昨年は春の同じこの時期までに、茨城の散歩、群馬の旅、静岡の旅をこなしていた。それに比べると、今年は動きが鈍い。旅も散歩も“昨年比2割増”くらいでやりたいものだ。
12:00 西武池袋線・東久留米駅西口に下り立つ。駅舎の屋根の上は「富士見テラス」と名付けられていたが、そこから富士山は見えなかった。しかし天気は良い。この季節に吹きがちな強い風もなく、穏やか。ここを起点に「東久留米七福神」をめぐろうと思う。
まだ何も植えつけられておらず、土がむき出しになった畑がある。菜の花の畝がある。その向こうを菜の花と同じ色の西武線が行く。あたり一帯にコーヒーの香りが漂っているなと思ったら、そばにコーヒー豆の挽き売りの店があった。
川を渡る。黒目川。黒目≒久留米で、東久留米の市名の語源だそう。
12:14 大圓寺(恵比寿・福禄寿・寿老人)。この寺に七福神の3つの神様がまとまっているため、今日回る寺は全部で5ヶ寺ということになる。
山門の中には七福神すべてが安置されている。つまり、これから歩き回らなくても、ここだけで七福神めぐりができてしまうというわけ。
その山門を振り返る。様々な花木が彩りを添えている。山門の脇には、無縁墓だろうか、墓石がびっしり集められていて、塚をなしていた。
再び黒目川に出る。沿って歩く。
水が綺麗なのだ。鯉がいる。川底までくっきり見通せる。
落馬橋(「おちうまばし」でも「らくばばし」でもなく、「おちばばし」。「湯桶読み」って言うのかな、音訓ばらばらでしっくりこない)で左折、黒目川を離れ、高校(東久留米総合高校)の脇を通る。体育館の外でトレーニングウェア姿の女子たちが弁当を食べている。楽しそうな食事だな。この高校の制服は真っ黒なブレザーで、見た目がとても重苦しく、この季節には合わない。
ゴミ回収ボックス。東京の市部ではよく見かける。住民同士でどのような合意を取りつけたのか、アパートなどの共同住宅ではない戸建て住宅でも、敷地の一部が切欠きされて、これを置くスペースがきちんと確保されている。
12:40 本堂より先にまずこの巨木が目を奪う。米津寺(布袋尊)。
広い境内には誰もおらず静か。
畑と住宅が混在する、典型的な郊外の風景の中を行く。
民家の庭の桜を塀越しに望む。ソメイヨシノでなければ、今が見頃という桜はまだまだある。
13:03 多聞寺(毘沙門天)。「七福神めぐり」というと、山里や路地裏の小さなお堂・お社ばかりだったりすることもあるのだが(それはそれで味があるのだが)、今日めぐっている寺は、どれもとても規模が大きい。檀信徒向けの大きな会館も併設されていたりする。この後訪ねた寺も含め、5ヶ寺すべてが立派な構えだった。
本堂の正面、参道の竹の使い方が洒落ている。
再び川にぶつかる。今度は落合川。都内で唯一、環境省の「平成の名水百選」に選ばれたそうで、こちらの水も綺麗。
水際が近いのだ。子どもたちが水の中に入って遊んでいる。これが大事だと思う。コンクリート護岸にして、柵を張りめぐらして囲って、水面を遠ざければ遠ざけるほど、その川への愛着はなくなり、汚すことに抵抗がなくなるのではないか。「親水」とはよく言ったもので、水への距離が縮まって親しみが増すほど、その川を大切にしようという思いも強くなるのではないか。
13:27 落合川から少し離れ、竹林公園。武蔵野の面影を残すために、1974年に公園として整備したそう。3600㎡というから、だいたい60m四方ということか。竹林の脇からは水が湧き出ていた。ここから生まれた流れも、家々の裏を通って、落合川に注ぐ。
再び落合川沿いを行く。西武池袋線をくぐる。この交差ポイントは、後で線路沿いに歩いた時にもう一度通った。
