tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

鉄道沿線歩き~相鉄本線

2013-05-03 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
10:00の開館を目指して横浜のそごう美術館を訪ねた。「山口晃展 付り澱エンナーレ」を見る。好きだなあ。この精密さ。ビデオのリモコンを宇宙船に見立てた絵や、電柱にいろいろな機能や空間がくっついている絵など。児戯のようでありながら完成度が高いので、美しい代物に仕上がっている。本の挿絵として描かれた小さな絵も、綺麗であり可愛らしくありながらも不可解さを纏っているので、独特の世界観を醸し出していて、見ていて飽きない。美術館でポストカードを買ったことはこれまでなかったけど、今日は買いたくなってしまった。その1枚。

11:23 相模鉄道、横浜駅改札口。ここから海老名までの24.6kmの沿線を歩こうと思う。先日の大江戸線環状部の沿線歩きは、車通りの多い幹線道路ばかり、無機質なビルばかりの景観でいまひとつだった。横浜から郊外に伸びるこの沿線の風景の方が、僕好みかも知れない。土地勘も全くないので新鮮味もある。

横浜駅を出発する電車。手前は帷子川。川というより海の入り江のようにも見える。事実、風に乗って海のような匂いがしてくる。

11:52 平沼橋駅(横浜駅から0.9km。以下、数値は横浜駅からの路線距離)。先ほどの撮影ポイント、帷子川の護岸からもすでに見えていた駅。電車の撮影にこだわって待っていたりしたので、距離のわりに時間を食ってしまったが。隣の線路は東海道線・横須賀線。横浜駅を出てからずっと、この先の内陸部の地域まで、「ここは海抜○m」の表記を多く見かけた。津波が帷子川を遡上してくるようなことが想定されているのだろうか、と思う。

12:10 西横浜駅(1.8km)。留置線がある。ここから相鉄線は右にカーブし、東海道線・横須賀線と分かれる。

今いる陸橋の真下には、砂利を積んだ作業車が見える。目を上げれば、遠方に小高い丘が見え、起伏のある地形が横浜らしいなと思う。

12:22 天王町駅(2.4km)。交差する道路は旧東海道。

改札口は少し時代がかった高架下にあった。

相鉄線は帷子川に沿って走る。団地の屋上から対岸までロープが掛かり、鯉のぼりが泳いでいる。

快晴、風穏やか。今日の泳ぎっぷりは気持ち良さそうだ。

12:45 星川駅(3.3km)。駅を含む一帯の高架化事業が進められている。

13:01 和田町駅(4.3km)。先ほどの星川駅の駅ビルにマクドナルドがあり、昼食を取ろうか迷ってやめておいたものの(僕はついついマクドナルドばかり入りがちなのだ)、この駅の駅前にもマクドナルドがあり、結局入ってしまう。ビッグマックセットに抹茶フルーリーをつけて。ところでフルーリー(flurry)って何よ?辞書を引くと、「突風・疾風/突然の混乱・いっせいに起こる動き」などとある。要するに、ソフトクリームにオレオを砕いて入れてうわっと掻き混ぜたさまを指しているのかしら。踏切が(つまりは電車の通過が)よく見える窓際の席で食べる。ビッグマックって最近立て続けに食べたのでよくわかったけど、食べづらいよね。食べている最中に中身がはみ出て落っこって。紙で包まれるのではなく箱に入れられて出されるので、むき出しで掴むほかないのだ。

国道16号線に出る。後方、海の方角だろうか、地上からもくもくと雲が湧き上がっている。

丘陵地の斜面に段々になって建てられたマンション。子どもの頃、より広いマイホームを画策した両親に連れられて、多摩ニュータウンにこういう物件を見に行ったことがあったな。「メゾネット」という言葉もその時覚えた。マンションなのに室内に階段があって楽しいつくりだなと思ったけど、部屋の一方が地面の傾斜に接して壁で塞がっているため薄暗くもあり、それが多分ネックとなって申込みには至らなかったように思う。でもそれ以来、こういう構造のマンションがどこか気になる。各階へはエスカレーターで上がるんだろうか?

13:43 上星川駅(5.0km)。国道16号が線路に沿っているのでそこをずっと歩いている。幹線道路を歩くのは気乗りがしないので、早足で過ぎている。

14:06 西谷駅(6.9km)。上を東海道新幹線が通っている。

この駅には新線がつながる。線路の直下にそのホームができるという。工事が行われている。

この駅から出た新線は、横浜羽沢でJR東海道貨物線と、そこからさらに新横浜を経て日吉で東急とつながり、それぞれと直通運転を行うという。東京の地下鉄も一通りできあがった今、関東では「東北縦貫線」と並ぶ最大の新規鉄道プロジェクトかも知れない。平成31年までの完成予定。

今は急行も快速も停まらない駅だけど、6年後は一大拠点へと変貌を遂げているんだろうね。画像の電車には、「円谷プロダクション創立50周年」と、ウルトラマンの広告が付いている。ゴールデンウィーク期間中、相鉄ではウルトラマンのスタンプラリーを実施しているらしい。

