情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

ブログやHPを規制する法制度がつくられようとしているのになぜメディアは報道しないのか~パブコメその2

2007-07-05 21:47:06 | メディア(知るための手段のあり方)
 あなたのブログやHPに規制をかける法制度が定められようとしている~1人ひとりがパブコメを送ろう!」(←クリック)で、ブログやHPの規制が定められようとしていることを指摘したが、それでは、なぜ、そんな重要な法律について、マスメディアが報道しないのか、疑問に思う方も多いと思う。しかし、メディアが営利企業であることに思いを馳せれば、説明がつくのではないだろうか。(その1その3その4←クリック)


 中間取りまとめは、インターネット上の情報を、①地上波テレビ級の「特別メディアサービス」、②衛星放送、ケーブルテレビ放送級の「一般メディアサービス」、③ホームページやブログのような「公然通信」、④個人間のメールのような「それ以外のコンテンツ流通」の4種類に分けた上、特別メディアについて、13/26で、次のように述べている。

■■引用開始■■

 ア 「特別メディアサービス」

「特別メディアサービス」は、言論報道機関として健全な民主主義の発達に最も重要な強い世論形成機能を有し、地域住民の生活に必要不可欠な情報を総合的にあまねく提供する一方、災害など非常時における主要な情報伝達手段としての機能など特別の社会的役割を担うコンテンツ配信として位置づけられる。このような役割は、現在は主として地上テレビジョン放送が担っており、このため、現在の地上テレビジョン放送により提供されるコンテンツ配信を基本として「特別メディアサービス」の具体的範囲や規律内容の構成を検討する必要がある。

「特別メディアサービス」に関する具体的な制度設計に当たっては、以下の点に留意することが求められる。

○ 「特別メディアサービス」に適用されるコンテンツ規律は、現在の地上テレビジョン放送に対する規律を原則維持すること。

○ 放送の多元性・多様性・地域性の確保を目的とするマスメディア集中排除原則を基本的に維持すること。

○ 社会的機能・影響力に着目した「特別メディアサービス」の適合性審査については、現在の無線局免許ではなく、コンテンツ配信法制に基づく制度に移行するに際し、民主主義の発達に果たすべき役割や非常時の情報伝達、地域性の確保など、特別メディアサービスとして求められる社会的機能が何かを明確化すること。

■■引用終了■■

 気付きましたか?【「特別メディアサービス」の適合性審査】という言葉に…。

 総務省は、インターネット上に放送法の免許制度のような「適合性審査」なるものを持ち込もうとしているのです。

 ということは、この適合性審査を地上波テレビ局の実績を重視するようなものにしさえすれば、「特別メディアサービス」なるものは、テレビ局の独占となる可能性が大きいのです。

 こういう独占には美味しい話がつきものですよね。今回の特別メディアサービスというカテゴリーに、いかなるメリットが伴うのか、まだ、ハッキリしていません。しかし、そのようなカテゴリーを設定することには、義務だけではなく、何らかのメリットが伴うはずです。しかも、中間取りまとめに対し、マスメディアが批判をせず、沈黙を保っていることから考えると、美味しい話があるからこそ、テレビ局が今回の中間とりまとめとパブコメについて沈黙を守っているのではないかと思えてしまうのです。もし、そうではないというのであれば、この中間取りまとめに対し、きちんとした見解を表明してほしい。

 そもそも、テレビ・ラジオに免許制度が導入されたのは、電波(の周波数)が有限であるため、その限られた電波を公共的に利用するためであった。したがって、インターネットのように無制限に発信できる場合には、免許制度はふさわしくないと考えるのが、表現の自由に資する考え方だろう。

 それにもかかわらず、中間とりまとめは、「適合性審査」という名の「免許制度」を導入しようとしているのだ。異例の措置だ。規制の裏には、利権がある。これが既得権を守ってくれる制度だとしたら、テレビ・ラジオ、さらにはそれらと系列化している新聞が批判するのは相当困難だろう。

 メディアは、「青少年有害社会環境対策基本法」については、自主規制という名のテレビ、ラジオ、新聞、出版に対する政府規制だったため、激しく反対し、潰した。なぜ、同じような規制が予想されるインターネットの規制については、目をつむるのか、答えは一つしか考えられない。

 皆さんのブログ、ホームページが該当する「公然通信」のコンテンツについては、

 【インターネットのメディア化の急速な進展や、有害コンテンツが社会問題化している現状を踏まえ、「通信の秘密保護」の根拠は匿名による表現の自由の確保とプライバシーの保護(狭義の通信の秘密)にあるとの視点から、保護の範囲と程度を捉え直すべきである。その上で、有害コンテンツを含め、表現の自由と公共の福祉の両立を確保する観点から、必要最小限の規律を制度化することが適当である。

