こうして緊張した日々が続く間にも、飛行場では硫黄島、トラック、パラオ諸島をむすぶ零戦、偵察機、艦爆などの離着陸がさらに激しくなり、一方タナバク水上基地においても、二式や97大艇の動きがしだいに活発となっていった。
士官室の私(父井手次郎の手記を基にしているので、以下「私」の記載は父井手次郎を指す。)達も極秘電報の回覧によって、ニューギニア方面ビアク島の米上陸軍の攻勢が、いよいよ激しくなった事を知らされ、南太平洋方面の戦況も日ごとに重大な局面に達し、かつ一大洋上航空戦が近づいているのが肌に感じ取られた。
6月5日ごろであったろうか、長距離偵察機彩雲が、マーシャル群島のメジュロ環礁附近に、米空母十数隻を中心とする機動部隊および艦艇多数が集結中、と言う報告をもたらせた。
すでに医務隊としても、空襲や艦砲射撃、さらに最悪の事態というべき米軍の上陸に備えて、アスリート飛行場より北方一キロの丘陵地に、戦時治療所として防空壕を準備していた。
防空壕は高さ2メートル、幅3メートル、奥行約20メートルという壮大なもので、さらに壕入り口からの爆風を避けるため、横に走る8メートルのトンネル3本掘られていて、それぞれ患者収容室、手術室、薬品・医療材料保管室、患者および医務隊員用の食糧・飲料水保存室などに区分されていた。
内部の照明用として、ガソリン発電機が壕の外に用意されており、そこから壕内に配線されていた。
徳川おてんば姫(東京キララ社)
士官室の私(父井手次郎の手記を基にしているので、以下「私」の記載は父井手次郎を指す。)達も極秘電報の回覧によって、ニューギニア方面ビアク島の米上陸軍の攻勢が、いよいよ激しくなった事を知らされ、南太平洋方面の戦況も日ごとに重大な局面に達し、かつ一大洋上航空戦が近づいているのが肌に感じ取られた。
6月5日ごろであったろうか、長距離偵察機彩雲が、マーシャル群島のメジュロ環礁附近に、米空母十数隻を中心とする機動部隊および艦艇多数が集結中、と言う報告をもたらせた。
すでに医務隊としても、空襲や艦砲射撃、さらに最悪の事態というべき米軍の上陸に備えて、アスリート飛行場より北方一キロの丘陵地に、戦時治療所として防空壕を準備していた。
防空壕は高さ2メートル、幅3メートル、奥行約20メートルという壮大なもので、さらに壕入り口からの爆風を避けるため、横に走る8メートルのトンネル3本掘られていて、それぞれ患者収容室、手術室、薬品・医療材料保管室、患者および医務隊員用の食糧・飲料水保存室などに区分されていた。
内部の照明用として、ガソリン発電機が壕の外に用意されており、そこから壕内に配線されていた。
徳川おてんば姫(東京キララ社)