国道16号を離れ、帷子川が支流と交わる堰を渡ると、緑の濃い散策路に出た。

木立ちの中でウグイスが可愛い声で鳴いているな…と思ったら、なんとカワセミまでいるではないか!地元の方々、ここの緑はぜひ大切にしてください。

14:38 鶴ヶ峰駅(8.5km)。駅前にはランドマーク然としたタワーマンションがある。…先ほどの自然の光景はまるで夢うつつのようだった。

今日撮った電車の写真で一番良く撮れたと思える1枚。

15:08 二俣川駅(10.5km)。いずみ野線と分かれる、まさに「二又」の駅。

本線といずみ野線の分岐点。いずみ野線は本線の上下線の間から高架に上っていく。

自販機でペットボトルのミルクコーヒーを買い、日吉神社の階段で休む。本線と離れていくいずみ野線の高架線が見える。

午後の強い陽射しを浴びて気づく。今日のコースはずっと西向き、このままだと、傾いてくる太陽を真正面にして歩くことになる。目も肌も紫外線でやられそうだ。持っていた「山口晃展」のパンフレットを額に翳しながら歩くが、いつまでもそのポーズではいられない。希望ヶ丘の商店街に入り、100円ショップでキャップを物色。キャップをかぶると変質者っぽくなってしまうので嫌なんだけど、そうも言っていられない。その場しのぎのものさえあればいいと思っていたが、100円とは思えないしっかりとした作りのキャップが買えた。100円ショップは侮れない。希望ヶ丘に希望はあった。

15:57 希望ヶ丘駅(12.2km)。全24.6kmのおよそ半分。

16:17 三ツ境駅(13.6km)を望む切り通し上の陸橋から。

16:54 瀬谷駅(15.5km)。歩くのが漫然としてきた。時折ランニングも入れてみる。帽子は日除けに活躍している。

横浜と大和の市境、その名も「境川」を渡る。

10歳まで神奈川県に住んでいた。幼稚園の先生(確か「大塚先生」だった)はこの「大和市深見台」に住んでいた。うちに先生から年賀状か退職の挨拶かのハガキが届き、そこに記されていた住所をなぜか覚えているのだ。幼稚園か小学生の時にもらったハガキの住所をなぜ覚えているのか。当時、漢字だって読めたのか。今、この「深見台」の住所表示を見てなぜそれを思い出せたのか。先生との思い出は特にあるわけでもないのに。記憶の不思議。

相鉄線は大和駅の前後1kmを地下に潜る。地上の線路跡地を行く。

17:17 大和駅(17.4km)。高架の小田急江ノ島線とクロスする。この場所の「なでしこ広場」ってネーミング、「やまと」だからか。おいおい…。

線路を離れて窪地に下り、再び登ると、正面の空が抜け、厚木基地が現れた。基地の北端を横切るこの道路上には、自衛隊機・米軍機の離着陸を狙っているのか、カメラマンが何人かいた。

17:39 相模大塚駅(19.3km)

駅に隣接して車両基地があるが、空っぽだった。

線路沿いに歩いていると、踏切の向こうにもうひとつ踏切が見え、何だろうかと来てみた。廃線のようで、線路には草が生い茂り、ゴミも投棄されている。地図を見てみると、厚木基地へ続くようだ。

本線と廃線の分岐点上にある踏切。西日を背にして自分の影も長く伸びている。

18:02 さがみ野駅(20.5km)。駅近くの居酒屋の前を通ると焼き鳥の匂いがしてきて、もう夕餉、晩酌の時間なんだと思う。それなのに、縁もゆかりもない土地を無闇に歩いている自分、のことを少し思う。

18:16 かしわ台駅(21.8㎞)。テキトーな名前の駅なので、無機質なニュータウンの中にある面白みのない駅かと思いきや、一風変わっている。この踏切の手前側に「東口」があるものの、改札口からホームまではなぜか線路沿いに300mほど離れている。その長い通路を撮っておけばいいものを、撮り損ねた。疲れが回ってきているな。

下り坂の向こうに、夕陽が沈む丹沢の山々が。

下ったと思ったらまた登る。登ってきた道のりを振り返る。

登ったところに車両基地がある。車両はただ留め置かれているのではなく、電気が通じてモーターが唸りを上げている。今いるこの陸橋にかしわ台駅の「西口」がある。東口から西口に来るだけで10数分かかった。

車両基地沿いを歩く。昔の車両が置かれている。

もう1つ。

僕の歩く道はどんどん下っているが、車両基地は水平を保っている。ついには高架橋が飛び出す。そこへ電車が入ってきて、すぐに折り返す。

さて、最後のかしわ台―海老名間こそが、相鉄線最長の駅間距離で、2.8kmもある。暗くなってきたし、もう道には迷いたくない。そもそもこの辺りは起伏の変化も激しく、道に迷うとダメージが大きい。だから、地図看板を周到に読み込んで、間違いのないルートを探る。この「子育地蔵」も目標としていた通過ポイントの一つ。

厚木へと伸びる貨物線が右に分岐する。小田急小田原線も右から近づいてくる。

19:08 海老名駅。駅前のぺデストリアンデッキの人の通行量はかなり多かった。小田急線、JR相模線との乗換駅。歩いた距離は29km。途中、幾度か走った。散漫な視界の変化には「早送り」を入れたくなったのだ。「俺、いったい何してるんだろう?」という白け気分を吹き飛ばすためでもある。

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