~「サッカー食」より抜粋~
試合前の食事についてポイントが3つあります。
「普段と同じものを食べる」「普段の食事とバランスを少し変える」「即効性のあるものを食べる」です。
最初の「普段と同じものを食べる」ですが、試合が近づいたからといって、急に何か高級なものを食べたり、普段食べ慣れていないものをとることは禁物という意味です。そういったものは、体が受け付けなかったり消化に手間取ったりして、お腹の調子を崩す危険があります。コンディションの乱れは、すぐにパフォーマンスに影響します。いい食材を得て体力十分なのに。動きが鈍くては本末転倒です。
また、普段と同じものでも、より消化のよいメニューを選びます。これは緊張などから、普段より消化能力が衰えている部分があるからです。感受性のない年頃ですから、見た目は元気でも、試合前の緊張がストレスとなっている可能性があります。
そうした場合には調理法を工夫して、煮物などの消化しやすい形にするとベター♪もちろん素材を細かく刻んだり、消化促進のためのヤマイモや納豆などを添えるのも手です。逆に避けるべきなのは、揚げ物などの油をたくさん使った料理やきんぴらなどの食物繊維が多いもの。揚げ物類は胃腸の負担が大きく、消化にはマイナスです。食物繊維は普段の食事では心がけてとりたい食材ですが、試合前にはお腹にガスがたまったりするので控えましょう。
この辺りに少しだけ気遣いしてあげれば、より高いパフォーマンス維持に繋がるはずです。そこで自信がつけば、だんだんと緊張感もやわらぎ、試合前でも食が進むようになっていくでしょう。
2番目の「バランスを少し変える」は、栄養のバランスに関して。つまり食事の材料は変えずに、バランスを少し調節するのです。栄養は「体の材料になるもの」「エネルギーになるもの」「体の機能を円滑にするもの」の3つにわけることができます。
いずれも日々の食事では大事な栄養ばかりですが、実は試合前はちょっと違います。サッカーの選手は長時間にわたって持久力と瞬発力、そして集中力を維持しなければなりません。そのためには、試合中に使う「エネルギー」の保持と「機能を円滑にすること」がより重要になってきます。それに「疲労回復」が加わります。
エネルギーと言えば糖質(グリコーゲン)、機能円滑と言えばビタミン、ミネラルとその他の栄養素、そして疲労回復にはクエン酸です。糖質はご飯類、ビタミンB群、ミネラル類はおかずからとりますが、マグネシウムを多く含んでいるホウレン草のお浸し、冷や奴、焼き魚などを主体に考えると構成しやすいでしょう。クエン酸は、副菜に酢の物を加えたり、レモンをおかずにかける、そしてデザートにグレープフルーツなどで摂取できます。
逆に、この段階では「材料作り=タンパク質」は、普段ほど大事じゃありません。なぜなら、体つくりは数日でできるものではなく、数週間から何年かに渡って日々少しずつ行われるものに対して、エネルギーはすぐに用いられるからです。数日中、あるいは今日試合が行われるのに、今ごろ筋肉作りに精を出しても始まらない、というわけです。とはいえ筋肉修復のためのタンパク質はもちろん必要ですし、グリコーゲンをためるのにも適度なアミノ酸は必要な事から、まったくとらないのではなく、あくまで糖質が主体になると考えてください。
このように試合前の食事は、普段と同じ食べ物を食べながらも、エネルギー源の糖質(グリコーゲン)とビタミン、ミネラル類、クエン酸を多めにとる事がポイントになります。
最後のポイントである「即効性のあるものを食べる」は、特に試合当日重要です。実はご飯やパンなどの糖質類は、種類によって体の中でエネルギーに変換される時間が若干異なります。そのため試合日の朝食や昼食では、同じ糖質類の中でも、素早くエネルギーになるものを優先的に食べて、効率的なエネルギー蓄積を心がける事が重要。これは先に挙げた消化のよい食事とも関連してきます。つまり試合日当日の朝・昼食は「消化がよい+即効性のある」食べ物や調理方法が、重要になるというわけです。
このように見ていくと、試合前の食事は普段とは少し違う点がある事に気がつきます。
どんなに頑強で持久力のある体を作っても、健康を害するような食習慣がついてしまうと、結局は選手の為にはなりません。成長期の食事には、長い目で見た栄養教育や体調(コンディショニング)の維持も同時に考えましょう。