 具体的には、「公然通信」に係るコンテンツ流通に関して、各種ガイドラインやモデル約款等が策定・運用されていることを踏まえ、違法・有害コンテンツ流通に係る最低限の配慮事項として、関係者全般が遵守すべき「共通ルール」の基本部分を規定し、ISPや業界団体による削除やレイティング設定等の対応指針を作成する際の法的根拠とすべきである。「プロバイダ責任制限法」などICT利用環境整備関係法制度についても、可能な限り一元化すべきである。

 その際、特に有害コンテンツ流通について、「自殺の方法」や「爆弾の作り方」、「ポルノ」など、違法とは必ずしも分類し難い情報ではあるが、青少年など特定利用者層に対する関係では一定の規制の必要性があるものに関しては、有害図書防止条例などの手法を参考にしつつ、いわゆる「ゾーニング」規制(特定の行為等に対して一定のゾーン(範囲や利用方法)に限り規制することを許容する規律手法)を導入することにより、広汎な内容規制の適用を回避しつつコンテンツ流通の健全性を確保することが可能となるため、その導入の適否を検討する必要がある】

と述べ、関係者全般が遵守すべき「共通ルール」に基づいて、削除やレーティングを行う方向を明確にしている。

 このままでは、インターネットは、政府の監視というメディア本来の機能を果たすことが出来ないメディアに成り下がってしまう。

 止めることが出来るのは、われわれ、インターネット利用者しかいない。


 そこで、まず、総務省に、①既存局の優遇反対、②情報の内容に関する規制は最小限度とし、政府の影響のない独立した委員会に行わせること、というようなパブコメを出してほしい。〆切は今月20日だから、忘れないように、今週末にも出そう!
 
 次に、マスメディアに対し、なぜ、この重大な問題を取り上げないのか、既得権を守るためか、などという抗議の電話をかけるとともに、

 各政党に、放送と通信の規制一元化法案によって、既存局の優遇が行われたり、情報内容に対する規制をすることは許されない!と声を挙げましょう!
 

 











★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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公安調査庁:「青法協」の宿泊名簿提供要求~プライバシーの侵害だ!

2007-07-05 21:46:10 | 適正手続(裁判員・可視化など)
毎日新聞によると、【公安調査庁新潟公安調査事務所長らが先月、護憲派の弁護士や学者らで構成する「青年法律家協会」会員が宿泊した新潟県佐渡市内のホテルに対し、宿泊者名簿の提供を要求していたことが分かった】という。

 青年法律家協会、通称、青法協は、ウィキペディアによると、【1954年、日本国憲法を擁護し平和と民主主義および基本的人権を守ることを目的に、若手の法律研究者や弁護士、裁判官などによって設立された日本の団体である。略称は青法協(せいほうきょう)。「青年」を冠するが加入に年齢制限はない。法科大学院学生も入会可能。
 現在は弁護士学者合同部会と司法修習生部会が存在する。弁護士学者合同部会は、日本社会主義青年同盟、日本青年団協議会、日本民主青年同盟と合同で有事法制反対の街頭宣伝活動を行ったこともある。かつては裁判官部会もあったが、裁判所側が青法協会員の裁判官を再任せず、事実上の首切りを行なうなどの差別待遇が横行し、事実上の活動休止状態に追い込まれている】という団体。過激派などのようなものでありえない。

 それにもかかわらず、【宿泊者名簿の提供を要求し】、ホテル側が、【「先方に連絡しないと分からない」と断った】にもかかわらず、【事務所側は総会終了後数回にわたってホテルに電話で「代表者だけでいい」などと再三要求し、27日に代表者の氏名のみをファクスで送らせたという】のだ。

 まったく、必要性のない行為であり、プライバシー侵害も甚だしい!

 【同協会所属の弁護士らは4日、「思想良心の自由を圧迫する違憲行為」として同事務所に抗議した】というが、それだけでは足りない。プライバシー侵害について、きちんと法的手続きを追及してほしい。頑張れ、青法協新潟支部!










★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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あなたのブログやHPに規制をかける法制度が定められようとしている~1人ひとりがパブコメを送ろう!

2007-07-05 04:53:08 | メディア(知るための手段のあり方)
 総務省は、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」(座長:堀部政男 一橋大学名誉教授)において取りまとめられた標記「中間取りまとめ」について、平成19年(2007年)6月20日(水)から同年7月20日(金)までの間、市民から意見を募集している(ここ←クリック)。中間取りまとめによれば、研究会は、放送法に基づく規律の枠組みをインターネットに持ち込むことを考えているようだ。(その2その3その4←クリック)

 しかし、放送法の規律はあくまでも電波が限られていることから、公共財産である電波をいかに利用するかという観点から、総務省の免許権限のもと、定められている(そもそも、総務省が免許権限を持っていることと自体に問題があることはここなどで指摘したとおりだしお、さらに放送法が改悪されようとしていることもここで指摘したとおりです)。

