午前11時、いよいよ空襲警報が発令された。
軍医長と北川中尉と私(父井手次郎の手記を基にしているので、以下「私」の記載は父井手次郎を指す。)の3人は、壕の近くの丘の上に登ってみた。
南と東方向の水平線上空を目を凝らして見つめるが、敵機らしきものは見当たらない。
約一時間が過ぎた正午ごろ、遥か東の方向からかすかに、何とも表現し難いウォンウォンという、ひくい共鳴音のような爆音が聞こえてきた。
さらに目を凝らすと、遥か東の水平線の上空にウンカのごとき三つの黒点の集団が、しだいにこちらに近づいてくる。
まさしく、敵艦上機の大編隊であった。
一編隊約50機、高度3~4000メートルで接近して来る。
そして15分後にはサイパン島上空に達していた。
すでに陸軍の高射砲陣地からは、対空砲火が猛烈に撃ち上げられ、上空の敵編隊の付近で炸裂し、黒い多数の弾幕が点状にひろがっている。
しかしながら敵機は、20分以上も編隊を崩さず、ゆうゆうと上空を旋回していた。
私達はいそぎ戦時治療所にあてられた防空壕入口にもどり、さらに上空を眺めていると突然、グラマンF6F戦闘機が編隊をといたかと思うと、一列になって急降下態勢をとってアスリート飛行場、ガラパン市街、タナバク水上基地地区に対して猛烈なる機銃掃射を加えてきた。
徳川おてんば姫(東京キララ社)
軍医長と北川中尉と私(父井手次郎の手記を基にしているので、以下「私」の記載は父井手次郎を指す。)の3人は、壕の近くの丘の上に登ってみた。
南と東方向の水平線上空を目を凝らして見つめるが、敵機らしきものは見当たらない。
約一時間が過ぎた正午ごろ、遥か東の方向からかすかに、何とも表現し難いウォンウォンという、ひくい共鳴音のような爆音が聞こえてきた。
さらに目を凝らすと、遥か東の水平線の上空にウンカのごとき三つの黒点の集団が、しだいにこちらに近づいてくる。
まさしく、敵艦上機の大編隊であった。
一編隊約50機、高度3~4000メートルで接近して来る。
そして15分後にはサイパン島上空に達していた。
すでに陸軍の高射砲陣地からは、対空砲火が猛烈に撃ち上げられ、上空の敵編隊の付近で炸裂し、黒い多数の弾幕が点状にひろがっている。
しかしながら敵機は、20分以上も編隊を崩さず、ゆうゆうと上空を旋回していた。
私達はいそぎ戦時治療所にあてられた防空壕入口にもどり、さらに上空を眺めていると突然、グラマンF6F戦闘機が編隊をといたかと思うと、一列になって急降下態勢をとってアスリート飛行場、ガラパン市街、タナバク水上基地地区に対して猛烈なる機銃掃射を加えてきた。
徳川おてんば姫(東京キララ社)