落合川にも鯉の群れがいる。鴨も水中に首を突っ込んで水底をつついている。お尻を水面に突き出した姿が可愛い。
流れにそよぐ水草の緑色も鮮やか。
不動明王が祀られた祠がたもとにある不動橋で落合川を離れる。
13:57 浄牧院(大黒天)。この寺の境内も広々としている。樹齢400年という大ケヤキもある。大黒天は本堂ではなく寺務所に安置されているようなのだが、民家のようなサッシ戸を開くのがためらわれて、拝まずに済ませてしまった。
広場の遊具がどこか懐かしい感じのする団地の中を行く。
14:14 最後の寺、宝泉寺(弁財天)。毎朝6時に勤行を行っていると貼紙がしてあった。きちんとした宗教家のいる寺なんだな。
また黒目川沿いを行く。流れの中に鷺が立っている。ズバリ、今日の七福神めぐりの裏テーマは「都内ではなかなか得難い、清らかな流れに親しむ散歩」である。
14:34 なぜかオペラ調の「桃太郎」がスピーカーから流れている商店街を抜け、東久留米駅東口に戻る。歩いたのはここまででおよそ9km。駅前の日高屋のショーケースを見ていたら、無性に中華そばが食べたくなり、動けなくなった。ラーメンを食べたくなることなど滅多にないのに。390円と安いし、夕食を脅かすほどのボリュームでもないので、食べていくことにする。
ラーメンも食べたし、もう少し歩こうと思う。線路沿いを行く。この背後にはインターナショナルスクールがあり、外国人の生徒がバスケットボールに興じている。
瓦屋根の家々が建ち並ぶ落ち着いた住宅街を行く。どこか昭和末期の懐かしい感じもする。都下の住宅は、23区の住宅と違い、建ぺい率が低めで、ゆったり建っている。あの、壁同士がくっついた息苦しさがない。
15:23 ひばりヶ丘駅。ままごとのようなネーミングだけど、使われ出してから年数が経つと、これでしっくりきてしまうのだから不思議だ。
車が来ない路地裏の暗渠を行く。人間サイズの横幅が落ち着く。地面を緑一色に塗りたくるのはどうかと思うけど。
電車を撮ってくれと言わんばかりの視界の開けたカーブにある踏切。ちょうど特急電車が来た。
16:02 保谷駅の車両基地。歩道橋で越える。
保谷からは東に向かう西武池袋線を離れ、南に進路を取る。「いなげや」でペットボトルのミルクコーヒーを買う。レジ袋を断ると2円引きになる。消費増税分を取り戻した気になる。道沿いにはいい面構えの銭湯が。
西武池袋線を離れたのは、練馬区石神井台にある巨大園芸店「オザキフラワーパーク」に立ち寄りたかったから。しかし、事前の自宅での地図の確認が甘く、あてずっぽうに歩いていたら、どうも辿り着く気配がない。ガソリンスタンドのお兄さんに尋ねると、まったく違う方向であることが判明する。簡単に道案内してもらえるような距離でもないので、「あっちの方」というだいたいの方角だけ聞いて、そちらに向かう。自然と早足になる。そうしてようやく店に着き、いろいろ見て回るが、さすがに歩き疲れたのと、大きい・重い商品は特に、持ち帰りに難があるので、あまり深く品定めはできなかった。
17:30 店を出て、石神井川沿いを歩く。八重の桜が咲いている。日が傾いてきた。「夕焼け小焼け」のチャイムが鳴る。
ドサまわりの歌手がこれで地方を巡業するんだろうか。住宅街の駐車場に停められた大型バス。旅芸人の暮らしに少しだけ思いを馳せる。この車のナンバーが、意外な地方のものだったが、どこだったか忘れてしまった。
17:44 西武新宿線・上井草駅が見えてきた。そこでゴールとする。今日歩いたのは全部でおよそ20km。
※今回の七福神歩きで参考にした本は『東京ありがた七福神めぐり』。地図がとてもわかりやすく、道々の様々なポイントの写真も載っていて、「歩いて巡る」ことについてよく考えられて作られている。