 それに対し、インターネットはそのような資源の有限性という問題はない。したがって、新聞や雑誌と同じように、一定の官庁による監督は受けず、違法の問題は裁判所による判断に委ねるのが原則であるべきである。

 それにもかかわらず、この中間とりまとめは、

 【通信コンテンツと憲法上の「表現の自由」との関係では、表現活動の価値をも勘案した衡量の結果として違法として分類されたコンテンツの流通は、表現の自由の保障の範囲外であり、規律することに問題はない。また、有害コンテンツ流通に対する規制も、有害図書に関する青少年保護条例による認定基準が最高裁で合憲とされていることを踏まえれば、規律の対象とする余地はあると考えられる】(中間取りまとめ7頁)

 と裁判所の判断結果を利用して、行政による規律を設けようとしているようだ。

 しかも、
【放送は、多様な情報を迅速に提供する有用な手段として現代社会において特別の役割を担ってきた。具体的には、健全な民主主義の発達に資する言論報道機関としての機能、地域住民の生活に必要不可欠な情報提供や、多様化する国民のニーズに応じた豊かで良質な各種番組の提供など、様々な公共的役割が挙げられる】

として、放送の役割の重要性を指摘しつつ、

【技術革新により伝統的な「放送」概念が変容しつつあるとしても、このような役割自体の社会的重要性が失われるわけではなく、その意味において「放送」の規律の枠組みはメディアコンテンツ規律の基準として成り立ちうると考えられる】

としており、役割が重要だから規制すると言っているようなのだ。

【多様な情報を迅速に提供する】役割を果たすためには、政府による規制は受けない方がいいはずだ。戦前の日本のファシズム化をみれば、情報が政府による規制を受けることの危険性は明白だ(一例はここ)。

 それにもかかわらず、中間とりまとめは、

【以上を踏まえ、成熟した規律体系である放送法制を基本として、「必要最低限のルールを自律原則とともに保障し、表現の自由を確保する」という理念を堅持しつつ、情報の自由な流通を確保する観点から、社会的機能及び社会的影響力に重点を置いて、技術中立的にコンテンツ規律体系を一元的に再構築し、安全・安心なユビキタスネット社会の構築に向けた環境整備を図ることが適当である】

と安易に政府による規制に走り、

【「公然性を有する通信」を「公然通信(仮称)」として違法・有害コンテンツ流通対応を制度化することを検討すべきである】

と結論づけている。

ここでいう公然通信とは、ブログやHPのことを指すと思われる。つまり、ブログやHPに対し、内容規制をかけようとしているわけだ。

具体的には、中間とりまとめは、

【違法・有害コンテンツ流通に係る最低限の配慮事項として、関係者全般が遵守すべき「共通ルール」の基本部分を規定し、ISP(Internet Service Provider:インターネット接続サービス提供事業者)や業界団体による削除やレイティング設定等の対応指針を作成する際の法的根拠とすべきである。】

としている。

これは一見自主規制の提言であり、許容できるようにも思えるが、現在も放送行政を政府が直接握っている「表現の自由後進国日本」においては、政府主導の自主規制となる可能性が大きい。


安易な政府主導の規制がHPやブログに及んだ場合、政府をきちんと監視しようとするような言論は規制される可能性が大きい。

現に、放送行政の世界では、さまざま行政指導がなされている。その行政指導には、政府を批判する言論に対してだけ行われるわけではなく、もっと広く指導されるため、反政府的言論の封殺という一面が表に出にくくなっているが、政府の狙いがそこにあるのは言うまでもない(例えば、安倍人形に対する指導は、宮里順位問題に対する指導などに紛らせている)。あるある問題をあそこまで徹底的に叩いた理由はそこにある。「納豆でやせる」という言論と「原爆投下はしょうがない」という言論とどちらが市民にとって危険なものかは明らかなのに、政府は、前者に対しては厳しく望み、後者に対しては許容しようとした…。

少し脱線したが、中間取りまとめに対するパブリックコメントの提出期限は、7月20日、もう2週間ほどだ。

インターネットユーザー1人ひとりに関わる問題であり、より多くの方が、インターネット上の表現の自由を守る方向で、意見を述べる必要がある。いつの間にか、あなたのHPやブログが、【ISP(Internet Service Provider:インターネット接続サービス提供事業者)や業界団体による削除】の対象とならないようにするためにも…。まずは、1人でも多くのインターネット利用者にこのパブコメのことを伝えて下さい!

一時、自民党によって「青少年社会環境対策基本法案」なるものが制定されようとした。このとき、マスメディアは自分たちのことであったため、ここなどのように反対運動を重ね、自主規制的規制をつぶしたことがある。

 今回は、マスメディアは動かないかもしれない。インターネットユーザーの底力が試されていると言ってもよい。頑張りましょう!














★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。