徳川慶喜log~徳川と宮家と私~

徳川慶喜家に生まれた母久美子の生涯、そして私の人生。

父・井手次郎~精強261空”虎部隊”サイパンに死すとも⑧・巨弾降る1~

2019-08-09 05:00:00 | 日記
翌12日の午前4時、まだ明けやらぬ空に赤色信号弾が撃ち上げられ、空襲警報が発令された。
こうして、再び敵艦船上機による空襲が始まったのである。
例のごとく壕の入り口で、岡本軍医長と共に上空を見ていると、昨日よりさらに数が多い。
あかつきの空に地上からの対空砲、機銃の曳光弾が火の矢のように敵機に向かって撃ち上げられる。

昨日と同じく、敵は紫白色の曳光機銃弾を射撃しながら、アスリート飛行場、水上基地および陸海軍の陣地付近に対して、凄まじい爆撃を加えてきた。
午前中はほとんど間隔をおかず、十数波に及ぶ連続的な来襲であった。
水上基地、ガラパン市街付近は昨日にもまして、物凄い黒煙を宙に噴き上げている。

はるかナフタン岬の沖合で、20数機の敵、味方戦闘機の空中戦が望見されたが、零戦一機に対してグラマン2~3機が追尾する格闘戦で、最後にはわが零戦が炎に包まれて黒煙を引いて海上に落ちていく。
おそらくグアム、ペリリュー、硫黄島から発進した味方の戦闘機隊であったろうと考えられた。

徳川おてんば姫(東京キララ社)