12:00 西武池袋線・東久留米駅西口に下り立つ。駅舎の屋根の上は「富士見テラス」と名付けられていたが、そこから富士山は見えなかった。しかし天気は良い。この季節に吹きがちな強い風もなく、穏やか。ここを起点に「東久留米七福神」をめぐろうと思う。
まだ何も植えつけられておらず、土がむき出しになった畑がある。菜の花の畝がある。その向こうを菜の花と同じ色の西武線が行く。あたり一帯にコーヒーの香りが漂っているなと思ったら、そばにコーヒー豆の挽き売りの店があった。
川を渡る。黒目川。黒目≒久留米で、東久留米の市名の語源だそう。
12:14 大圓寺(恵比寿・福禄寿・寿老人)。この寺に七福神の3つの神様がまとまっているため、今日回る寺は全部で5ヶ寺ということになる。
山門の中には七福神すべてが安置されている。つまり、これから歩き回らなくても、ここだけで七福神めぐりができてしまうというわけ。
その山門を振り返る。様々な花木が彩りを添えている。山門の脇には、無縁墓だろうか、墓石がびっしり集められていて、塚をなしていた。
再び黒目川に出る。沿って歩く。
水が綺麗なのだ。鯉がいる。川底までくっきり見通せる。
落馬橋(「おちうまばし」でも「らくばばし」でもなく、「おちばばし」。「湯桶読み」って言うのかな、音訓ばらばらでしっくりこない)で左折、黒目川を離れ、高校(東久留米総合高校)の脇を通る。体育館の外でトレーニングウェア姿の女子たちが弁当を食べている。楽しそうな食事だな。この高校の制服は真っ黒なブレザーで、見た目がとても重苦しく、この季節には合わない。
ゴミ回収ボックス。東京の市部ではよく見かける。住民同士でどのような合意を取りつけたのか、アパートなどの共同住宅ではない戸建て住宅でも、敷地の一部が切欠きされて、これを置くスペースがきちんと確保されている。
12:40 本堂より先にまずこの巨木が目を奪う。米津寺(布袋尊)。
広い境内には誰もおらず静か。
畑と住宅が混在する、典型的な郊外の風景の中を行く。
民家の庭の桜を塀越しに望む。ソメイヨシノでなければ、今が見頃という桜はまだまだある。
13:03 多聞寺(毘沙門天)。「七福神めぐり」というと、山里や路地裏の小さなお堂・お社ばかりだったりすることもあるのだが(それはそれで味があるのだが)、今日めぐっている寺は、どれもとても規模が大きい。檀信徒向けの大きな会館も併設されていたりする。この後訪ねた寺も含め、5ヶ寺すべてが立派な構えだった。
本堂の正面、参道の竹の使い方が洒落ている。
再び川にぶつかる。今度は落合川。都内で唯一、環境省の「平成の名水百選」に選ばれたそうで、こちらの水も綺麗。
水際が近いのだ。子どもたちが水の中に入って遊んでいる。これが大事だと思う。コンクリート護岸にして、柵を張りめぐらして囲って、水面を遠ざければ遠ざけるほど、その川への愛着はなくなり、汚すことに抵抗がなくなるのではないか。「親水」とはよく言ったもので、水への距離が縮まって親しみが増すほど、その川を大切にしようという思いも強くなるのではないか。
13:27 落合川から少し離れ、竹林公園。武蔵野の面影を残すために、1974年に公園として整備したそう。3600㎡というから、だいたい60m四方ということか。竹林の脇からは水が湧き出ていた。ここから生まれた流れも、家々の裏を通って、落合川に注ぐ。
再び落合川沿いを行く。西武池袋線をくぐる。この交差ポイントは、後で線路沿いに歩いた時にもう一度通った。
落合川にも鯉の群れがいる。鴨も水中に首を突っ込んで水底をつついている。お尻を水面に突き出した姿が可愛い。
