」と一旦固めてしまった「護身術」「公務術」は、変なプライドや、その技術や組織にもたれかかっていい思いをしている人間の抵抗などもあり、なかなか改変が難しいものです。
しかし、「護身術」も「公務術」も、その設立目的は「ルール無用の悪党を倒す」ですから、その目的が「それに持たれているバカ人間の地位や名誉を守」に堕してしまい、カンバンを守ることだけに汲々とすれば、劣化と滅亡以外の末路が考えられません。
そういえば昨今、警官が暴漢に襲われて拳銃を奪取されたり、大勢で取り囲みながら犯人に逃亡を許すといった事案が続発していますが、これは今回お話しした「アップロードを忘れた公務術」の跋扈と、決して無縁なことではないと思います。
目的に応じ、技術をある程度のところでパッキングするのは大切なのですが、そのパッキングには必ず空気穴を設けることが肝要であり、完全密封は劣化しか呼ばない、というお話でした。
以下本稿ではこれらの武術を、便宜上「公務術」と呼びます。
「公務術」は各組織が、多年の研究と検証によって制定された内容の濃いもの(うちの会社のタイーフォ術は全く違いますが…orz)ですが、実はこうした「公務術」は、「公務術」という枠をつくってパッケージしてしまった瞬間、その進化は止まり、急速な勢いで腐敗・劣化が始まります。
これは組織の大小、完成時の完成度の高低を問わず、必ず発生します(大事なことなので力説!!!!!!!!!!)
また、「公務術」のみならず、世にたくさん存在する「護身術」でも、全く同じようなことが起きます。
この状況は、「ネットにつないでいないパソコン」に例えるのがわかりやすいかもしれません。
購入時においては、そのパソコンに搭載されているOSは最新。しかし時間がたつにつれ、OSが進化する。搭載されているソフトも進化する。でもネットにつないでいないから、それらが進化しても、そして自分が退化しても全くわからない。手をこまねいているうちにどんどん旧式化してくる。そうなると「オレはこのパソコンでいいんだ!普段使いに特に困っていないからアップデートなんていらないんだ!」と開き直る以外の手段がなくなる…。
こういう状況は、「試合とそのルール」をある程度確立させ、内輪の人間だけで試合の勝ち負けを楽しむ武道スポーツならそれでもいいんですが、その存在目的が実戦・護身術である場合、「ネットにつないでないパソコン状態」にすることは極めて危険なことであると言えます。「公務術」と護身術は当然、後者にカテゴライズされるものです。
幾たびか弊ブログでも取り上げましたが、「実戦」なるものは極めて多様な形態を持つものであり、「始め!」の号令もなければ、凶器の所持、人数、場所などの制限もありません。
であれば、「実戦」なるものを考えるにはまず現状における「実戦事例」のデータ収集、しかる後に有効な防止措置、それでもダメな場合の武力行使、それに関する最新の有効な措置や用具…の研究は不可欠。
それを「我が●●術は既に完成しているものだから、これ以上どうしようもない」というだけの理由で情報収集やアップデートを怠っていたとすれば、それは「傲慢」「怠慢」のレッテルを貼られても仕方ないものですし、公務術ではさらに「税金ドロボウ」という汚名も増えますが、実はその「税金ドロボウ」がことのほか多いというのが、悲しい現実です。
以前ご紹介した「自衛隊最強の部隊へ CQB・ガンハンドリング編」(二見龍 誠文堂新光社)において、二見元連隊長はこのような発言をしていました。ちょっと長くなりますが引用します。
「(当時の自衛隊では、左へのスイッチショルダー射撃や、ドットサイト〔光学照準器〕を使用した射撃などの)存在は知っていて、実際に試してみるとものすごい効果があることもわかっていました。それでも『俺たちはそういう世界じゃなく、違う世界でやっているからいいんだ』という考え方が支配していたんですね。『今の訓練でおかしいところはないし、問題はない』と平気な顔で言い切ってしまうことに、実は私もとても違和感を持っていました。」
当時の自衛隊における「射撃」とは、教範に載っている射撃姿勢で、じっくり狙ってパンと撃ち、的の中の得点が高い場所に穴を開けることだけが至上の目的であり、CQB(クローズド・クォーター・バトル。近接戦闘)や、そこで必要な戦術的射撃や照準具なんていらない!自衛隊は教範に載っていることだけやってればいいんだ!という姿勢を貫き続けた結果、「アップロードを忘れた公務術」になってしまっていた、と二見元連隊長は回想しています。
ここに挙げた「自衛隊射撃」も一つの例ですが、「これはこういうものだ」と一旦固めてしまった「護身術」「公務術」は、変なプライドや、その技術や組織にもたれかかっていい思いをしている人間の抵抗などもあり、なかなか改変が難しいものです。
しかし、「護身術」も「公務術」も、その設立目的は「ルール無用の悪党を倒す」ですから、その目的が「それに持たれているバカ人間の地位や名誉を守」に堕してしまい、カンバンを守ることだけに汲々とすれば、劣化と滅亡以外の末路が考えられません。
そういえば昨今、警官が暴漢に襲われて拳銃を奪取されたり、大勢で取り囲みながら犯人に逃亡を許すといった事案が続発していますが、これは今回お話しした「アップロードを忘れた公務術」の跋扈と、決して無縁なことではないと思います。
目的に応じ、技術をある程度のところでパッキングするのは大切なのですが、そのパッキングには必ず空気穴を設けることが肝要であり、完全密封は劣化しか呼ばない、というお話でした。
「実戦と武道の兼ね合い」については、次稿で所信を申し述べたいと考えておりますので、よろしかったらお読みくださいませ。