流れにそよぐ水草の緑色も鮮やか。
不動明王が祀られた祠がたもとにある不動橋で落合川を離れる。
13:57 浄牧院(大黒天)。この寺の境内も広々としている。樹齢400年という大ケヤキもある。大黒天は本堂ではなく寺務所に安置されているようなのだが、民家のようなサッシ戸を開くのがためらわれて、拝まずに済ませてしまった。
広場の遊具がどこか懐かしい感じのする団地の中を行く。
14:14 最後の寺、宝泉寺(弁財天)。毎朝6時に勤行を行っていると貼紙がしてあった。きちんとした宗教家のいる寺なんだな。
また黒目川沿いを行く。流れの中に鷺が立っている。ズバリ、今日の七福神めぐりの裏テーマは「都内ではなかなか得難い、清らかな流れに親しむ散歩」である。
14:34 なぜかオペラ調の「桃太郎」がスピーカーから流れている商店街を抜け、東久留米駅東口に戻る。歩いたのはここまででおよそ9km。駅前の日高屋のショーケースを見ていたら、無性に中華そばが食べたくなり、動けなくなった。ラーメンを食べたくなることなど滅多にないのに。390円と安いし、夕食を脅かすほどのボリュームでもないので、食べていくことにする。
ラーメンも食べたし、もう少し歩こうと思う。線路沿いを行く。この背後にはインターナショナルスクールがあり、外国人の生徒がバスケットボールに興じている。
瓦屋根の家々が建ち並ぶ落ち着いた住宅街を行く。どこか昭和末期の懐かしい感じもする。都下の住宅は、23区の住宅と違い、建ぺい率が低めで、ゆったり建っている。あの、壁同士がくっついた息苦しさがない。
15:23 ひばりヶ丘駅。ままごとのようなネーミングだけど、使われ出してから年数が経つと、これでしっくりきてしまうのだから不思議だ。
車が来ない路地裏の暗渠を行く。人間サイズの横幅が落ち着く。地面を緑一色に塗りたくるのはどうかと思うけど。
電車を撮ってくれと言わんばかりの視界の開けたカーブにある踏切。ちょうど特急電車が来た。
16:02 保谷駅の車両基地。歩道橋で越える。
保谷からは東に向かう西武池袋線を離れ、南に進路を取る。「いなげや」でペットボトルのミルクコーヒーを買う。レジ袋を断ると2円引きになる。消費増税分を取り戻した気になる。道沿いにはいい面構えの銭湯が。
西武池袋線を離れたのは、練馬区石神井台にある巨大園芸店「オザキフラワーパーク」に立ち寄りたかったから。しかし、事前の自宅での地図の確認が甘く、あてずっぽうに歩いていたら、どうも辿り着く気配がない。ガソリンスタンドのお兄さんに尋ねると、まったく違う方向であることが判明する。簡単に道案内してもらえるような距離でもないので、「あっちの方」というだいたいの方角だけ聞いて、そちらに向かう。自然と早足になる。そうしてようやく店に着き、いろいろ見て回るが、さすがに歩き疲れたのと、大きい・重い商品は特に、持ち帰りに難があるので、あまり深く品定めはできなかった。
17:30 店を出て、石神井川沿いを歩く。八重の桜が咲いている。日が傾いてきた。「夕焼け小焼け」のチャイムが鳴る。
ドサまわりの歌手がこれで地方を巡業するんだろうか。住宅街の駐車場に停められた大型バス。旅芸人の暮らしに少しだけ思いを馳せる。この車のナンバーが、意外な地方のものだったが、どこだったか忘れてしまった。
17:44 西武新宿線・上井草駅が見えてきた。そこでゴールとする。今日歩いたのは全部でおよそ20km。
※今回の七福神歩きで参考にした本は『東京ありがた七福神めぐり』。地図がとてもわかりやすく、道々の様々なポイントの写真も載っていて、「歩いて巡る」ことについてよく考えられて作られている。